第十一話:マ神降臨! 雪山最終決戦!
突如として現れる実況席! 赤い絨毯! 金の椅子! 眩しい照明!
花火は打ち上がり、観客席は
「さぁ~! 始まりました、魔王様主催SASUQE魔王城大会!!」
立っていたのは――またあいつ、
ボディビル大会ネタが擦られるのを回避したのに、あんたは擦られるの納得いかないわ。
「でも……ハミーの司会も板について来たわねぇ」
あたしは思わず関心する。
「今回の第一ステージには、総勢100名の参加者が集まっております!
さぁ各選手、ゼッケンをお受け取りくださーい!」
あまりのテンションに、思わずゼッケンを受け取る。
【99番のゼッケンを入手しました】
「ちゃんと100人居るのね……」(絶対準備してあったやつ)
「僕が100番さ、よろしくね」
魔王が爽やかに笑いながら100番ゼッケンを掲げてくる。
まるで大会に来た一般青年みたいだが、れっきとしたラスボスだ。
「ではスタート! SASUQE魔王城大会、第一ステージ!!
ゼッケン1番は! 筋肉聖女のペット枠! リュガルド選手だ!」
「俺が一番で一番最初にゴールしてやるぞ!」
「なんでアンタも参加してるのよ!」
リュガルドはドラゴン姿に変身し、ド派手に空へ舞い上がった。
「リュガルド選手、飛行したため失格です!
ちなみに! 風魔法での飛行も失格だから注意だ!」
実況の声が無慈悲に響く。リュガルド、スタートと同時に失格。
「そんな〜!」
――魔王城で筋トレに励んでいた人たちが続々挑戦し、中盤。
「うーん、まだ病み上がりなのに昨日
最初の水場にドボンするゼッケン55番デルマ。
浮かんでこないデルマを、スタッフが優しく救助していくぅ!
――そして気がつけば、あたしの番。
「よッしゃぁ! 気合い入れて行くわよ!」
身体強化はなし! 第一ステージなんて、素の筋肉で十分よッ!
あたしはバッと服を脱ぎ捨て、黄金のマイクロビキニになる。
……最近思うんだけど、この格好で人前に出るのに慣れちゃってるのやばいわよね。
なんて思いながら、余裕のクリア。
「最後はこの僕! あぁ、SASUQEが出来るなんて、夢のようだ……」
あたし思うんだけど、あいつSASUQEやりたかっただけなのでは?
もちろん魔王も余裕のクリア。自分で設計したコースなんだから当然よね。
◆
第二ステージは、魔王城で鍛えた猛者たちが次々に失格。
「うわ、落ちた」「あ、また……」「あんなんクリアできなくね?」
難易度が異様に高い。トラップがえげつない。針とか出てくる。
救護班の魔法使いも大忙しだ。死ななきゃ良いってもんじゃないでしょ。
98番までクリアする者は現れず。
「よし……あたしの番ねッ!
アスレチック・ニンジャ・レボリューション!」←今考えたスキル発動のセリフ
ボッ!と隆起する筋肉。
素の筋肉が増えた影響か、変身後の筋肉も増えているみたい。
「――余裕! ゆかりん、まさかの余裕ゴールだ!
ボタンを押した後で、エアーポールダンスを踊る余裕を見せているぞォ!」
「さすがだね、ゆかりん。僕も負けてられないな」
魔王は服を脱ぎ捨てる――やっぱり細マッチョだ!
観客席から黄色い声援が上がる!
「魔ッスル王様!」「マーッチョ!マーッチョ!」「バリバリ!」
やっぱり魔王も余裕でクリア。
「あぁ……こんなに嬉しいことはない……!」
「ゴールした魔王様が号泣しているぞォ!」
なんなんだろう、このテンション。
あっ、あれだ……学園祭!?
◆
そして、
雪山の山頂にそびえ立つ巨大鉄骨タワーが照明に照らされて浮かび上がっている。
吹雪が吹きすさぶ。まさしく決戦の舞台。
「両者同時にスタートし、先にてっぺんにたどり着いた方が勝者です!
「ふん……あたしが勝つッ!」
「あぁ……これで終わりなんて……」
「3、2、1――スタートゥ!」
あたしと魔王、二人が並んで駆け上がる。
鉄骨のきしむ音。吹雪の中、二人の影が重なり――
そして
「……同着!?!?!?」
デュークが絶叫した。
「えー、しばらくお待ち下さい、ビデオ判定を行っています。
はい、はい、えっ、わっ……かりました……やはり同着です!」
ザワつく観客席。
魔王が髪を直しながら言う。
「ここで! この頂上で! 相撲勝負です!」
「アンタなに言ってるの!? こんな極寒の場所で? しかもここ頂上よ!?落ちたら死ぬわよ!?」←マイクロビキニを着てる人に言われたくない
「あぁ……10分後、魔王城は自爆する。木っ端みじんさ!
止めるには――僕を倒すしかない」
「なんで自爆装置付けたのよ!? なんで押しちゃったのよ!」
魔王は
このままでは本当に10分後には城は吹き飛ぶだろう。
「癪だけど、やるしかないようねッ!」(とりあえず相撲は打撃技がNGだったよね)
鉄骨タワーの頂上は丸い土俵になっている。
どうやら最初から仕組まれていたらしい。
「あぁ……人生最高の取組にしよう!」
――身体強化【
「さぁいきなり始まります、魔王場所千秋楽、結びの一番にして優勝決定戦!
解説は引き続きMCハミーが務めさせていただきます!」
土俵の上で睨み合う二人、観客席からはその気迫に歓声が上がる!
「おぉぉぉ!」
「行司はこの人! 一話で粉微塵にされたスライム氏だー!」
「ぷるんぷるん!」(はっきよい!)
時間いっぱい、お互いの呼吸を合わせ見事な立会い!
がっぷり四つからの、技の応酬!
筋肉のぶつかり合いが嵐を呼ぶ!
――お互い一歩も引かず!
しかし、魔王もただのナルシスト筋肉バカマッシュじゃない。
筋肉エネルギーは互角な上、実戦経験はあいつの方が上。
ていうかね、あたし女子なのよ? 相撲なんてやったことないに決まってるでしょ!?
決着がつかないまま、残り時間が迫る。
(やば……ほんとに終わる……!)
そのときだった。
『――聞こえるか、ゆかりん』
「あ、神?」
『ゆかりんの心に直接話しかけておる』
「うん、そうだと思った」
『えっ! もうちょっと驚いてほしいな』
「いいから! こんなときになんの用なのよ!」
『あっ、はいすみません。
コホン……筋肉聖女ゆかりんよ……内的マ神と同調するのだ……!』
「いやアンタが神でしょ!」
『わしは筋トレの神……そなたが内包するのは……
「あたしの中に……筋肉の神なんて居ないわよ! そもそもなんなのよマ神って!」
『取り乱すのも無理はない……しかし、そなたなら――できる!』
「いや取り乱してないってば! 正気じゃないのはアンタと魔王の方よ!」
とは言っても――時間がない。
あたしは覚悟を決め、深く息を吸い込んだ。
――すぅっ!
瞬間、体の奥から熱が溢れ出す。
力が漲る、圧倒的快感……!
肌が淡く光り、雪山を照らす。
筋肉のラインが神々しく浮かび上がった。
「ふッ……あたしは元々ね、神って呼ばれてたのよ――月末処理の神ってねッ!」
【身体強化のスキルレベルが上がりました】
【身体強化【神】を習得しました】
「あ、あれが姐御!? ……もはや
――
遠くで、リュガルドが歓声が聞こえる。
「この力があれば……いけるわッ!」
均衡を保っていた態勢から筋肉一閃!
――土俵際まで
「……ッぐ……!!」
魔王は押し出されまいと必死に海老反りで堪える!
「これで終わりよッ!」
――ビターン!
あたしは吊り上げた魔王を土俵外に叩きつける!
すると魔王は鉄骨にバキバキとめりこんで行き――山頂に激突!
「ぷるるんぷるん!」(勝負あった!)
「吊り出し〜 吊り出しで、ゆかりんの勝ち〜」
朝日が昇り、雪山を照らし出す。
より輝きを増した黄金のマイクロビキニが世界を照らす!
「アンタの作ったSASUQE、なかなか楽しかった。
次は……平和的に開催しようじゃない!」
「ゆ、ゆかりん……またSASUQEやってくれるのです……?」
「そんなことより自爆装置は……?」
「えぇ……勿論解除しました」
あたしが勝った。
――魔王は倒れた!
「わーっ!」「筋肉女神!」「マッスルゴッデス様!」「いわゆるゴッド!」
みんなの歓声が聞こえる。
「ふぅ、今回はやばかったわね。
でも……お祭りに参加するのも旅行の楽しみよね♪♪」
リュガルドに乗ってアリシアとデルマが駆けつける。
「あ”ね”ご〜!」
リュガルドは目から水魔法かとツッコミたくなるくらい泣いてる。
「ゆかりん! わたくしは無事ですのよ!」
アリシアは無事解放されたみたいね。
「あちこち痛ぇけど……迎えに来てやったぜ」
いやほんと、さっき沈んで浮いてこなかったけど平気なの!?
みんなの笑顔が朝日にきらめいている。
あたしの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます