第2話 追放と出会い

絵梨奈は王宮に歓迎され、豪華な部屋を与えられた。沙羅は「巻き込まれただけ」と城を追い出される。


「まあ、いいか。マニュアル読んだし、レベル50で帰れるんだよね」


召喚された後、絵梨花と沙羅の手元には女神からマニュアルが送られてきた。そのマニュアルを読むとレベル50で日本に帰国できると書いてあったのだ。だから、城を追い出されることになっても焦ってはいなかった。それに、マニュアルを読む限り沙羅はハズレではなかった


城門で待っていたのは、公爵令嬢レイチェル。絹糸のようなの髪を優雅にまとめ、気品あるドレス姿。だが、王子からの扱いは冷たかった。優秀な彼女に嫉妬し、最近は聖女絵梨奈と親しくなり、婚約破棄を宣言したのだ。


「隣国へ移住出来るように手配したわ。これは王宮からの補填金よ。こちらはわたくしから。着替えや外套よ。それとお金も少しばかり」

「……ありがとうございます。……あの、どうして親切にしてくれるのですか?」

「この国の、貴族として当然の事をしたまでですわよ。召喚儀式は国として行った儀式で、わたくしは、この国の筆頭公爵の娘ですから」


沙羅は感激した。格好良い! いかにも貴族の令嬢って感じだ。


「ちょっと待ってね」と十数秒。

お礼に、自作同人誌をプレゼントした。

タイトルは『令嬢の逆襲 ~王子と聖女の裏側~』。レイチェルが悲劇の悪役令嬢、王子と絵梨奈がモデル。沙羅のスキルで、即席作成して紙から製本まで完璧に仕上がっていた。


「これ、読んでみて。ストレス発散になるよ」


レイチェルは苦笑しつつ、受け取った。


沙羅の聖女としての、能力は「浄化」だった。女神は「治癒」と「浄化」の聖女を呼んだのだ。

絵梨花が「治癒」の聖女。沙羅が「浄化」の聖女だ。


沙羅達を召喚した人々は、それを理解できていなかった。絵梨花の治癒能力をみて、「これぞ聖女の力」と思い込み、沙羅をハズレ認定してしまった。


沙羅は、「浄化」の他にも、「同人制作」のスキルを授かっていた。これは、沙羅が兄の秘蔵のフィギュアを丁寧に磨いていたからだ。兄のコレクションフィギュアの中に女神のキャラがいて、召喚を手助けした女神によく似ていたのだ。

そもそも、女神が沙羅を召喚対象として選んだのも、フィギュアの縁だったりする。


沙羅の「同人制作」スキルはイメージだけでも「製作」から「製本」まで可能となる能力だ。

材料となる紙すら事前調達不要だった。


女神のマニュアルを読んで、同人制作スキルの事を知った。

試してみたい、と思い製作ネタを色々練っているところだった。


レイチェルに何かお礼をと考えた時、咄嗟に思いついてその場で作成した。頭の中でプロットを組み立て、完成形のイメージをする。スキルの中で、プレビューまでやって、印刷、製本である。


ポン、と手の中に完成した薄い本が現れた時は感動した。レイチェルの手前、なんでもないように「さあ、どうぞ」と、差し出したが、内心は、ハイテンションだった。





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