ナニシン
@q10
第1話
...
いつもは外で工事をしているのに
今日はしていない
…
部屋で仰向けになり、天井を見ている青年
フラッシュ-
女性の声「それでも私は大好きです」
...
嘘つけよ
ひどく、つらい言葉だった
***
走っている橘。
道は石畳、街灯はまばら。
大通りから少し外れた道。人気はない。
橘「え????」
橘「え???????」
橘「はぁ、はぁ」
橘「う」
彼は転ぶ。
橘「った」
橘「はぁ...はぁ...」
男「ほら」
橘「はぁ...はぁ...」
顔を上げる橘
橘「...はぁ...はぁ...」
男は街灯で照らされている。顔が見えない。
彼は手を差し伸べている
男を見ている橘
橘「え?」
男「...」
「素質があるな」
橘「...?」
-一日前-
都会の中の道。中規模なビルの前で、
青年、
橘は素早く顔を動かす。
歩く人の顔をチラッと見てはすぐ伏せる。
通行人「??」
通行人は怪訝な顔をして橘を二度見。
橘「ふぅ...」
橘は意を決してビルに入る。
橘は下を向いて踊るように進み、人とぶつかりそうになりながらエレベーター前へ向かう。
***
ビル6階。
面接用の小部屋がいくつも並んでいるフロア。
橘は何とか受付を済ませた後、部屋の奥へと通され、小部屋に案内される。
小部屋の中には、面接用の机と向かい合っている椅子が2つあり、彼は椅子に座る
橘「...」
前を見るでも下を見るでもなく目線が固定されている。
トントントン-
橘「はい」
女性面接官「失礼します」
黒のパンツ、黒の革靴、白シャツにカーディガンを羽織っているスタイルの良い女性が入ってくる。
橘「こんにちは」
橘は机に会釈。
女性面接官は席に座り-
女性「本日は、よろしくお願いします」
橘「あ、はい。宜しくお願いします」
絶妙に顔は見ない橘。
女性「それでは、履歴書と職務経歴書を頂戴いたします。」
橘「はい」
紙を受け取り-
女性「それでは、自己紹介とご経歴の紹介をお願い致します。」
橘「えぇー...橘聡...と申します。27歳...です。経歴は-」
角度的に女性の胸に視線を落として紹介をする橘。そこから目線は動かない。
橘を見ている面接官。
女性面接官「...」
少し動揺している。目線が上下に動いている。
女性面接官「...」
女性面接官「あ...はい...」
橘「はい」
橘の目線が胸から動かないのが気になる面接官。
女性面接官「え...えぇー...それでは...次に...」
胸をガン見の橘。
女性面接官「...」
彼女は胸をカーディガンで覆う。
橘「...」
目が少し動く橘。
橘「...」
彼は女性をチラ見してすぐ視線を戻す。
女性面接官「...」
橘「...」
ん?
***
橘はチープな一人暮らしのマンションで暮らしている。県営住宅で家賃は安い。彼は仕事を辞めたばかりで貯金はある。かつては一流企業に勤めていた。
翌日の土曜の朝。
彼は立っていた。
橘「...」
自分のマンションの駐車場に。
上はシャツ、下はスウェット。手提げの簡素な鞄を持っている。色はシック。
橘「...」
夏のある日。外に出れない程ではない気候。
橘「胸見てないんだけど...」
橘「...」
橘「...」
周りをキョロキョロ
さっと首を前に戻す。
橘「...ふぅ」
彼は自分の車に乗り込む。
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