第7話:委員長に激励の言葉を貰う

「あ、もしかして大神君はグループLIMEがある事を知らなかったのかな? それじゃあ大神君がグループLIMEにいなかったのは招待を自分で断ったからじゃなくて、誰からも招待されてなかっただけなのかな?」

「う、うぐっ……!? え、えっと……まぁ、そうなるな……」


 委員長はキョトンとした表情をしながら俺にそう言ってきた。


 事実だから仕方ないんだけど、そんな現実を突きつけられてしまうと滅茶苦茶ショックだな……。


「なるほど。そういう事なら良かったら今からクラスのグループLIMEに入るかい? 私が大神君に招待コードを送ってあげるよ?」

「……いや、いいよ。グループLIMEに入るのは遠慮しておく……はぁ……」

「ふむ、本当に入らなくて良いのかい? さっきの大神君の質問から察するに、君はクラスの皆と打ち解けたいと思っているように見えたけど? もしそうならグループLIMEに入った方が手っ取り早いんじゃないかな?」

「いや、まぁ打ち解けたくないって言ったらそれは嘘になるけど……でもクラスの皆から嫌われてたり異質だと思われてるこの状況で、クラスのグループLIMEに入っても逆に空気を悪くするだけだろ? それに俺を招待した委員長も変な目で見られるかもしれないじゃんか。委員長にまで迷惑をかけるのはちょっと違うから、だからそのグループLIMEに俺を入れようとはしなくて大丈夫だよ」


 俺は委員長の目をしっかりと見ながらそう答えていった。


 百歩譲って俺がクラスの皆から嫌われているのは自業自得な部分もあるから仕方ないと思えるんだけど……でもそんな皆から嫌われてる俺をグループLIMEに招待した事で、委員長もクラスの皆から白い目で見られてしまう可能性があるからな……。


 流石に委員長に迷惑をかけてまでグループLIMEに入りたいなんて絶対に思わないので、俺はその提案をキッパリと断っていった。


「そうかい? 私は全然そんな事は気にしないんだけど……まぁでも大神君がそう言うのなら私はその意見を尊重するよ。まぁでもグループLIMEに入らないのは別に構わないんだけど、それならその代わりに良かったら私と個人的にLIME交換をしないかい?」

「え? 委員長と?」

「そうそう。大神君はグループLIMEに入ってないから、グループLIMEで何か重要な話があったとしても大神君はそれを知る手段が無いよね? だからもしもグループLIMEで重要な話があった時には私が君に直接LIMEでメッセージを送ってあげるよ」

「あ、なるほど。それは確かにありがたいな。わかった。それじゃあ良かったらLIME交換を頼めるかな?」

「うん。もちろん。それじゃあ、はいこれ。QRコードを表示させたから、大神君のスマホで読み取ってね」

「あぁ、わかった。それじゃあ……」


 委員長はそう言ってスマホの画面を見せてくれた。なので俺もスマホを取り出してそのQRコードを読み込んでいった。


「はい、LIMEの申請を送ったよ」

「うん、ありがとう。私も申請承認をしたよ。それじゃあグループLIMEで何かあったら大神君にLIMEで直接連絡するよ。それと大神君が何か困った事とかがあったらいつでもLIMEで私にメッセージを送ってくれていいからね。私はクラスの学級委員長として、いつでも君の味方でいるつもりだからさ」

「……委員長」


 委員長は最初に会った時と変わらず柔和な笑みを浮かべながら、そんな優しい事を言ってきてくれた。


 本当にこの子は凄く優しい女の子なんだなというのを実感していった。


「……うん、ありがとう。それじゃあさ……まぁ、何というか、これからも何かあったら委員長に相談とかしても良いかな?」

「うん。もちろんいつでも大歓迎だよ。それにしても大神君が私の事をこんなにも頼ってくれて、しかもお喋りまで沢山してくれる日がやって来るなんてね……ふふ、何だかとても嬉しいな」

「え? こんな普通に話をしてるだけなのに嬉しいって……それは一体どうして?」

「だって大神君とは去年も同じクラスだったのに、今までまともに話をした事なんて一度も無かったでしょ? 私は一年生の頃に何度か大神君に話しかけた事はあったけど、でもその度に大神君には無視されてしまっていたからね」

「え……えぇぇえっ!? そ、そうだったのか!?」

「うん。大神君はいつも心ここにあらずって感じだったから、私は心配して何度か“大神君、大丈夫かい?”って尋ねてみたんだよ。まぁその度に無視されてしまったんだけどね」

「なっ!? そ、そんな……!?」


 そんな衝撃的な事実を聞かされて俺はかなり驚いてしまった。


 だって一年の頃に委員長が心配して俺に何度も声をかけてきてくれてたなんて、そんなの今まで全然知らなかったからだ……。


 確かに一年の頃は一番メンタルが死んでた時期だから、あの頃の俺はずっと心ここにあらずって感じだったと思う。


 そして俺はそんな状態だったから、あの頃は声をかけられても全然気が付かなかったんだと思うんだけど……でも心配してくれてた委員長の事を何度も無視してしまってたなんて、そんなの最低過ぎるだろ、俺……。


「そ、それは本当にごめん。一年の頃に委員長に声をかけられてたなんて全然気が付いてなかったんだ。わざとでは決してないんだけど……でも委員長からしたら無視されたと思うに決まってるよな……本当にごめん、委員長……」

「ううん。全然大丈夫だよ。大神君はずっと上の空だったし、きっと何か大変な事でもあったんでしょ? だから私を無視しちゃったとかそんなの全然気にしなくて大丈夫だよ。ふふ、それにさっきも言ったけど、私は今こうして大神君とお喋りが出来てる時点で凄く嬉しいんだからね? だからそんな悲しそうな表情なんてしないでさ、もっと楽しく笑いながら沢山お喋りをしようよ?」

「委員長……」


 委員長は柔和な笑みを浮かべたままそんな優しい言葉を俺に投げてくれた。


(あぁ、本当に……本当に委員長って誰よりも優しい女の子だったんだな……)


 委員長の優しい言葉を受けてそんな事を思っていった。そして俺は委員長が一年生の頃から心配してくれていた事を嬉しく思いつつも、こんなに心配をかけさせてしまってたなんて非常に申し訳なくも思った。


 だから俺はそんな優しい委員長のためにも……今回の人生ではしっかりと生まれ変わっていこうと改めて決意していった。


「委員長。ありがとう。そう言ってくれて。俺さ……正直今までかなりウジウジとしてて、暗い性格だったと思う。委員長にもいっぱい心配かけちゃってごめん。でもこれからはさ……そんなウジウジとしてた自分をしっかりと反省して、これからは真面目な男子生徒になっていこうと思うよ」

「そっかそっか。それはとても良い目標だと思うよ。それじゃあ私も応援しているから、大神君はこれから真面目な生徒を目指して頑張っていってね。それと私に出来る事があるなら幾らでも手伝ってあげるから、何かお手伝いが欲しいなって時は気軽に言ってね」

「そう言ってくれると凄く助かるよ。今日は委員長に相談して本当に良かったよ。俺の話を茶化さず最後までしっかりと聞いてくれて本当にありがとう」

「うん。そう言って貰えるなら私も相談に乗った甲斐があったというものだよ。でも今の大神君はもう既にしっかりと生まれ変わっているように私は感じてるけどね。あ、もちろん良い意味でだよ。ふふ、これはもしかして、男子三日会わざれば……ってやつかな?」

「はは。俺は何の成果も上げてないただの一般男子だよ。まぁでもいつかは俺も呂蒙みたいな文武両道の大武将になれたら嬉しいけど――」

「え……って、えぇえええっ!?」

「えっ? ど、どうしたの?」

「い、いや、呂蒙の名前が出せるなんて凄いよ大神君! もしかして君は三国志について語れるのかい!?」

「えっ? えっ?」


 委員長は三国志の故事成語を口に出してきたので、俺はその元になった大武将みたいな凄い人間になれたら嬉しいなと返事を返していった。


 するとさっきまでずっと柔和な笑みを浮かべていた委員長は、一転して物凄く目をキラキラと輝かせながら俺の事をじっと見つめてきた。


「え? えっと、まぁ、三国志に関してはそこそこ知ってるかなっていう程度だよ。ゲームとか映画とかの知識で知ってるって感じだよ」

「ほうほう、そうなんだね! 実は私も三国志は幼少の頃から大好きなんだ! いやー、今まで三国志を語れる人が周りにいなかったから、ようやく私の三国志談義に乗っかって来てくれる人が現れてとても嬉しいよ!」

「そ、そっか。まぁ確かに今の若い子達は三国志はそこまで興味はないかもしれないもんな」


 俺も学生の頃は三国志は全然知らなかったしさ。


 俺が三国志を知るようになったきっかけは会社の先輩とか上司とか取引先の相手とかに三国志が好きな方が多かったから、俺も話すきっかけのために三国志を調べていくようになったという感じだ。


 だから俺は三国志については社会人になってから知ったんだ。それでちょっと前にテレビで放送してた、パリピになった諸葛亮がDJをするアニメとドラマはかなり面白くてめっちゃハマったよなぁ。


 そんな感じで俺は大人になってから三国志にハマったんだけど、委員長は幼少の頃から三国志が好きだったなんて凄いな。もちろん三国志は凄く面白いと思うけど、でも幼少の頃からハマるにしてはちょっと渋過ぎる気がするな。


「うんうん、本当にそうなんだよね。最近は三国志は全然興味ないっていう若い子たちが多くて悲しいよね。学校の図書室に三国志の漫画が全巻置かれてるんだから全生徒にも見て貰いたいものだよね。あ、ちなみに大神君は三国志で好きな人物は誰かな? 私はやっぱり王道ではあるけど諸葛孔明が一番大好きだなー!」

「あぁ、諸葛亮が好きなのは何だか委員長っぽい感じがするな。うーん、俺はそうだな……まぁ俺はゲームから三国志を知ったんだけど、そのゲームでは趙雲が初心者でも強くて使いやすいキャラクターだったから結構愛用してたんだ。だからそんな愛着補正も入って俺は趙雲が一番好きかな?」

「ほうほう! 大神君は趙雲子龍が大好きなんだね! それは凄く良いチョイスだね! ふふ、それじゃあ私達は蜀を愛する者達って事だね!」

「えっ? い、いや、俺は趙雲を好んで使っていただけで、委員長と同じくらい蜀を愛しているという訳ではないんだけど……」

「まぁまぁ、そんな細かい事は良いじゃないか! せっかく三国志を語れる同士を見つけたんだし、これからも良かったら三国志談義をしていこうよ! あ、それじゃあ大神君は三国志ではどこら辺の戦いが……」


 そんな感じで委員長は目を物凄くキラキラと輝かせたまま、楽しそうに三国志トークをすぐに始めていった。


(……ま、委員長が喜んでるようなら良いか)


 まぁやっぱり好きなモノを語りたいのに、周りにそういうのが好きな人がいないのって寂しいもんな。


 という事でそれから俺はそんな目をキラキラと輝かせている委員長と一緒にベンチに座ったまま、お昼休みが終わるまでずっと三国志トークで楽しく盛り上がっていった。

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