第2話 親友


「あ、鏡花きょうかいた」



 揺れる黒髪ショートヘアを眺めながら美月に手を引かれて1年B組にやってきた。僕に見知った人は1人もいなくB組達の視線が集中するなか若干の気まずさを覚えながらスマホを触っている鏡花という人の席に向かった。



「ふ〜ん、そのちっこい萎男が美月の彼氏ってわけ?」


「そう、可愛いでしょ?」


「ハッ、あっしの趣味じゃないね」



 大きなカラコンの青い瞳と肩から流した金髪、黒いマスクに耳にピアスまで施され僕とは住む世界が違うと漂う空気感で悟った。



「えっと、美月?この学校って金髪ピアスOKなの?」


「普通科は緩いけど工業科は厳しいらしいよ〜」


「そ、そうなんだ…」



 派手にコーティングされた長い爪でカチカチとスマホ画面をタップする鏡花に美月はグイッと体を寄せた。



「ねぇ、彼氏さんとはどうなの?」



 耳元で囁かれた美月の吐息混じりの声に鏡花はビクッと肩を振るわせ耳を手で覆った。



「近ぇってッ!たく…アイツは相変わらずだよ」


「そうなのね」



 スッと鏡花から離れて僕の右腕に絡むようにピタッとくっつく美月、周りの視線が厳しく冷や汗もかいてきたし直ぐにB組から出たい気持ちでいっぱいだ。



「来週の土曜日遊園地でWデートしない?」


「無理、バイト」


「えーと、その日は鏡花休みだよね」


「なんで知ってんのよ…」


「親友のバイトのシフトくらい把握してなきゃ」


「でも無理、金ないし」


「入園料は私が出すからぁ、それとも久々に一緒に遊ぶのは嫌?」



 僕は涙を堪えたような上目遣いの美月の姿に狡猾な女の部分を垣間見た様な気がするけど可愛いから問題無し。僕が美月からあんな風にお願いされたら1秒で首を縦に振ってしまうだろう。



「ハァ…しゃーないなぁ」


「やった!嬉しい!」



 ちょうど授業開始5分前のチャイムが鳴りB組から退出したが、少しの出来事が30分は滞在して居たかの様に永く感じられた。



「あのー美月さん、唐突にWデートって何をするんですかね」


「え?そんなのレン君が鏡花を堕とすのに決まってるじゃん」


「ん?」


「あと遊園地で鏡花の彼氏さんは私が1日相手するけど心配しないでね?」


「ッ!?!?1番心配するんですけどぉぉッッ!?」

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