第8話:せっかくだから社会人の時によく訪れた場所に行ってみる

 その日の放課後。


「んー、今日も一日が終わったなぁ」


 俺はそう呟きながら背伸びをしていった。教室にいた生徒達も次々に教室から出て行ってる。


 まぁ皆それぞれ部活に行ったり、友達と一緒に遊びに行ったり、バイトに行ったり、塾に行ったりと、それぞれの放課後の過ごし方があるだろう。


 でも俺は部活には入ってないし、友達もいないし、バイトにも塾にも通っていないので、放課後は特に何もする事のない時間帯になっていた。


 だからタイムスリップしてから今日に至るまで毎日ずっと暇な放課後を味わっていた。もちろん今日も暇な放課後を味わう事になる。


「うーん、でもこのまま何もやる事が無くてすぐに直帰するってのも飽きて来たし……あ、そうだ! それじゃあせっかく過去にタイムスリップしたんだし、何処か思い出の地とかをブラブラと探索したりかするのも面白いんじゃないかな?」


 俺はそんな面白そうな事を考えていった。


 まぁでも高校生だった頃は学校と自宅の往復しかしてないし、休みの日もずっと自宅に引きこもっていたから、過去の思い出の地なんて一つもないんだけどさ。


 でも社会人になってからは色々な場所を訪れていった。社畜として外回りで都心部に行く事は非常に多かったし、飲み会で繁華街に行く事も多々あった。俺が働いてたブラック会社自体も都心部にあったしな。


 そんな社会人になってから頻繁に訪れてた場所が、13年前の今現在はどんな感じなのか見てみるのも面白そうだよな。という事で俺は……。


「よし、それじゃあこの後はずっと暇だし、今日は社会人の頃によく訪れてた場所を見に行ってみよう!」


 という事でそんな事を決めた俺は、早速これから社会人の頃よく訪れていた場所に行ってみる事にした。これは何だか面白そうな予感がするな!


◇◇◇◇


 それからしばらく経って。


 俺は幾つかの電車を乗り継いで大都会の新宿駅に降り立った。


 ここは俺が社会人だった頃に取引先との打ち合わせや飲み会とかで、かなり頻繁に訪れていた場所だ。それに俺の働いてたブラック会社も新宿駅の近くだった。だから東京都内の中でも新宿駅はかなり思い出のある駅だ。


 まぁそんな社会人の頃には頻繁に利用してた新宿駅だけど、13年前の高校生だった頃には一度も訪れた事はなかった。だから高校時代に初めて新宿駅に降り立ってみるというのは、何だかちょっとだけ感慨深い気分になる。


 という事でそんな感慨深い気分のまま宿駅駅から降り立っていき、そのまま街並みをグルっと見渡していった。


「へぇ、街並みとか店の並びとか雰囲気はちょっとだけ違うけど、でもやっぱり今も昔も新宿は若い人で賑わってるんだなー。それじゃあせっかくだし新宿を散策してみよう!」


 そう言って俺は新宿の中を歩き始めていった。まぁ流石に学生服を着たまま歓楽街の方に行くのは年齢的にマズイ気はしたので、歓楽街以外の安全そうな所をグルりと見て回っていく事にした。


「おぉ、ここのゲームセンターって13年前もあったんだ! それとあそこの小さな映画館もちゃんとあったんだな! あ、でも俺が会社の同僚とよく行ってた安居酒屋はこの頃にはまだ無いのかー……って流石に飲食店は移り変わりが激しいからそれは当たり前か。あはは!」


 俺はワクワクとした気分になりながらそんな感想を呟いていき、それからも過去の新宿の街並みを楽しく散策し続けていった。


 それとさっきから散策中にかなり大勢の人達とすれ違っていた。若いカップルや制服を着た学生、スーツを着たサラリーマン、パリピそうなギャルやホストっぽい感じの人とか……本当に大勢の人達で新宿は賑わっていた。


 この老若男女問わず大勢の人達で賑わっているこの街の雰囲気は、今も昔もちっとも変わらないんだな。


 そしてこんな過去の賑わっている新宿の雰囲気を味わえるっていうのも……はは、何だかタイムスリップならではの経験って感じがして凄く楽しい気分になるよな。


「やっぱり13年前でも新宿って物凄い人気の街だったんだな。はは、こうなってくると他の都心駅も見てみたいなー……って、うん?」

「……っ……!」

「……っ……!」


 笑いながら新宿散策を続けていると、ふと何やら少し先の方から喧噪の声が聞こえて来た。


 俺は何だろうと思いながらも少し気になったので、俺はその喧噪の声が聞こえてくる方に行ってみた。


「おっ、口論してる人達が見えてきたな。って、あれ? あそこにいるのは……」


 喧噪の声が聞こえた方に向かってみると……そこでは若くてチャラそうな男と、同じく若いギャルが激しく口論をしているようだった。というかあのギャルって……。


「えっと、あそこにいる女子って……前島さんじゃないのか?」


 そのチャラ男と口論している女性はまさかの前島さんだった。学生服を着てるし、あの綺麗な金髪と艶ぼくろにグラマラスな体型は流石に見間違えない。


「いやだからさっきから謝ってんだろ? だからさっさと俺達ヨリを戻そうぜ?」

「はぁ? ヨリを戻すわけないじゃん? そっちが他の女と浮気しておいて、それで私に飽きたとか言って自己中的に振ってきたクセに何言ってんの??」

「だからそれはちょっとした冗談だったんだって。浮気ってのも誤解なんだよ。ほら、香織ってめっちゃ美人だし、スタイルも抜群だから高級寿司みたいな感じじゃん? でもやっぱり毎日高級寿司ばっかり食ってると飽きるというかさぁ……だから一回だけハンバーガーを食べに行ってみたってだけなんだよ。つまりあれは全然浮気なんかじゃないんだよ。ちょっとオヤツを食べに行ってただけなんだ。だからそんな些細な出来事で怒ってないで、さっさと許してくれよ、香澄ー」

「はぁ? 私を高級寿司とか言って喜ぶと思ってんの? はっきり言って不愉快なんですけど。ってかいいからさっさと帰ってくんない??」

「いやいや、そんな怖い顔すんなって。俺達の仲なんだからもっと楽しそうに笑ってくれよなー。それでさっさと俺とヨリを戻そうぜ? ほら、俺達って最高に良いラブラブカップルだったじゃんか? だからまた楽しく付き合おうぜー!」

「いやふざけんなよ。テメェとヨリなんて戻すわけないだろ。だからさっさと諦めて帰れ……って、ちょっと! 何勝手に私の腕を掴んでんだよっ! さっさと手を放せよ!」


(うーん、なんというか、タチの悪い元カレとの喧嘩のようだな……)


 どうやらあの若いチャラ男は前島さんの元カレのようだ。まぁ状況から察するに復縁を迫っているという感じだな。という事で俺はそんなチャラ男の観察をしてみた。


 前島さんの元カレのチャラ男の容姿はかなりのイケメンだ。年齢は二十歳前後の大学生って感じかな。身長も高いし服装もスタイリッシュでかなりカッコ良い感じだ。モデルとか俳優って言っても過言ではないレベルのイケメン男だ。


 そんなカッコ良いイケメン男と超絶美人なギャル女子の前島さんが並びあっていたら、普通にモデルの美男美女カップルという感じに見えてしまうだろうな。


 まぁつまり見た目だけならかなりお似合いのカップルという事だ。でも前島さんはそんなイケメン男に腕を掴まれて物凄く嫌がっている様子だった。それに前島さんはかなり困っている様子でもあった。


(……流石にこの状況を見なかった事にして帰るのは人として駄目だな……はぁ、それじゃあ仕方ない……)


 という事であんまり気乗りしなかったけど、でも困ってる人を見過ごすのは人として良くないと思うので、俺はため息を付きながらその喧噪へと突っ込んでいった。


「あはは、別に腕を掴む位良いじゃんか。それに俺本当にめっちゃ反省してるんだぜ? 今まで香澄の事を全然大切にしてなかったって気が付いたからさ、だからこれからはマジで香澄の事大切にするよ。マジで命賭けても良いからな。って事でさ、これで良いだろ? ちゃんと反省したし、ちゃんと謝ったんだからさ、これで浮気の件はチャラって事でまた今日から楽しく付き合おうぜ? あ、そういえば香織ってこのあと暇か? せっかくだし今日は復縁した記念にこの後すぐにラブホにでも行こうぜ? そんで久々に楽しくセックスしようぜー!」

「ふざけんなよ。何調子乗った事を言ってんだよ?? テメェみたいな最低なゴミカス男とセックスなんて二度とする訳ねぇだろ」

「あはは、相変わらず辛辣な女だなー。でも香織は口ではそんな事言っても、いつも俺とセックスする時は凄く楽しんでたじゃんか? って事でほら、久々の仲直りセックスしようぜー? 今日は反省の意味も込めて香織の事めっちゃ気持ち良くしてやるかさ! だから今から一緒にラブホ行こうぜー!」

「はぁ? 何キモい事言ってんだよ? だから私は行かねぇって……って、あ、ちょ、ちょっと! 腕を引っ張るなよ、このバ――」

「……はぁ。あのー、すいませんー。その女子から手を放してあげてくれませんかー?」


―― ガシッ!


「あははーって、ん?」

「え……って、なっ? ア、アンタは……!?」


 前島さん達の元に到着した俺は、すぐさまイケメン男の腕をガシっと掴んでいきながらそんなお願いをしていった。


 するとイケメン男は何が起きたかわからず、キョトンとした表情で俺の方をじっと見てきた。


 そして前島さんも同じように俺の方をじっと見てきたんだけど、でも前島さんはかなり驚いた表情を浮かべていた。


(まぁそりゃあクラスメイトがこんな所にいたらビックリするに決まってるよな)


 まぁ何はともあれ、これで俺もこの喧騒に巻き込まれていく事になった。さてさて……それじゃあさっさとこのメンドクサイ状況を打破していかなきゃだな。

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