ヤマダさんの花粉症を救った翌日。大山とアカリは、次の**「困っている人」**を探して、オフィス街に繰り出していた。

「大山。**『真の困窮』とは、『物質的な欠乏』ではなく、『精神的な質量超過』**にあるものよ」

アカリは、クリップボードを抱え、ビルの陰からビジネスマンたちを観察していた。

「見て、あの男」アカリが指差したのは、部下を相手に大声で怒鳴りつけている中年の男性だった。ムラカミという名札が見える。

「彼の**『怒りの出力』は、周囲の『大気の密度』を局所的に上昇させているわ。これこそ、『自己評価の過剰化』が生み出す『精神的な重力波』**よ」

大山は、ムラカミの剣幕に少し怯んだ。

「あれは、単なるパワハラ上司だろ。困ってるのは、怒鳴られている部下のほうだ」

「いいえ。『真に困っている』のは、『怒鳴ることをやめられない』ムラカミよ。彼は、怒鳴ることでしか『自分の存在価値の重さ』を保てない、『5グラムの本体』が不安でたまらない哀れな生命体なの」

アカリの冷徹な分析は、いつもの難しい言葉と大きな主語で語られたが、妙に説得力があった。

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