ロスター

@Shinkakeru

1話 関節は外れてしまった。

うぅ。なんだ、、?

目を開けるとそこには曇り一つない青空があった。

きれいだな。


そう思いなが仰向けになっていると変な匂いがしてきた。

何だこの匂い?

なにか生臭い匂い。

何処かで書いだことがある匂いだ。

いつだっけ。

ああ。思い出した。

自分が10歳ぐらいのときに転んで怪我をしたときの匂いだ。

つまり、これは血の匂いか。

俺はなにか転んで怪我をしたのか?

いや、おかしい。

こんなに匂いがきついはずがない。

大量の血の匂いだ。

俺が怪我をしただけで出る量じゃない。

仮に出たとしても、そのときは死んでるはずだ。


別の匂いが漂ってきた。

何かが大量に焦げた匂いである。

悪臭で気分が悪い。


一体何が起きているんだ?

状況を確認しなければ。

起き上がるか。

そう思い、腕を軸にして起き上がろうとする。

ん、、?


もう一度起き上がろうとする


おかしい。


腕を動かそうとしてみる。


やっぱりおかしい

腕が動かない。

というか、腕の感覚がない。

どうなってんだ。

腕が取れてたりするのか?

首を動かして確認したい。

だけど、首が動かない。

まさか、、、

指を動かそうとする。

動かない。

膝を曲げようとする。

動かない。

足を動かそうとする。

動かない。


自分の体で動かせるところは全部動かそうとした。

だが、動かなかった。

動くのは脳とまぶただけだ。


自分の体が怖い。

なんで急に動かなくなったかわからない。

自分が起きる前に何があったか、思い出そうとしても全く思い出せない。

せいぜいわかるのは自分の名前と年齢だけだ。

名前はリヒトで、年齢は14歳である。


落ち着こう。

焦ったていいことない。

状況を整理しよう。


状況は、

俺は自分の名前と年齢しか思い出せなく、

血となにかが焦げた悪臭がし、

俺の体が動かない。


この状況から推測するにこれは夢だ。

じゃなきゃこんな現実離れした事が起きるわけがない。

そもそも俺は平凡な暮らしをしていたはずだ。


いや、まて、平凡な暮らしをしていたとわかるんだ?

俺は名前と年齢以外何も思い出せないのに。

そう思った瞬間に俺の意識は途切れた。


——————————————————————————


目を覚ますとそこはベッドの上だった。

何だやっぱり夢じゃないか

腕もちゃんと動くし、足も動く。


少し起き上がり周りを見回すと違和感に気づく。

俺あんなものおいてたっけ?

倒れた本を見ながらそう思う。

他にも違うところがある。

あんな華美な装飾品はおいていない。

ベッドもこんなに小さくなかった。

毛布の柄も違う。

違うところをいくらでも述べれそうな部屋だ。

てことは、俺の部屋ではない、、? 

どこだここ。


そう考えているとドアの近くに小さな子供が立っているのを見つけた。

7歳ぐらいの男の子だろうか。

でもなんだ?驚いているように見える。

目を丸くしてこちらを見ているからか。


すると突然、

「パパァーーーーーーーーーー!!!

寝てた人が起きたーーーー!!」

と子供が叫んだ。


うるさっ。

反射でそう思ってしまうぐらいにはうるさかった。

なに急に叫んでいるんだ?

寝てた人というのは俺のことだろう。

それぐらいわかる。

だが、起きたくらいでそんなに叫ぶか?普通。

一週間ぐらい目を覚まさなかった人が起きたときの反応だろ。

、、、いや、まさかな。


ドタバタ階段を降りる音がした。

この子のお父さんだろう。


こっちに来て、息を切らした20歳後半ぐらいの人がこちらを見ている。

 

「起きたのか!なぁ、あの村で何があった?教えてくれ!」


すごい勢いで尋ねてきた。

俺が困惑していると、


「ああ、すまなかった。先に状況を話したほうがいいな。

僕の名前はイヴァン。君の名前は?」


「リヒトといいます。」


「では、リヒトくん。僕が君を見つけたとき、君は倒れて気を失っていた。

切り刻まれ、燃やされた大量の死体と焼け落ちた家といっしょにね」


イヴァンさんにそう言われた。


そうだった。

なぜ忘れていたんだろう。

俺は*********

————————————————————————


「よう。」


「なんだ。リヒト」


「なんだってなんだ?今日はお前の準人式じゃないか。」


俺は数少ない友、デュンケルにそう言う。


人の年齢は3つの種類に分けられる。

0歳以上15歳未満の人は若人

15歳以上20歳未満の人は準人

20歳以上の人は成人となる。


若人は社会から強く保護される立場にあり、判断力が未熟で犯罪も減刑される。公共施設は割引や無料で、労働は基本禁止。大人が成長を支える対象である。

準人はほぼ大人として扱われるが、未熟さが原因なら犯罪は減刑される。公共施設は成人料金だが学習や訓練は割引。見習いとして労働が可能で、成人への移行期間として責任や技術を磨く。

成人は完全な責任と権利を持ち、労働の制限はなく、社会の中心的役割を担う。


準人から労働が許可されるため、国に貢献できるとして、それを祝うための式が行われる。その式を準人式という。


今日はデュンケルの準人式だ。

村のみんな全員で、祝うことになっている。

全員で祝うとなると、15歳になる人が多すぎて、そのたびに祝うのがとても手間がかかるので、1年毎にい湧くことになっている。

だから、正確にはデュンケルたちの準人式だ。

俺とデュンケルは1歳差だから同じ成人式に出ることができない。

地味にショック。


「デュンケル。お前は今日準人式だからなー。

お前があと一年遅れて生まれてこれば一緒の準人式だったのに。」


「無茶言うな。」


「わかってるよ。無茶なことぐらい。


でもさー、なんか思っちゃうんだよ」


「そんなもんか?」


「そんなもんだ。」



そんな会話をしながら2人で歩く。


「にしてもなー。今日から働けるんだろ?

見習いとして。どんな職業につくつもりだ?」


「あー、、」


「いままで秘密にしてたんだから教えてくれたっていいだろ。」


「はぁ。言うか。、、、俺は治療師になりたい。」


「え゛?マジ?」


「マジ。」


「なんでだ?せっかく希少な魔力を持っているのに。」


そう。デュンケルは希少な魔力を持っているのだ。


魔力――それは、生まれつき人間が持つ特別な力だ。

人々は魔力と詠唱を使い様々な現象、――魔法を使うことができる。

例えば、水を無から作り出したり、風を突然に吹かせたりする

すべての魔力には属性があり、水、土、火、風、光、闇の六種類に分かれている。どの属性を使えるかは生まれつき決まっており、例えば光の魔力を持つ者は光魔法しか使えない。また人口の約十分の一しか魔力を持たず、特に光や闇の魔力を持つ者は非常に希少だ。そのため、魔力を持つ者は社会的にも貴重な存在とされる。


そんな中デュンケルは魔力の名からでも希少な闇属性の魔力を持ってる。


「俺は確かに闇の魔力を持ってはいる。だからといってそれを必ずしも生かした使い方をしなければならないことはない。」


「もったいねー。だけどさ、どうやって治療師になるんだ?俺みたいな光属性の魔力を持っているわけではないだろうに。光属性の回復魔法がなきゃ、人の傷を治す治療師なんて難しいぞ。」


「あー、それはな、俺は別に特別治療師になりたいわけじゃない。闇属性の魔力の影響で人を傷つけることの怖さを知ったんだ。だから、なにか人を攻撃しない、治す仕事がしたいんだ。だから、なんだろ、薬草師みたいな。それだったら、魔力を持っていない人でもできるだろ。」


「へー。よくわかんないけど頑張れよ。」


「ああ、頑張る。」


「となると、闇属性の魔力はそんなに使わなくなるのか。」


「そういうことになるな。できるだけ使わない方針で行きたいと思っている。」


「じゃあさ、最後に戦おうぜ。」


「なんでだ?話が飛躍しすぎ。」


「デュンケルの準人記念。」


「まぁいいけど」


やったぜ。

久しぶりにデュンケルと戦うことができる。


————————————————————————


昔デュンケルと遊んでいた広場についた。

互いに木刀を持ち数メートル離れた位置につく。


「リヒト!もう一度ルールを確認する!相手が負けを認めるまで、勝負は終わらない、時間制限はなし、なんでもありのフリーファイト。

これでよかったか?」


「ああ、それでいい。

では、勝負スタート!」


「彼の者に束縛を。スローダウン!」


早速闇属性魔法を使ってきた。

スローダウン——対象に速度弱化を掛ける魔法だ。

動きが鈍くなるから、厄介だな。

ならどうするか?

それを総裁ればいい。

どうやって?

簡単だ。

俺は光属性の魔力を持っているんだから。

俺は鈍くなった体でデュンケルの攻撃を避けながら叫ぶ。


「弱き者にそなたの慈悲の速さを。スピードアップ!」


スピードアップ——対象に速度強化をかける魔法だ。

スローダウンの真逆の魔法だ。

これでスローダウンの効果は実質なくなった。

単純な剣技でいったら、俺のほうが優位に立つ。

普段から自分にバフを掛けて、動いているおかげで、少し鍛えられているからだ。

このまま行くとデュンケルに勝ち目はない。

だから、デュンケルはなにか魔法を使ってくるはずだ。

デュンケルが使用できる魔法を整理しよう。


スローダウン——デュンケルがさっき使ってきた魔法だ。

シャドウスティング——影の刃で相手を切り裂く魔法。

ナイトメアブラスト——悪夢の力で精神と体力を削る魔法。

ブラックアウト——一瞬だけ相手の視界を奪う魔法。目眩ましに使う。

ディスオーダー——相手の能力をランダムに弱体化。ランダムな分、弱体化の効力が大きい。


俺が知ってるのはこれぐらいだ。

スローダウンはもう効果がないから使ってこない。

重複効果はないからな。

じゃあ何を使ってくるんだ?


「ブラックアウト!」


うおっ。

急に来た!

視界が真っ暗になる。


痛っ!

右側に痛みが走る。

目眩ましからの攻撃、面倒だな。

というか、痛い。めちゃくちゃ痛い。

距離を取ろう。

俺はデュンケルのいないところへ走る。

ここまで来たら3秒は稼げる。


「慈悲の光よ、傷を消し去れ。ヒーリング。」


俺は光属性魔法のヒーリングを使う。

対象の傷を癒やす魔法だ。

痛みは消えないが、傷は治る

まだ、追撃が来る。


パシッ!


あぶねー。

剣の攻撃の受けを取るのが間に合ってよかった。

剣を止めたら何をするかって?

弾き返すんだよ!


「弱き者にそなたの慈悲の力を。パワーブースト。」


俺はできるだけ聞こえないように静かに詠唱する。

パワーブースト—スピードアップの腕力版の魔法だ

俺はデュンケルの剣を弾き返し、デュンケルが怯んだ隙に魔法を使う。


「ホワイトニング!」


相手の視界を一瞬だけ奪う魔法だ。

よし!

怯んだ!

その隙に俺は、剣を叩き込む。

猛攻を受けたデュンケルはだんだん攻撃を捌ききれなくなり

剣を手から離し、両手を地面につけ倒れた。

俺は剣をデュンケルの目の前に近づけ言う。


「俺の勝ちだ。デュンケル、降参は?」


「誰が降参なんてするか。」


「だけど、これはどう見ても俺の勝ちだ。」


「油断したな?リヒト。」


油断?デュンケルはもう剣をもっていない。

もう戦う方法なんて、素手で殴るしかない。

いやまて、あるぞ。あるじゃないか。闇属性の魔法が。

最悪だ。そう考えるときにはデュンケルは、魔法の準備が整っていた。



「うう、負けたー」


「ハハハハ。油断したお前が悪い。」


「そうだけどさー、うん?ちょっとまってデュンケル。準人式ってなんじからだっけ?」


「えーと昼頃からだな。」


「じゃあ今って?」


真上に登っている太陽を俺は見ながら言う。

デュンケルは真顔になってから、目と口を開いた。


「あ、、」


まじかよ。


「急ぐぞ!リヒト、スピードアップの魔法を!」


「なんで忘れてたんだよ!」


準人式が行われる広場まで、二人はとにかく走った。


————————————————————————


準人式が始まった。

司会の人が、今日準人になる人の名前を読んでいる。


「アレン!」


名前を呼ばれた人は、司会の人の前にいき列を作って並ぶ。

また何人か呼ばれたあとにデュンケルの番が来た。


「デュンケル!」


デュンケルが並ぼうと動いた瞬間に


事は起きた。


————————————————————————

なんだ?

デュンケルが動いた瞬間にあたりが真っ暗になった。

真昼だったのにだ。

真っ暗になって数秒たっただろうか。

何かの足音がすると思えば、

人の甲高い叫び声が聞こえた。

恐怖にまみれた声だ。

その音を合図に、次々と異様な音が飛び交う。

まともに生きていれば、決して聞くことのない音だ。

火が燃える音がした。

何かが、引き裂かれる音がした。

何かが、崩れた音がした。

人の叫び声はずっと聞こえた。

何が起こっている?

足音がする、ということはなにかの生き物だ。

つまりその生き物により襲撃。

なんでここを襲撃する?

わからない。


「⫶⩔⫷ Ǥ⫯⫗⫶」

その音を発した生き物が急に前に現れた。

なんだ?

いまこいつはなんて言った?

なにかヤバそうな気がする。

逃げよう。

俺は闇雲に走りながら詠唱を開始する。


「弱き者にそなたの慈悲の速さを。スピードアップ!」



なんだ?足が速くならない。

代わりに感じるのは、俺の中の何かがなんか、消えていく感じだ。

喪失感というやつだろうか。

いやそんなことはどうでもいい。

謎の音を発したあいつは?

おってきてるのか?

俺はそのことを確認するために後ろを向きながら走ろうとした。

そのままなぜか俺は仰向けになりながら倒れた。

転んだのだろうか。

わからない。


————————————————————————

ここまでの事を俺は思い出した。

イヴァンさんがこちらを心配そうに見ている。


「イヴァンさん。俺 ああいや、僕は思い出しました。なにがあったかを。」


「本当か!?教えてくれ!」


俺はなにがあったかを話した。



「つまり、君は準人式の最中に襲撃されたていうことでいいかな?」


「はい。そうです。」


「でもそれだと少し変だね。なんで君だけ生き残ってるんだ?

いや、生き残された?なんのために?なんの目的を持って?

いや、やめよう。こんな話よりもっと大事なことがある。」


「どんな話ですか?」


「そりゃあもちろん、君のこれからについてだよ。」


確かにそうだ。まだ村が消えたという実感がまだわかないが、もう村はないんだ。家族もいない。


「君を助けたいんだけど、そんな余裕はうちにはあまりなくてね。

君は今何歳だ?」


「いまは、14歳ですが、あと一ヶ月すれば、15歳になります。」


「そうか。15歳になったら、準人になるから働けるな。

よし、一ヶ月の間お前の面倒をみてやる。1ヶ月後には、申し訳ないが、

お前の面倒を見ることはできない。それでいいか。」


「はい。むしろ、一ヶ月も面倒を見てもらってありがとうございます。」


「かまわない。若人の面倒を見るのは当然だ。」


————————————————————————


イヴァンさんに面倒を見てもらってから、1週間がたった。

村がなくなった。

その実感はある。

悲しいはずなのに、なぜか泣けない。

俺ってこんなに薄情だったのか。


俺は朝起きてきたイヴァンさんに聞く。


「あの、イヴァンさん。

僕が住んでいた村がどうなったか知りたいので、

見に行ってきていいですか?」


「ああー、リヒトくん。君は本当に見に行きたいのか?

あそこは酷い有様だったぞ。」


「はい。それでも僕は見に行きたいです。

 僕が生まれたとこなので。」


「わかった。いってきてもいいぞ。

あそこの村はここから北に2時間ぐらい歩いたところにある。

いくのはいいが、暗くならないうちに帰ってこい。」


「ありがとうございます。」


北に二時間か、だいぶ遠いな。

走れば、一時間ぐらいだから、

光属性魔法をつかって30分ぐらいか。

俺は家の外に行き、魔法を使う。


「弱き者にそなたの慈悲の速さを。スピードアップ。」


あれ、おかしいな。

魔法が使えない。

詠唱を間違えたか?


「弱き者にそなたの慈悲の速さを。スピードアップ。」


使えない。

何だ?魔力不足か?

いやちがうな。もし魔力不足なら、倒れて、動けなくなっているはずだ。

魔法を使う条件は2つ。

詠唱と魔力だ。

詠唱がなければ、魔力があっても魔法は使えない。

その逆もだ。

俺は詠唱を正しく行った。

残るは魔力だけだ。

俺は魔力を持っているのに、使えない。

最後に魔法を使ったのはいつだ?

襲撃のとき?

いやあのときは、魔法が発動していなかった。

最後に使ったのはデュンケルと戦ったときだ。

となると、、襲撃のときになにかがあった?

魔力がなくなったとかか?

俺は冗談交じりに考える。

まて、あの生物、俺が逃げようとした生物がなにか音を発していた。

聞いたこともない音だった。

まさか、、

俺は魔法を使う。


「弱き者にそなたの慈悲の速さを。スピードアップ!」


発動しない。


「慈悲の光よ、傷を消し去れ。ヒーリング。」


発動しない。


俺は、魔力を失ったのか?

ありえない。

魔力を失う?そんなこと聞いたことないぞ。


考えを整理するために、今日村に行くのはやめよう。

イヴァンさんの家に戻ろう。


————————————————————————


「イヴァンさーん。今日ちょっと体調が悪くなってきたので、村に行ってくるのやめます。」


「体調が悪くなったって大丈夫か?」


「はい。一晩寝れば回復するぐらいのやつです。」


「ならよかった。」



俺はベッドに潜り込み考える

俺は魔力を失ったのか?

でもそんなこと本当に聞いたことがない。

だけどそれでしか、説明がつかない。

明日またやってみよう。


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