第39話 発狂するガルド
「俺だ。フランツ・エアハルトが来たぞ」
ガルドの目が大きく見開かれた。
「なに……!?」
ガタン、と椅子を蹴って立ち上がる。
鼓動が激しく打ち鳴らされた。
「ば、馬鹿な……お前はどこにもいなかったはず……!」
慌てて扉を開くと、そこには確かにいた。
かつての同期、そして今は最大の障害となった男、フランツ・エアハルトが――――。
「久しぶりだな、ガルド」
淡々とした口調。
だが、その奥に秘められた決意の炎がガルドにははっきりと見えた。
その背後には、レイナ、リリア、そしてマリーの姿もあった。
「お前……どうやってここまで来た⁉ 王城の警備は完璧だったはずだ! いつでも私を守れるように――――」
「国王を守れるように配置していたんじゃなかったのかその警備兵とやらは……」
「――――くっ……」
どこからどう見ても王に対して敬意を抱いているとは思えない発言。
それに対して嫌悪感を示すレイナ。
だが。ガルドの視線はフランツに釘づけであり、それに気がつくことはなかった。
「ああ。どうやってここまで来たという質問に答える必要があるな――――結論から言えば一直線で来た。門前の衛兵は眠っている。怪我はさせていない、安心しろ」
「貴様あああああああああああっっ!!」
咆哮と共に剣を抜こうとするガルドをレイナが一喝する。
「やめなさい、ガルド! あんたがなにをしたのか、すべてわかっているわ!」
「レイナ姫……やはり貴様はフランツの味方をするのか……!」
ガルドの視線が怒りと憎悪で歪む。
「王の命令でフランツを呼び出した? ふざけるのも大概にしなさい! お父さまは意識不明で命令なんて出せる状態じゃない! それにこの命令書、筆跡も違うし、印も無理やり押した跡があるわ!」
「……だから、なんだというのだ?」
「裏切り者! 国を、民を、王族を裏切っておいて、なおその態度とは反吐が出るわ!」
レイナの瞳に怒りと悲しみの色が浮かぶ。
ガルドはレイナを睨み返すもその視線は揺れていた。
だが、強がるように笑みを浮かべた。
「それがどうした。すべてはこの国の未来のためだ」
「は? そういうのを“私利私欲”って呼ぶのよ。あんたがやってきたことはただの権力欲と歪んだプライドの塊よ!」
言葉を続けようとするレイナを、フランツが制止する。
「もういい、レイナ。言葉でどうにかなるんだったらそもそもこんなことにはなっていない。ここから先は――――俺の戦いだ」
静かな、だが芯のある声だった。
レイナは口を噤み、こくりと頷いた。
「ガルド。俺はお前に聞きたい。なにが……なにがお前をここまで変えた?」
フランツの問いにガルドはしばし黙っていた。
――――やがて口を開く。
「変わってなどいないさ。俺はずっと最初からこうだった」
そして、静かに言葉を紡ぐ。
「俺はこの国がほしい。レイナ姫を手に入れ、この国を治める。そうすれば俺の名は永遠に語り継がれる。最高の人生じゃないか」
「そのために、すべてを捨てたのか……?」
「そうだ。そして……俺の野望を叶えるために貴様は邪魔だった。だから死んでもらう」
淡々と、感情のない声だった。
だが、その言葉に反応したのは少女たちだった。
「最低よ! そんなことのためにフランツさんを殺そうとするなんて許せない!」
「なにが国の未来だ。しょせん私利私欲で権力をほしがっただけじゃないか。その目的を叶えるためにフランツさんを殺す? 腐りきってる」
「こんな人が騎士団長なんて失格です!」
3人の怒りが室内を満たす。
「黙っていれば言いたい放題だなお前ら!」
「言いたい放題やりたい放題なのはお前だ。ガルド」
「――――なに⁉」
「お前はやりすぎた。もう少し謙虚にしていれば穏便に地位も名誉も手に入れていただろうに」
フランツはただ1歩。ゆっくりと前に進み出た。
「――――ガルド。俺はお前を止める」
床がきしむ音が決戦の幕開けを告げた。
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