第2話 ラブレターは差出人不明
何度も読み返すうちに、ラブレターに対して一つの疑問が湧いてしまった。
なんだろうか、なんというか、何かが足りない気がする。本来あるはずのものがない気がする。
わたしは疑問を晴らすかのように、再度ラブレターを見返えす。
しかし、何度読み返しても特段変なところは見当たらない。
わたしへの宛先が書いてあって、わたしのことが好きという内容が書いてあって、だれが書いたかわかるように差出人の名前が書いて……はっ!
「このラブレター、差出人の名前が書いていない!」
例えて言うなら、カツカレーのカツだけなくて、カレーライスしかない感じ。カツのないカレーがカツカレーとして成立しないように、差出人のわからないラブレターは手紙として成立していない。
なんでこんな例えが思いついたのか、それはきっと昨日の夕飯がカレーだったからに違いない。
てかそんなの今はそんのどうだっていいよ、今は目の前の問題を解決しなきゃ。
わたしはラブレターを貰ったんだ、告白を受けるか断るかは置いといて、返事をするのはもらった側の道理というものだと思う。
しかし、その返事に一番必要な差出人の名前がわからない。わからない以上どうやったって返事のしようがない。
「一体誰が、わたしに書いたものなんだあ」
わたしは頭抱えながら思考の迷宮に捕らわれる。
ここでわたしが、差出人不明ということで返事をしないという選択肢だってある。 でもそうした場合、これを書いてくれた人の気持ちはどうなっちゃうんだろう。
告白をするということは、とても勇気のいることだと思う。『断られたらどうしよう』とか『その人と関係が悪くなったらどうしよう』とか、そんなことを思って告白に一歩踏み出せない人はいっぱいる。多分わたしもそっち側の人間だし。
このラブレターを書いた人はそんなことはわかっていながら、一歩踏み出して、書いてくれたに違いない。
手紙を見ていれば、なんかそんな気持ちが伝わってくる。
だとしたら、差出人が不明だとしても、このままわたしが何もしないのはこのラブレターを書いた人に対する、一番やってはいけない最低の行為だと思う。
そこでわたしは考えた、どうすればよいのか、そして少し悩んでわたしはある一つの方法を思いついた。
「そうだ!広い中から探すんじゃなくて、広いものを狭めればいいんだ」と。
わたしの脳内PCから、ラブレターをくれる心当たりがある人をはじき出し、その中から推測で差出人を見つける。
正直賭けだし、見つけた人が本当に差出人かはわからない、それでも何もしないよりかはましだと思い、わたしは心当たりがる人物を思い浮かべる。
するとわたしの脳内に、四人の美少女の顔が浮かんできた。
いやいやいやいや、ないないないない、そんなわけがない。
どうしてしまったわたしの脳内、ぶっ壊れたのかわたしの脳内。
浮かんできた四人は、約三か月弱の高校生活の中で仲良くなれたわたしの大切な友達だ。
四人ともただそこにいるだけで、圧倒的存在感を放つ超が付くほどの美少女たち。
クラス、いや、学校中で人気ものなんじゃないかな。
なんでこんなわたしが友達になれたのか、未だに謎でしかないよな。
いや噓でしょ。四人中の誰かが、わたしを好き!?いやまだ決まったわけではないんだけど。
でもあの四人以外となると、ラブレターをくれそうな候補がいない。いるわけがない。
「うーん、全然わかんないよー」
それからもわたしは、ラブレターをくれた相手について考え続けた。
悩みが一つ解決したというのにまたすぐ新たに悩みが出てくる様は、さながらマトリョーシカのよう。
しかしいくら考えても答えは出ることはなく、無情にもホームルーム前のチャイムが鳴ってしまった。
「あぁもうこんな時間、早く教室いかないと」
慌ててラブレターをカバンにしまうと、足早にその場を去り教室へと向かった。
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