破魔の力

天解 靖(あまかい やす)

ニュートン・リング編

第01話(インパクト・ゼロ―大戦末期の断末魔―)

「ヨハン、ガトリングの回転数をマックスにしろ」


「パウロ、これ以上は超加熱で停止しちゃうよ」


「ヨハン、ガトリングは対空の破魔道具じゃねえ、遠くを見ろ。

 あれをこいつで打ち落とせると思ってるのか!」


「げげっ!もうどうなっても知らないぞ。

 スペックオーバー、ポチッとな」


ガトリングから雨あられのように薬莢が排出された。


「熱っ、パウロこっちに薬莢を向けないでよ。

 それにガトリングのモーターから火吹き始めてる!もうだめだ」


「ペテロ、ニュートン・リングだ。

 そいつを試すしかないぞ!」


「パウロ、僕は反対だ」


「ペテロ、何を恐れてる、今使わんでいつ使うんだ」


「ヨハン」


「何? ペテロ」


「君はどう思う」


ヨハンのクロノグラスは壊れて行く幾通りの世界を映していた。


ヨハンはこわばりながらこたえた。

そしてペテロを抱きしめた。


「私は……二人が好きだ。

 使おう、ただし私たちは先に退く。

 ペテロ一緒に逃げてくれるよね」


ペテロはパウロをちらっと見て、うなずいた。


「パウロ、メリケンとニュートン・リングだよ」


パウロはガトリングを投げ捨てヨハンから受け取ったメリケンサックをはめ、拳を打ち鳴らした。


ペテロがシールドを展開し三人を包んだ。

「あれだけの数だ、長くはもたないぞ」


パウロは頷きニュートン・リングに霊力を一気に流し込んだ。その時、彼の手の甲が十字に光っていた。


ジンバルがひとつ、ふたつと回転し第三ジンバルがゆっくりと回転し始めた。


「パウロ急げ」ペテロの声は遠かった。


パウロは悪魔とその類の者たちを見上げて笑った。

「お前たちを恐れる理がどこにある。

 我が命にこたえよ、極大射程グラビティ・オン!」


パウロの霊力によって放たれたニュートン・リングは悪魔とその類を蹴散らしながら高速に回転し上昇、強力な霊力によって具現化した第四・第五のジンバルを形成した。


ペテロはヨハンの肩をつかみながら言った。

「ヨハン見届けよう!」


ペテロとパウロは叫んだ。

「第六ジンバル!」


その刹那、轟音が闇へと変わった。

崩壊してゆくジンバルもろとも悪魔とその類を中心へと吸い込んでいった。


「時限ブラックホールだ!」

「勝った!」


ヨハンは首を横に振った。

ヨハンはパウロに叫んだ。

「ごめん、弟よ!」


パウロはヨハンにうなずき、二人は笑みを浮かべた。

ヨハンの目には涙がにじんでいた。

少しだけヨハンはうつむいた。


「何をするヨハン!」


ヨハンの拘束具が展開されペテロの自由を奪った。


「兄さん一緒に逃げてくれるって言ったよね?

 この霊脈は二人には細すぎるから片足は許して」


バシュっという音とともに二人は消えた。

ヨハンのクロノグラスはこの戦いの結末を既に映していた。


パウロとペテロの片足だけが残された。

パウロは十字に光る自分の両手をしばらく見ていた。


拳を強く握りしめたパウロは地面を力強く蹴り時限ブラックホールへ飛び込んだ。

両腕を広げたパウロの目は見開いたままだった。


「主よ我を導き、この命に代えて子らを救いそして……」



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