第4話 再戦と絶望
荒れ地の砂塵が視界を覆い、逃げ延びた一行は疲労の限界に近づいていた。
リナはガランの背中。
「お父さん……まだ、遠い?」リナは震える手で貝殻の欠片を握る。
ガランは重い肩で答えた。
「もう少しだ、リナ。勇者様を信じろ」
生き残った村人たちは互いに支え合いながら進む。
勇者の体は呪いで崩れ続けるが、彼は先頭を切り、
「あの谷を目指せ。隠れられる」
と導いた。
夜が落ちる中、影が忍び寄った。
魔剣士が再び現れる。
銀髪は乱れ、脇腹の傷は癒えていない。
優しい微笑は消え、その目は冷たく輝いていた。
「勇者様、逃げても無駄です」
魔剣「ソウルイーター」から放たれた黒い炎が荒れ地を焦がした。
リナは恐怖で叫ぶ。
「お父さん、来ちゃった……!」
ガランは娘を背に庇い、魔獣の骨の槍を構えた。
「みんな、戦え!」
村人たちは即席の連携で応戦した。
子供たちが砂を投げ、女たちが網で絡める。
ガランが槍で突き刺そうとし、老人たちは残った呪文で魔剣士の動きを封じた。
リナは貝殻の欠片を握りしめ、祈るように呟いた。
「守って……みんなを……」
魔剣士はよろめき、ついに膝をついた。
黒い血が砂に染みる。
彼女は弱々しく笑った。
「愚かな……希望だ」
「今だ!」
勇者は聖剣を握ろうとする。
だが、呪いの進行が彼の指を奪っていた。
聖剣は砂に落ちた。
「くそっ……」
ガランは叫ぶ。
「勇者様!」
リナが駆け寄る。
「私がやる!代わりに!」
小さな手で聖剣を掴むが、聖なる刃は重く、持ち上がらない。
魔剣士は嘲笑った。
「子供の遊びね……」
その時、馬蹄の音が響いた。
騎士団の旗が地平線に現れる。
村人たちは希望に目を輝かせた。
「た、助かった……!」
ガランも息を飲み、リナを抱き寄せる。
「これで……助かる」
希望は粉砕された。
騎士団は勇者の裏切りを許さず、村人たちをも叛逆の共犯と見なした。
隊長が冷たく命令を下す。
「叛徒を殲滅せよ」
騎士たちは容赦なく剣を振り下ろし、虐殺が始まる。
ガランはリナを馬車の陰に押し込み、抵抗した。
「リナ、隠れろ!」
リナは小箱を抱え、涙で視界がぼやける。
「お父さん……!」
勇者は這いずりながら叫んだ。
「やめろ!俺を殺せ、村は関係ない!」
騎士団の剣は止まらない。
最後の資産はブーツに踏み荒らされた。
貝殻は粉々に砕け、地図は引き裂かれ、風に舞った。
砂嵐が黒い壁のように迫る。
騎士団の隊長が叫んだ。
「魔剣士が残りを片付けるだろう。撤退だ!」
馬蹄の音が遠ざかり、荒れ地は静寂に包まれた。
リナとガランは奇跡的に生き延びる。
勇者は崩れゆく体で二人を支え、呟いた。
「まだ……終わっていない。洞窟へ……」
夢は失われた。
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