2話 村だったところ
俺は朝起き、ベッドから降りる。
朝ごはんを食べる前に俺はやりたいことがある。
昨日使えなかった魔法がどうなっているか試すことだ。
「弱き者にそなたの慈悲の速さを。スピードアップ。」
やはり、使えない。
本当に魔力を失ったのだろうか?
「はぁ。」
本当に嫌になる。
俺は一日で魔力と村を失ったんだ。
いままで、光属性魔法を頑張って練習してきたのに、急に使えなくなる。
14年間で積み上げてきたもの、全部失ったんだ。
やばい。そう考えると、涙が出てきた。
もういいや、今日はもうベッドに入って寝よう。
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イヴァン視点
とある少年を見つけた。
その少年は倒れていた。
燃えて崩れ落ちた家と大量の死体と共に。
多分この村は襲撃されたんだろう。
だけど一つ疑問が生まれる。
なんでこの少年だけ生きているんだろうという疑問が。
ざっと1000人ぐらいだろうか。
その人間たちは死んでいる。
刃物ん切り刻まれた死体。
肌が焼け落ちた死体。
胴から上がない死体。
崩れ落ちた家の下敷きになっている死体。
そんなこの少年だけ生きているとう事実が実に奇妙だった。
しかもだ。この少年は、そんなに大きなキズが付いていないのだ。
なんでこの少年だけ襲われなかったのか?
それか、襲われたあとに傷を直したのか?
現実的に考えると、ありうるのは後者だ。
もしこの少年が光属性の魔力を持っていたら、
襲われたあとに、ヒーリングで傷を直して、力尽きて倒れたという可能性が浮かび上がる。
この少年は子供だ。
このまま行けば、金に困り、食料に困り、住居に困り、死ぬだろう。
僕が、家につれて帰り、この子供の面倒を見るか?
その考えが浮かび上がったときにはもう、僕は少年を運んでいた。
バカな選択だとわかっている。
もしこの子供が危険を持っていたら?
絶対に見殺しにしたほうがいい。
だけど、倒れている子供を見つけてしまった以上、
そのまま見殺しにするのは嫌だった。
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家についた。
ここでいいか。
少年をベッドの上に寝かせた。
あと一日ぐらいすれば目を覚ますだろう。
この少年はあの村で何があったかの詳細を知っているかもしれない。
目を覚ましたら色々と聞こう。
その少年は3日の間、めを覚まさなかった。
こんなことがあり得るだろうか。
死んでいるのでは?と思ったが、脈は未だある。
息もしている。
もしかしたら、この少年は昏睡魔法を受けているのではないか?
昏睡魔法——対象の意識活動を強制的に、無意識状態へと落とし込む魔法である。
いやないな。昏睡魔法は、数十分度で効果が切れる闇属性魔法だ。
3日寝続けるなんてありえない。
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この少年が僕の家に来て、5日がたった。
この少年はまだ目を覚ましていない。
この少年は食べ物を食べなくても生きていけるのだろうか?
もしかしたら人間じゃない?
怖くなってきた。
もし人間じゃなく、魔物なら目を覚ました瞬間襲いかかってくるかもしれない。
魔物——魔力を起源とした生物の通称。多くは攻撃性が高く、
人類社会に脅威をもたらすため討伐対象とされる生き物である。
いややめよう。
この子が多分人間である可能性のほうが高いのだから。
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あの少年が僕の家に来て、7日がたった。
今日もどうせ起きていないだろう。
そう考えた僕はいつもより、遅くあの少年の状態を確認することにした。
部屋のものの整理をするか。
そう考え、動き出そうとしたら、叫び声が聞こえてきた。
「パパァーーーーーーーーーー!!!
寝てた人が起きたーーーー!!」
僕の子供が叫んだ声だった。
なんだって?あの少年が起きた?
僕は急いで階段を降りあの少年がいるところへ向かう。
その少年は僕の子供通り、目を覚ましていた。
「起きたのか!なぁ、あの村で何があった?教えてくれ!」
しまった。気分が動転してしまっていた。
この少年は何がなんだか状況がわからないはずだ。
まず状況を説明したほうがいいな。
「ああ、すまなかった。先に状況を話したほうがいいな。
僕の名前はイヴァン。君の名前は?」
「リヒトです。」
その少年、リヒトはそう答えた。
「では、リヒトくん。僕が君を見つけたとき、君は倒れて気を失っていた。
切り刻まれ、燃やされた大量の死体と焼け落ちた家といっしょにね」
まず最初の状況から伝えたほうがいいと思った。
だからそういった。
そしたら、リヒト君は頭に手をやり、ため息をした。
そのまま10秒の間動かなくなった。
急にどうしたんだ?
「イヴァンさん。俺 ああいや、僕は思い出しました。なにがあったかを。」
リヒト君はそういった。
「本当か!?教えてくれ!」
何があったか、そんなことだいたい予測はついてる。
村が襲撃されたという予想が。
でもこれはただの予想だ。
当時所の言うことを聞いおいたほうがいい。
僕はリヒト君の話を聞いた。
「つまり、君は準人式の最中に襲撃されたていうことでいいかな?」
「はい。そうです。」
「でもそれだと少し変だね。なんで君だけ生き残ってるんだ?
いや、生き残された?なんのために?なんの目的を持って?」
しまった。この少年も何も知らないのだ。襲われたという事実以外。
「いや、やめよう。こんな話よりもっと大事なことがある。」
「どんな話ですか?」
「そりゃあもちろん、君のこれからについてだよ。」
このままこの少年の面倒を見続けてあげたい。
だけど、そんな余裕は僕の家にない。
「君を助けたいんだけど、そんな余裕はうちにはあまりなくてね。
君は今何歳だ?」
「いまは、14歳ですが、あと一ヶ月すれば、15歳になります。」
「そうか。15歳になったら、準人になるから働けるな。
よし、一ヶ月の間お前の面倒をみてやる。1ヶ月後には、申し訳ないが、
お前の面倒を見ることはできん。それでいいか。」
あと一ヶ月なら、余裕を持ってリヒト君の面倒を見ることができる。
「はい。むしろ、一ヶ月も面倒を見てもらってありがとうございます。」
「かまわない。若人の面倒を見るのは当然だ。」
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リヒトくんが目を覚ましてから1週間が立った日に、
リヒトくんは言った。
「あの、イヴァンさん。
僕が住んでいた村がどうなったか知りたいので、
見に行ってきていいですか?」
あの村に行くのか。
あそこは子供が見ていいものじゃなかった。
とてもひどい惨状だったのだ。
「ああー、リヒトくん。君は本当に見に行きたいのか?
あそこは酷い有様だったぞ。」
「はい。それでも僕は見に行きたいです。
僕が生まれたとこなので。」
まあ、今まで育ってきた村がどうなったか見たいと感じるのは仕方ないだろう。
「わかった。いってきてもいいぞ。
あそこの村はここから北に2時間ぐらい歩いたところにある。
いくのはいいが、暗くならないうちに帰ってこい。」
「ありがとうございます。」
本当に行くのか、リヒトくんは。
今からあの村に行くとなると、15時にには帰ってくるな。
大丈夫だろうか。
15分がたったとき、リヒトくんは家に戻ってきた。
どうしたんだ?
「イヴァンさーん。今日ちょっと体調が悪くなってきたので、村に行ってくるのやめます。」
体調が悪くなったのか。
そんな急に体調が悪くなるもんか?
まあいいか。
「体調が悪くなったって大丈夫か?」
「はい。一晩寝れば回復するぐらいのやつです。」
「ならよかった。」
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次の日。
リヒトくんがおきてこない。
どうしたんだ?
いつもなら起きてくる時間なのに。
様子を見に行くか。
リヒトくんは泣きながら寝ていた。
というか、泣いたあとに寝たみたいな。
どうしたんだ?
7時間後、、
リヒトくんが起きた。
「なぁ、リヒトくん
君は大丈夫か?泣いていたぞ?
何があった?」
「実は、、、、僕前に光属性の魔力を持っていることを話しましたよね。」
「ああ、うん。言っていたな」
「それが、魔法が使えなくなって。」
「へえ。魔法が?」
魔法が使えなくなるなんてこと聞いたことがないぞ。
「詠唱を間違えているとかではないのか?」
「詠唱は間違っていません。何度も試しました。」
「それはつまり、魔力がないのか?」
「多分、そうなるかと。
襲撃される前は、魔法が使えてたので、襲撃中に何かをされて、魔力を失ったかもしれません」
「魔力を失うか、聞いたことないな。」
魔力を失う事はありえない。
あるとしたら死ぬときぐらいだ。
なかなかの田舎に住んでいる僕でもわかることだ。
リヒトくんは村を襲われたことで錯乱しているのか?
ありえないことを考えないと精神が持たないとか?
それとも本当に魔力を失ったのか?
僕はリヒトくんが魔法を使っているところを見たことがないからわからない。
もし仮に本当に魔力を失ったとしたら?
リヒトくんは、魔力を失ったことについて泣いていたのか。
そりゃ、辛いだろ。
僕は魔力を持っていないからわからないけど、
長年積み上げてきたものが一瞬にして崩れるときの痛みはわかる。
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リヒトくんがまた外に出た。
もう一度村に行くんだそう。
僕もついていこうとしたが断られた。
一人で行きたかったんだろう。
五時間後には返ってくるだろう。
それまで仕事をしよう。
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6時間がたった。
リヒトくんはまだ帰ってきていない。
6時間があれば、余裕で帰ってこれる時間だ。
もしかして、魔物や、盗賊に襲われた?
もしそうなら理人くんが危ない!
様子を見に行こう。
僕は小1時間ほど走った。
一度も歩くことなく、ただひたすら。
僕はリヒトくんが住んでいた村だったところについた。
そこには、リヒトくんが、
泣きながらうずくまっていた。
リヒトくんがここにつくまでの時間は、歩いても2時間程度。
この子は、5時間もこうしていたのか?
いやそうとはかぎらない。
だけど、5時間もこうしていた可能性のほうが高い。
家や家族、友を失った悲しみからか。
僕はリヒトくんを見続けた。
そして、僕は、
僕は、泣きうずくまるリヒトくんを前に何もできなかった。
その行動が正しいのか間違っているのかはわからない。
彼は一人になりたいから仕方なく何もしなかった。
彼は感情が整理できていないから無理に踏み込まないようにするために何もしなかった。
見守ることも対応のひとつだから何もしなかった。
僕が何もしなかったことの言い訳は馬鹿みたいに出てくる。
僕は何もしなくてよかったのだろうか。
帰路につきながらそう思う。
それから無心で歩き続けて、2時間がたった。
家が見えてきた。僕の家が。
「はぁ」
自分が嫌になる。
僕は何もしなかったのではなく、何もできなかったのだ。
リヒトくんが返ってくるまで待とう。
また2時間がたった。
コンコンコンとノックの音がする。
帰ってきたのか。
「リヒトくん、今開ける。」
僕はドアへと向かい、ドアを開ける。
やっぱり、リヒトくんだ。
もしかしたら帰ってこないかもと心配だったが良かった。
僕はリヒトくんを家に上げ言う。
「夜ご飯はどうする?もう食べるか?」
「あぁ、大丈夫です。」
リヒトくんがなんの力もこもってない声で言った。
「大丈夫って、君昼も食べていないだろう。」
リヒトくんは、ベッドに行ったきり、返事は来ない。
仕方ないか。
リヒトくんも辛いんだろう。
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リヒトくんを発見し、うちの家においてから1ヶ月がたった。
あの日以降リヒトくんは、魂が抜けた抜け殻みたいになっている。
そんな子供をもう、これ以上面倒を見てあげられない。
うちの村で、働いてみたらと提案してみたが断られた。
リヒトくんいわく、今はどこかに定住みたいなことはしたくないのだそう。
トラウマになっていないだろうか。
あの村に行くことを許可するまでは、至って普通の少年だった。
あそこにいくこと許可するべきではなかったのか?
あの子が望んだんだ。親でもない以上制限するのはやめた方がいい。
しかし、定住しないってことは何の仕事をするんだ?
気になった僕はリヒトくんに聞いてみた。
「なぁ、リヒトくん。君は明日からどんな仕事をするんだ?」
「冒険者でもやろうかと。」
冒険者か。
冒険者——冒険者ギルドと呼ばれる場所でな依頼を受け、その報酬で生活する職業のことだ。他の仕事と比べてかなり死亡率が高い仕事だが大丈夫だろうか。
「リヒトくん、君は剣を持っていないだろう。」
僕はそう言い、物置部屋にあった剣を取ってくる。
「これをやる。冒険者は、戦うすべがないとやっていけないぞ。
あとこれ、30000バリア分のお金だ。」
30000バリアあれば1週間は生活に困ることはない。
「ありがとうございます」
あの日から変わってしまった力のない声でリヒトくんが言った。
「いいって。冒険者をやるってことは魔物と戦うこともあるんだろう?」
リヒトくんが頷いた。
「危険だからな、気をつけてくれよ。
今日はもう遅いから、明日出発するといい。
見送るぞ。」
そう言い僕は寝た
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