第4話 呪いを解き明かす
オガミ部部室。
折り畳み式の長机とパイプイスがあるだけで殺風景だ。
「もっとこう藁人形的なもので散らかっていると思ってたよ」
いつもよりも饒舌に紗奈は喋る。
「紗奈の部屋じゃないんだから」
ひどーい。と言いながら頬を膨らませ怒りをアピールしてくる。
「よくきてくれた。学園の呪いを一手に引き受けるオガミ部が部長の尾上だ」
前口上は尾上のお気に入りなのかもしれない。
「困ったことに行き詰まった。そこで第三者視点として彼について教えてほしい」
「頼む。このままだと本が読めないし、勉強も手につかない」
「しょうがないなぁ。柾は私がいないとダメなんだから」
どこか嬉しそうに微笑みながら引き受けてくれた。
「分かっていることは3つ。呪いは腹痛。トリガーはページを捲る。容疑者は二人」
「えっ?! そんなはずは」
呪いの効果を聞いた紗奈が狼狽し出した。
「何を知っているのか教えたまえ」
「柾は昔から、人の気持ちに無頓着すぎるから」
「そんなことはない」
人の嫌がることはしないように心がけている。悪口も言わないし、嫌がらせもしない。
「お家デートの時に一人でずっと本を読んでいたのはだーれーかーなー」
「痛い痛い」
力強くガンガンと脇腹を突かれる。紗奈の動きに合わせて揺れた髪からリンゴの芳香が鼻腔をくすぐる。昔から紗奈は、本気で怒った時は物理的手段に訴えてくる。
「っあ」
身体の内側から来る痛み。腸内で熊が爪研ぎをしているようだ。
「ふむ。呪いのようだね。トリガーはひょっとして別なのか」
「え? え? ページを捲る音を聞いていないのに?!」
「それ、よりも、腹痛を何とかしてくれ」
「我慢していてくれたまえ。もう少しで全容が掴めそうだからね」
この男は……
「柾、大丈夫?」
くの字に折り曲げた背中を、優しく摩ってくれる。撫でられるたびに痛みが増していく。
「ふむ。近づくと痛みが増すようだね。
ああ。なるほど、だから二色で容疑者が二人か」
音を立てながら扇子を開き、口元を隠した。まるで能楽のようだ。
「万全とは言い難いが、キーワードは、出揃った。今度こそ、
準備があるからと言い残して、尾上はどこかへ行ってしまった。
腹痛も柔らぎ、思考力も戻って来た。
「柾、まだ休んでいた方がいいんじゃない?」
心配そうに顔を覗き込んでくる紗奈の瞳を見つめ返す。紗奈に近づくと痛みが増し、離れると落ち着く。凪さんに近づかれた時は、こんなことはなかった。
だから、たどりつけてしまった。
「違ってほしいと思っていた。けれども、俺を呪ったのは紗奈、君なんだね」
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