第14話 発覚の舞台裏
初めて入る寝室にちょっと落ち着かない感じになりながら、二人でベッドに座る。
「ね、見ちゃたっていってたけど、どんな風に?」
「ん?聞きたい? まあそうよね。もう、大変だったんだから」
笑いながら次のように語ってくれた。
俺との約束をキャンセルされて、奈緒は予定よりも早くに帰宅。が、家には誰もが居ない。買い物にでも出かけたのかな、と思いながら階段を上がって行くと、自分の部屋から女性の「あの声」がする。
ああ、新一さんが映像作品をお楽しみなのかな、と思っていたら急に静かになった。気がつかれないうちに退散と思ってそおっと後ろ向きにゆっくり階段を降りる。が、半分くらいのところで突然寝室のドアが開いた。
「あー、喉乾いちゃったなー。水、水」
パンツ姿の新一さんが現れる。勢いよく階段を降りようとしてその階下にいる人に気がつき、心底ビックリして立ち止まる。
「あ、ごめんなさい。邪魔するつもりじゃ…」
とこちらが言うのと同時に、部屋の方からも
「しんちゃん、わたしも水お願い。ねえ、しんちゃん、聞こえてるの?」
と言う声が聞こえてきた。え、この声はもしかしてまさか。
返事がないことにしびれを切らした声の主も階段の方へ出てきた。
「しんちゃん、何して、あ!」
と同じく固まった。彼女は全裸。このお姿ではどうにも言い訳できず、そのまま素直に真実を語ったとのこと。
「でも、ビックリだよね」
「んー、実は俺はもしかしたらあるかもしれないって思ってたけど」
「うそー」
「いや、ホントに。だって、菜穂子は議論したり意見を戦わせたりするのはあまり得意じゃ無い。それよりはむしろ、ひたすら話し続ける人の側にいるのが好き」
「なるほどね。私はそういうの耐えられないのよね。聞いているうちにおかしいと思った事はすぐにそう言っちゃう。それが、相手には挑まれている風に感じられるみたい。それが新一さんには負担だったのよね」
「多分ね。だから、新一さんと菜穂子のペアは意外とありなのかもと思ってたんだよ」
「そうなのね。でもさ、気づいていた?」
「ん、何を」
「慎司さんと、新一さんってどちらも『しんちゃん』なのね(笑)」
「うん、さっき思ったよ。あの最中に別の相手を自分の旦那と同じ呼び方で呼ぶのかよって」
そう、最近は「パパ」と呼ばれることがほとんどだが、子どもが生まれるまではそう呼ばれていた。
「まあでも、慎司さんも似たようなものよね」
「何が?」
「『なお』と『なほ』が曖昧なことがある」
ん、バレてたか。それには笑顔で応える。
「それにしても3ヶ月まえからか〜」
「ね、びっくりしちゃった。意外とわからないものね」
「さっきさ、『そちらと同じくらいの頃から』って言ってたけど、あの時点では、奈緒いつくらいから彼らがそうだったかってわかってなかったよね?」
「へへ、ばれた?だって、慎司さん本当のこと言っちゃいそうだったから」
平然とそう答える。小さなことに一喜一憂したり感情的な反応をすることもあるが、根幹はとても腹の座った人なのだ。納得してから自分の行動を起こすのと相まって、それがこの人の信頼度を高めてる。
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