梨王子のハートブレイク
鋭い牙を剥き出してフィレ肉は今にも檻を破ろうとしています。
「き、き、き、君は何をいったいなにを考えているんだい。あ、あ、アイツは……」
「『肉』族だ。そんなのわかっている。凶悪で凶暴。だから連れてきたのさ。わからせるためにナッ!」
「……ハアァ〜!」
梨王子にはラ・フランスの言い分がわかりません。強いて言うなら早朝、メイクの時アイラインがずれてしまったのがなんだか気になるぁくらいでした。
今日はなんだか嫌な気がした!
「なにを震えているんだい、フフーン?」
「べ、別に震えてなんかないもん」
「そうかい、ならもっと佇まいを優雅にしてシルブプレ」
「君はなんだか解せん。僕は失礼させてもらうよ」
立ち去ろうとする梨王子に対してラ・フランスが、
「アスペッターレ!待ちたまえ。君にはミーの偉大さをこれから存分に傍観していただく義務が……」
「じゃあそういうことで」
熱意を振るうが肝心の本人は去っていこうとします。
「実にマンマミーアだね君ハッ!」
ラ・フランスは憤慨します。
「ヘイ、『フラフラッ』‼︎」
「ペア!」
プリンセス・ラ・フランスのしもべの『フラフラッ』達は合図と共にわっせわっせと梨王子達を囲みます。その様は装甲車が列をなして大事な物資を運び出すかのよう。
「キミタチハナシタマエー」
「ナシー」
かったるそうに彼らは即席で設けられた閲覧席へと運ばれて行きます。
「Hay You」
「ミーはプリンセス・ラ・フランスだ!」
「僕は色々と忙しいので帰らせてくれない?」
「フフーン、君のベリッシモな戦歴は先ほど聞かせてもらった。だからこそ見せる。ミーの勇姿を!寛大さを!超絶ド級のカッコ良さを‼︎」
ひとりの男はひとりの男に向かって……そして何より自分自身に向けて言葉を放つ。やがてくる夢へと向けて。
「見ていたまえ、君が無様に逃げ出したフィレ肉にひとりで立ち向かうミーを‼︎」
「……ナンデソレヲ……」
この時、二人の視線が重なり見えない光線が弾き合った。そして一瞬にして片方の光が弱く消えた。それは梨王子のものであり彼は隣にいた『FP』の肩に落ち着いてしまったのだ。
「さあ、出てこい魔獣ヨッ!」
ガシャン。
檻の扉が開き、中からフィレ肉が咆哮と共に飛び出したのです。
「がおお‼︎」
––––––––僕が相手ニ降参!
「キャ……」
それは梨王子の追憶でした。
「勝者は誰か?」
ラ・フランスは語りかける。
「ヨウ‼︎」
『フラフラッ』達が張り切ってその名前を叫びました。
「ナシ〜」
『FP』達は梨王子の活躍を知りません。それ故に彼から聞いていた事実との相違を感じて戸惑っているのです。
「このミー!プリンセス・ラ・フランスだ‼︎」
ズバーン‼︎
ロングソードで一刀両断した。
「があぁぁぁぁ!」
「Ohーwww‼︎」
かつて自ら逃げ出した存在を一撃で滅してしまった。その圧力に梨王子はただ叫ぶことしかできません。
「見たか、これが王女を救うミーの超絶ド級のカッコ良さだ!」
「ちょ、超絶……ド級のカッコ良さ……だと」
激しく衝撃を受けてしまいました。
「カッコ良さをも凌ぐ超絶ド級のカッコ良さだ。後ろを見ろ」
「はっ」
梨王子は気づきます。『FP』達の哀れみの視線を。
「ち、違うんだ」
「なにが違う?それが君の真実。カッコ悪さだ」
「Noー‼︎」
「君は王女から手を引け」
「……」
悔しさしかありません。
「僕は……うわーん!」
梨王子は走りました。とにかくどこでもいい。そこから逃げたかったのです。
「ナシ〜」
『FP』達はそれを追いかけます。
「負け犬共が背中を見せ続けてろ。ミーが夢の果てに見るのは王女のふわっふらっなレ・ラッブラだ‼︎チュパ」
その後、甲高い笑い声が梨王子の耳にこびりついたとさ。
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