16日目
調査16日目 2021年12月1日
地方ニュース 電子版
続々報・世田谷公園集団暴行事件、逃亡中の共犯者が逮捕。事件は「呪いの連鎖」か—若者を標的とした新たな加害構造の懸念
2021年12月1日 14:30 報道
古賀優作の逮捕により、一度は収束に向かうと見られていた、都内で多発する「ひとり鬼遊び」に端を発する集団暴行事件において、昨日夜、新たに逃亡中であった共犯者の男(氏名不詳、40代)が、被害者女性への暴行未遂容疑にて現行犯逮捕された。
逮捕された男は、先月発生し、被害者が後に病院で自死に至ったとされる世田谷区公園での最初の事件(遠山里奈さん被害)にも関与していたことが判明している。
警察の取り調べに対し、男は「穢れた贄(いけにえ)を浄化する義務があった」などと供述しており、特定のカルト的コミュニティによって精神的に支配されていた可能性が高い。警察は、この儀式が若者の「不幸を消したい」という切実な願いを悪用し、失敗者を意図的にターゲットとする悪質な加害構造を形成していたと見て捜査を続けている。
また、今回の逮捕は、古賀優作の逮捕後も、ディープウェブ上の匿名コミュニティの影響を受けた無数の「信奉者」たちが、独自の解釈に基づき被害者への暴行を継続しようとしていたという、事件の連鎖性を裏付ける形となった。社会学の専門家は、特定の倫理観を欠いたコミュニティが現実の暴力を誘引する、現代における「見えない呪い」として警鐘を鳴らしている。
◇
ボイスメモ / 橘あかり 遠山里奈自宅居室
2021年12月1日 18:45
(ノイズ。仏壇に手を合わせる音)
橘あかり:「(小さな声で)遠山里奈さん。貴女の無念を知りたい。どうか、私に力を貸して」
里奈の母(女性、50代):「(静かな嗚咽)里奈は……なぜあんなことになってしまったんでしょう。病院に入院して、少し落ち着いたと信じていたのに……。警察は自殺だと。事件のショックだと言うけれど、私は納得できません」
橘あかり:「(静かに)お気持ち、お察しします。里奈さんは、何か秘密を抱えていたように見えませんでしたか? 何か、誰にも言えない不幸を消そうとしていた、とか」
里奈の母:「不幸……そう、里奈は去年の冬からずっと塞ぎがちでした。親友と呼べる子もいなくなって……」
橘あかり:「お預かりしている里奈さんのスマートフォンを確認させていただけませんか? 警察から返されたとき、データはすべて消去済みだと伺いましたが」
里奈の母:「ええ。中身は空っぽでした。でも、どうぞ。この子が生きていた証拠ですから」
(スマホを受け取る音。衣擦れの音。橘あかりが操作を始める)
橘あかり:「(独り言)メールフォルダのキャッシュを漁る……。ああ、あった。これだ。『不幸を消す儀式に成功しました』という件名のメール。里奈さんが儀式を知ったのは、やはりひとり鬼晒しフォーラムに誘導するサイト……古賀優作の仕業だった」
(強いノイズ音。あかりが息を詰まらせる)
橘あかり:「(声が震え始める)来る……! この端末に、里奈さんの残留思念が、呪いが残っている! うそ、強い……! この孤独と、自己否定感は……」
以下、あかりだけに聞こえる音声
残留思念(里奈の声):「お前も晒せ! 私は完遂していない! 同じ苦しみを味わえ! なぜ私だけが汚れるの!」
あかりだけ聞こえる音声ここまで
橘あかり:「(強い抵抗の呼吸音)里奈さん……貴女が、本当に消したかった不幸は何だったんですか? 何が貴女を贄にしたの……!」
(スマホを強く握りしめる音。その力を緩めた直後、薄い紙を取り出す微かな音)
橘あかり:「(驚愕)これ……! スマホカバーの裏に……小さなメモが!」
橘あかり:「(メモを読み上げる、震え声)『葵、ごめんなさい。彼を奪った罰が欲しい。私が悪い。この裏切りだけを消して』……」
橘あかり:「(絶句)嘘……! 葵……森葵さん! 里奈さんが消したかった不幸は、親友の恋人を奪った裏切り……葵さんがあのとき依り代にした『決別の手紙』の原因が、里奈さんのこの裏切りだった!」
橘あかり:「呪いは最初から繋がっていた! 里奈さんは罪を消そうとして贄となり、葵さんは里奈の死の自責を消そうとして次の贄になった……なんて残酷な連鎖なの……!」
(音声終了)
◇
橘あかりの手記
記録日時:2021年12月1日 23:30
遠山里奈の遺品のメモとメールから、これまで別個の事件に見えた被害が繋がった。最初の贄である里奈は、森葵の元親友であった。里奈が儀式を始めたのは、葵の恋人を奪った「裏切りと罪の意識」という不幸を消すためだった。この裏切りが原因で葵は里奈に決別の手紙を送り(葵が儀式で使用した依り代)、その手紙が里奈を精神的に追い詰め、集団暴行の屈辱と相まって清明総合病院での自死という結末を招いた。そして、葵はその里奈の死の責任と後悔を感じ、その不幸を消すために儀式を行い、次の贄となったのだ。呪いは、親友の裏切りと自責の念という、最も個人的で脆弱な核を中心に、悲劇的に連鎖していた。
里奈がその「裏切りと罪の意識」を消そうとして呪いを利用し、自死に至った悲劇を知り、私は自身の使命を、「里奈と葵、二人の贄の無念を晴らすこと」に定め、決意を新たにする。
◇
警察内部記録 山崎刑事の異常行動(修正版)
記録日時:2021年12月1日 23:50
山崎刑事が、古賀から押収された高解像度映像の記録メディアを再び閲覧し、被害者たちの「屈辱の瞬間」の記録に異常な執着を見せている。
彼は、以下の各映像記録の「完遂されなかった屈辱」の瞬間を特に注視している。
遠山里奈の映像(2021/11/15): 里奈が全裸で配信を行い、自傷的な渇望に満ちていた映像の直後、複数の男の乱入により「配信が途絶」した箇所を繰り返し再生。山崎は、里奈が自死で儀式を完遂したにもかかわらず、その「最後の屈辱の瞬間が記録として欠落している」ことに苛立ちを示している。
森葵の映像(2021/11/19): 葵が全裸への露出行為に移ろうとした直後、橘あかりの突入により「強制的に遮断・終了」された箇所を凝視。「救済者の介入により贄が逃げた」ことに、強い嫌悪感を抱いている。
森葵・橘あかりの映像(2021/11/24): 「救済者の加害者化」の記録(互いを脱がせ合う行為)が克明に記録されている場面を、何度も再生。橘あかりが中断させた直前の、二人の薄布姿に執着。「呪いのロジックを破った」あかりへの関心と、屈辱を寸前で回避されたことへの憤りが混じり合っている。
山崎は、「里奈は自死で儀式を完遂したが、葵もあかりも、まだ汚されてはいない」「贄は全てを晒さなければならない」と低い声で呟いている。特に橘あかりの映像を凝視する時間は長く、「最後の贄は、最も美しい裏切りを晒すことになる。あの身体を、隠そうとしても無駄だ」という強迫観念を強めている。
◇
森葵の看護記録
日付/場所: 2021年11月30日未明 清明総合病院 302号室
11/30 03:15: 看護師が巡回時、患者が激しい錯乱状態にあるのを確認。患者は病衣をすべて脱ぎ捨て、全裸でベッドの上を這い回り、自身の身体を激しく叩きつける行為を繰り返していた。瞳孔は開いたままで、焦点は合わず、「汚い、もっと晒して」「私を見て、罰を与えて」と呻き続けている。呪いの強迫観念が、以前にも増して自己破壊的な行動へとエスカレートしている。
11/30 03:30: 患者は突如、ベッドサイドの壁に備え付けられた小型の鏡に駆け寄り、全裸の自身の姿を執拗に凝視し始めた。鏡に向かって「裏切り者」と罵声を浴びせ、涙を流しながら笑うという、極度の自己矛盾に陥っている。これは、遠山里奈が最初に行った「鏡を利用した自己配信」の行為を無意識に追体験している兆候であると判断される。
11/30 03:45: 精神的な興奮が極限に達したため、医師の指示に基づき、前回よりも強い鎮静剤を投与。患者は鎮静後も微かに「あかり」「あなたも……」と、橘あかりの名を口にし、連鎖の継続を示唆する言葉を漏らしている。
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