女神の手違いで美少女に転生してしまったらしい
柔らかな木漏れ日と、小鳥のさえずり。心地よい風が頬を撫でる。
ゆっくりと目を開けると、そこは見知らぬ森の中だった。
どうやら俺は、異世界とやらに無事到着したらしい。
起き上がろうとして、違和感に気づく。
手足がやけに細く、しなやかだ。
視界の端には、今まで見たこともない銀色の長い髪が揺れている。
おそるおそる近くの泉に歩み寄り、水面を覗き込んだ。
そこに映っていたのは、大きな碧眼に透き通るような白い肌、そして肩まで伸びる銀髪を持つ、見知らぬ美少女だった。
「…………は?」
誰だ、こいつ。
俺は自分の頬に触れる。
水面の少女も、同じように頬に触れる。
信じられない、信じたくない現実が、冷や水を浴びせるように脳を殴りつけた。
「あのクソ女神……! 性別設定って、これのことかよ!」
どうやら俺は女に生まれ変わってしまったらしい。
男としての半生が、アイデンティティが、音を立てて崩れていく。
絶望に膝から崩れ落ちそうになった、その時。
さらなる追い打ちが俺を襲った。
自分の体を見下ろして、息を呑む。
俺の……いや、この少女の体には、幾重にもフリルが重ねられた、純白のドレスが着せられていた。
胸元には大きなリボン。
膨らんだパフスリーブ。
何から何まで、俺の感性とは対極にある、悪趣味なデザインだ。
「なんだこの服……! これが女神の言ってた初期装備か?」
気色が悪い。
一刻も早く脱ぎ捨ててやりたい。
俺はドレスの襟元を掴み、力任せに脱ごうとした。
だが――。
「……ぐっ、ぬぅん……!」
びくともしない。布地のはずなのに、まるで鋼鉄のようだ。
それどころか、俺が力を込めれば込めるほど、ドレスは淡い光を放ってその強度を増しているようにすら感じられる。
やがて肩を落として(ᗜ _ ᗜ)こんな顔をした泉の中の自分と目を合わせていると、足元でぶるぶると何かが震える音がした。
薄型の端末。ユーティが手にしていたのと同じ、日本人の俺にとってなじみ深いそれは――スマホによく似ていた。
スマホと少しだけ違うのは、給電用のケーブルを差す個所が見当たらないこと。
画面をタップすると、そこには文字が表示されていた。
文末にハートマークと、やたらとキラキラした絵文字が並んでいる。
全体から漂うのは、妙な軽さと嫌な予感だった。
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はぁーい☆ユーティだよ☆
【
着替えの手間を省ける優れものよ☆彡
♡♡♡それから♡♡♡
アタシのゴッズ・グラムのフォローも忘れないでね。絶対よ☆
端末の操作は分かるかしら?
あなたの世界のスマートフォンを模して作ったんだもの、きっと分かるわよね。
スマートな魔法の放送端末。略してスマホよ♡
大事に使ってね♡
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これが、後に俺の運命を大きく左右することになる【
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