第1部 プロローグ 「女神に願う」編
第1話 女神に願った「剣と魔法の世界」が文字通りすぎた
俺は猛スピードで走ってきたトラックにはねられた。
目覚めると、真っ白でピカピカした空間にいた。目の前に女神さまが降臨した。
「そなたは、どんな世界に転生したいのだ?」女神さまは定番の質問をした。
「剣と魔法が支配する世界に」俺は戸惑う事なく答えた。
「そなたの願い叶えてしんぜよう。剣と魔法が支配する世界に転生じゃ」女神は両手を天に向けて掲げた。
「女神のチート、おおぐま座流星拳の奥義も与えよう」
俺は異世界へ勢いよく飛ばされた。
剣と魔法が支配する世界に来たんだ。剣士になろうと俺は決めていた。まずは冒険者ギルドへ向かう。
俺は古い木製のドアを押し開けた。そこに居るのは筋骨隆々とした男たち。
「お前。そんなヒョロっとした体で拳士になるつもりか?」と一番大きな躯体の男が絡んできた。
「ちげえよ。俺は剣士になりたいんだ」と俺。
「は?何言ってだこいつ?」と男は笑う。
「なんだ、なんだ、よそ者か」と男達が寄ってきた。
最初の男が逞しい左腕を伸ばすと俺の胸を掴んだ。
「ちょっと世間を教えてやるぜ」と右腕を振り上げた。
「あたたたたたっ」
俺は思わず女神からもらったチート技、おおぐま座流星拳を発動した。
どしーん
と音を立てて大男は床に倒れた。男たちは息を飲んだ。
これから俺の成り上がりがスタートした。
それから1年、女神から授かったチート能力で次々と敵を屈服させた。
不思議な事に、この1年間、剣も魔法も見ることがなかった。敵も味方も、拳で闘うのみ。
「けっ、けっ、けっ、勇者よ。よくぞ四天王の我が城にたどり着いた」と魔族が威嚇する。
「問答無用。あたたたたたっ」
俺は、必殺奥義のおおぐま座流星拳で魔族を葬り去った。
勇者が現れたという噂は王国中に広がり、すぐに王城から使者が来た。
「国王様が勇者にお会いしたいと申しております」
俺は迎えの馬車に乗って王城へ向う。
王城のきらびやかな謁見の間で、大理石の道を進む。
道の両側には筋骨隆々の「拳士」が肩をいからせて並んでいる。俺を値踏みするように鋭い眼光で睨み付ける。
広間の最奥の一段高い所で、白髪で髭を蓄えた大柄の男が出迎える。
「これは国王陛下、ご招待を頂き参りました」と俺は膝まずく。
男は気まずそうに咳をした。
「ゴホン。私は宰相である。あちらにおわすのが国王陛下であるぞ」
玉座には3mはありそうな大剣が座っていた。黒々とした光沢を放ち重厚である。
「我こそは、国王である大剣エクスカリバーであるぞ。控えよ」重々しい声。
この大剣、口がきけるのかよ……
国王の横の席には、黒いモヤモヤとした不定形な、闇のような渦が巻いていた。
「国王の横におられる、あの物体は……。失礼ですが、何でございますか?」俺は小さな声で宰相に聞いた。
「物体とは失礼な。あの御方は女王陛下である『禁呪の魔法』様にあらせられます」宰相は慌てて訂正する。
確かに俺は「剣と魔法が支配する世界」を望んだけど、文字どおり過ぎないか?
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