第5話 応援できない
「私はもう家族じゃないってこと?」
真希は心外だとでも言いたげな顔で俺に迫ってきた。
「だって、そうだろ? もう俺達家族のサポートなんて何にもいらないんんじゃないか」
「応援してくれることが、いちばんのサポートじゃない」
「俺は真希がやりたいって言うのなら勝手にすればいいとしか言えないな」
真希を視界に入れたくなくて、俺は真希に背を向ける。階段を駆け上がって自分の部屋に入ると、財布とスマホが入ったリュックを肩にかける。
階段を下りようとしたら、真希が途中まで上がって来ていた。
「どうしてそんなに怒るの?」
「怒るに決まってるだろう。今までの俺とお前の関係は何だったんだ。こんなにあっけなく捨ててしまえるものだったのか?」
「私は高良を捨てただなんて思ってない。いちばん応援して欲しいのは高良だったのに」
「応援はできないな」
「どうして?」
俺はむっつりと黙り込む。どんなに朝が早くても、夜が遅くなっても母屋で顔を洗い、母屋で風呂に入って欲しいのに、たぶん真希はもうそれすらしないに違いない。時間を気兼ねして、きっと離れの洗面所と風呂を使うだろう。
俺の日常から真希がぷっつりいなくなってしまうことが腹立たしいほど悲しいのだと、言葉を尽くして言えばいいのか。
だけどこんなこと、とてもじゃないけど真希には言えない。
真希は圭祐の家で食事をするのがベストだろう。
俺だって練習のタイミングで食事を取るのが自然だと思うから。
「俺、ちょっと外で頭冷やしてくる」
俺は真希を押しのけた。
「高良!」
真希が声を大にした。だけど俺は振り向かない。階段を駆け下りて玄関へ行く。
「母さん、俺、外でなんか食ってくる。夕飯はいらない」
「どうしたのよ、急に」
「なんでもない」
玄関で靴を履き、自転車置き場へ行く。駅前のマックにでも行こうかと思ったからだ。
「高良、待ってよ」
真希が追ってきている気配がしたが無視をした。
自転車に乗り、走らせる。
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