レベルアップ依存症おじさん

俺と魚のミルフィーユ

第1話 ー 異世界転生部に配属


35歳フジタカさんサラリーマンのおじさん。


本日付けで彼は異世界転生部に配属となりました。


目を覚ますと、そこはど田舎の村。


見渡す限り畑と山と草。文明レベル、縄文。


こりゃ終わったわ。


俺は開幕から絶望した。


父母が木製のクワで畑を耕しているのを見て、思った。


縄文は稲作してないから弥生くらいの文明だろうか?


そして、俺がこのような文明レベルの低い世界で生きていけるのだろうかと悲観する。


アニメもゲームもない、娯楽なんて無いも等しいだろう。


日々生きていることが幸せなんて、思い始めるのだろうか?


病になれば病院なんてないだろうから死ぬだろう。


あぁ、最悪だ……なんてこった。



なんだかんだ順調に、ド田舎の村で生まれ育った。


俺は歩けるようになり、村を見回り始める。


そして、5歳の頃に1匹の蟻を殺した歳にレベルアップしました。


『テレレンッ!!レベルアップしました!!』


《0Lv → 1Lv》


「え?何今の……レベルアップ??」


俺はその瞬間、世界のルールを理解した。


「殺す=成長」


ああ、なんて分かりやすい。なんてシンプル。


日本社会もこうだったらいいのに、と思った。


歩けるようになったのが1歳。


それから4年間も近所の田舎道を歩いていれば、蟻やら虫やらを気付かないうちに踏み潰しているものである。


それの積み重ねは計り知れず、レベルが1つアップした。


たかが虫、されど虫、殺した際に経験値が発生する事に気が付いた時の衝撃は計り知れない。


いや、まずステータスと言う物が存在する事すら知らなかったのだから、驚きは二重であった。


まさかのファンタジー。


しかもゲームチックなシステムが導入されている世界に生まれ変わろうとは、夢にも思わなかったおじさんである。


『それからは”狂った”ように虫を殺す日々。』


蟻、カナブン、バッタ、何でもだ。


最初は嫌悪感があった。だが、慣れるのに三日も要らなかった。


だって、殺せば成長できるのだ。


何かを殺せばレベルアップ出来る事がわかった為、将来の為に強靭な肉体作りを目指してトレーニングも開始した。


そうして2年が経過し、7歳の頃。


ようやくレベルアップした。


《1Lv → 2Lv》


長かった、まさかこんなに掛かるなんて。


たかが虫、まぁたかが虫であった。


次殺すのはもっとデカくて経験値を持ってそうな生き物だ。



はい、7歳です。


多少は身体も大きくなって行動範囲が広くなりました。


ステータス表示します。


名前 フジタカ(藤高)

年齢 7歳(中身35歳)

種族 人間

職業 自称・異世界サラリーマン

レベル 2

HP 45(※虫に刺されてもギリ生存)

MP 12(※魔法? 何それ)

筋力 20(※ウサギを殴り倒せる)

敏捷 18(※踏み潰す速度は神速)

知力 600(※会議で資料を作れる程度)

精神 560(※常識が崩れても笑える)

運 5(※転生先のガチャはハズレ)


スキル :

【虫踏み】 小型生物を確実に踏み潰す。成功時に微量経験値。


【経験値嗅覚】 「これ殺したら上がるな」という直感が働く。


【サラリーマン根性】 どんな苦行でも“残業”だと思えば続けられる。


【数値確認】 ステータスを見てニヤける。実際の強さは微妙。


【自己正当化】 罪悪感をロジカルに処理するスキル。超安定。


まぁこんな感じのステータスとなっている。


やはりゲーム的にはHPと筋力と俊敏を上げていきたいところ。


そうすればより殺しやすくなるだろうことは明白だ。



「よし、決めた。」


虫だと効率が悪すぎる。


よりデカくて経験値効率が良い生物を”殺したい”。


俺は手に先端を尖らせた木の棒を持って、1人森に入る。


でも俺には、レベルアップの法則がある。


理屈じゃない。行動こそ力だ。


草むらが揺れた。ウサギだ。


一瞬で足が動いた。棒を振り下ろす。


微塵も掠らずに木の棒は地面を突いた。


「くっ!!」


俺は歯を食い縛り、逃したレベルアップのチャンスに涙する。


「まだある、まだチャンスはあるっ」


レベルアップだけを求めて森へと入って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る