022 : 秋の山の運動会
【今回のお題】
四角い布/冷たい音/短い坂道
【完成した作品の味わい】
民話的な日常
★ ★ ★
私の住む町内では、町内会役員は持ち回りになっていて、今年は私の家が体育委員にあたっている。
そして、今日は四角い布に「狗峰町東町内会」と、何度も何度も書いている。
十月に開催される、運動会に参加するためのゼッケンづくり。
布にマジックで、しっかりと、力強く書く。
今は九月の半ば。まだまだ暑い。
エアコンの効いた部屋で、麦茶を飲みながら作業する。
氷がグラスに当たる冷たい音が、カラン、と静かな午後に響く。
ゼッケンは全部で三十枚。
町内会の子どもからお年寄りまで、みんなで出場する。
私たち狗峰町東町内会は、毎年この運動会に力を入れている。
◇ ◇ ◇
運動会当日。
町内会の面々は、狗峰山の中腹に集合した。
そして、短い坂道を駆け下りて勢いをつけ、一気にふわっと空へと飛び立つ。
空中競技が中心の、私たち――”天狗”の運動会が始まる。
最初の競技は「飛行リレー」。
山頂の一本杉まで飛んで折り返してきて、次の人にバトンを渡す。
風の流れを読む力と、折り返しの時の姿勢制御が試される。
次は「風船運び」。
うちわで風を起こし、空中の風船を運ぶ。うちわの使い方に熟練が必要な、お年寄りに人気の競技だ。
そして「落下玉入れ」。
上空から地上のバスケットを狙って球を落とす競技。風に流されやすく、命中率が勝敗を分ける。
子どもたちがキャッキャといいながら、何度も球を運んでは落としている。
空は澄み渡り、秋の風がそよりと心地いい。
天狗たちの歓声が、山々にこだまする。
昼休み。再び山の中腹に戻ってくる。
町内会の面々に握り飯を配る。梅干し、昆布、おかか、ツナマヨ。
みんなで木陰に座り、のどかな昼食を楽しむ。
今年も、楽しい秋の運動会だ。
午後からの競技も頑張ろう。
その頃、地上では――
「狗峰山付近では突風が発生しています。登山客は十分にご注意下さい」
ラジオから、注意喚起のアナウンスが流れる。
私たちの運動会は、毎年この時期に行われる。
そしてこの時期には、狗峰山に突風が吹き荒れる。
私たちが楽しんだ分だけ、落ち葉が舞い散り、冬を呼ぶ。
こうして山の季節は、巡っていくのだ。
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