ゆかりん異世界日記 其の一:身体強化【胸】

思いつきでやったら、できちゃった身体強化【脚】ってやつ。

あたし思ったの……これ……他の部位でもできるのでは?


そして――身体強化【胸】ができれば、巨乳になれるのでは!?

い、いや、別に気にしてたとかじゃないんだけど、大きい方が似合う服とかあるじゃない?


……という、軽いノリでだからね。


手を胸の上に置いて、集中。


「身体強化【胸】発動ッ!

 バストアップ・イグニッション!」


ボンッ!


視界が一瞬、上に跳ねた。

……いや、胸が上に跳ねた。


「う、うわぁぁぁ!? え、なにこれ、でかっ!? ていうか硬っ!?」


服のボタンが弾け飛び、胸の部分だけ異様に膨らんでいる。

でも、触ってみたら――カッチカチ。

柔らかさゼロ。

どころか、叩いたら『ゴンッ』て音がした。


「……ちょ、ちょっと待って、これ……筋肉じゃん……」(それはそう)


鏡を見たら、胸筋がめりめり盛り上がっていた。

いや、筋肉が美しいとかそういう問題じゃない。

こんなの、防御系戦闘フォームの一部でしかない。


「……やっぱダメかぁ……」

力を抜くと、胸はしゅんと元に戻った。

あー、恥ずかしい。誰かに見られてたら死ぬ。


そのとき、机の上のスマホがピコンと鳴った。

神からのメッセージ。


【神:筋肉は鍛えるもの。脂肪は愛でるもの。混ぜるな危険】


【ゆかりん:……見てたの?】


【神:筋肉に関することは、全てお見通し】


顔を真っ赤にしてため息をつく。

でも――ちょっと笑ってしまった。

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