【第二章】謎の巨大生物調査編

【第6話】ツッコミ役の決意と万屋の異変

翌朝。


アルバイトの緑川健(みどりかわ たける)は、万屋の前に立っていた。その手には、深夜のうちに清書した「退職願」が握られている。

昨日の出来事――クッキー一枚で悪の総帥が撤退し、コードが勝手に動き出した光景は、健の常識を音を立てて崩れた。


(もうダメだ。この万屋は、僕という普通の人間が耐えられるレベルじゃない)


健は深呼吸し、店に入った。万屋の扉は、昨日の爆発で半壊したまま、応急処置のベニヤ板で塞がれている。


「おはようございます、ゆーくん」


カウンターでは、白銀梓(しろがね あずさ)が、静かに湯呑みを磨いていた。彼女の顔には、昨日悠真の平和を守ったことへの満足感が満ちている。


「梓ちゃん、おはよう。……あの、ゆ、悠真さんは?」


健は緊張でどもる。悠真がいつもいるはずのカウンターにいない。


「ゆーくんなら、もう出発しましたよ。昨日の『巨大生物』の依頼です」


梓は淡々と答える。健の脳裏に、昨日の悠真の言葉が蘇った。


『隣町の「謎の巨大生物」の調査依頼だよ。報酬は良いんだけど、ちょっと危険そうなんだ。でも、うちは何でも屋だからね!』


「はあ!?出発って、勝手に!?しかも、一人で!?」


「はい。ゆーくんは、『この依頼は僕が、平和な必定を送るための大切な一歩なんだ』と言っていました」


健は頭を抱えた。


(平和な世界って、あんた何も知らないだろ!平和が音連れないのはいつもあんたのせいだよ!)


健は退職願を梓に見せつけるように、カウンターに叩きつけた。


「僕は、辞めます!梓ちゃんには悪いけど、こんな命がいくつあっても足りない万屋で働くのは無理だ!」


梓は、悠然と健の退職願を見た。彼女の瞳に、僅かな冷たい光が宿る。


「…健、それはゆーくんの『平和な日常』を乱す行為です。ゆーくんは『健は、僕の平和な日常に欠かせない、重要なメンバーだ』と言っていました」


「へ?俺が?いや、俺ただのツッコミ要員ですよ!?」


梓は健の言葉を無視し、退職願を手に取った。次の瞬間、その退職願は、梓の手によって、粉々に粉砕された。


「ゆーくんの意思は絶対です。あなたは辞められません」


(物理的に拒否られた!?なんだこの超人的な握力は!?神が砂になってない?これで僕の退職への道は閉ざされたのか!?)


健は、悠真の「平和な日常」を守るという梓の圧倒的な意思の力を前に、戦慄した。

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