【全自動(フルオート)】はハズレスキルかと思いきや、寝ている間にレベルアップして世界最強になりました。追放した故郷にはもう帰りません。
☆ほしい
第1話
「ユウジよ、前に出よ」
村長の厳かな声が、広場に響き渡った。
僕は緊張しながら一歩前に出る。今日は村の子供がスキルを授かる、年に一度の「神託の儀」だ。
僕の番がついに来た。
村人たちが固唾を飲んで見守っている。僕の両親も、期待と不安が混じった顔でこちらを見ていた。
大丈夫。きっとすごいスキルがもらえるはずだ。
僕は自分に言い聞かせる。この村では、スキルの優劣が人生の全てを決めるのだから。
村長が僕の頭上に手をかざす。
温かい光が僕の体を包み込んだ。
「おお、光が大きい。これは期待できるぞ」
「さすが村長の孫だ」
村人たちの声が聞こえる。そうだ、僕は村長の孫。期待されるのは当然だった。
やがて光が収まり、僕の目の前に半透明の板、ステータスプレートが現れる。
【名前】ユウジ
【レベル】1
【スキル】全自動
「……全自動?」
村長が怪訝な声を上げた。僕も自分のスキル名を見て首を傾げる。
聞いたことのないスキルだ。一体、どんな効果があるのだろうか。
「村長、ユウジのスキルは一体?」
父さんが心配そうに尋ねる。
村長は難しい顔で腕を組んだ。そして、ゆっくりと口を開いた。
「分からん。このようなスキルは、文献のどこにも記されておらん」
ざわ、と村人たちの間に動揺が走る。
「そんな馬鹿な。何かの間違いでは?」
母さんが信じられないといった様子で言う。
「静まれ。スキルは神が授けるもの。間違いなどありえん」
村長はそう言ったが、その額には汗が浮かんでいた。
「まあ、とにかく何か試してみろ、ユウジ。スキルを使え」
「は、はい」
僕は言われるがまま、心の中で「全自動!」と叫んでみた。
しかし、何も起こらない。
もう一度、今度は声に出して叫んでみる。
「全自動!」
やはり、何も起こらなかった。
広場が気まずい空気に包まれる。
「おいおい、まさかとは思うが」
「何の効果もない、ハズレスキルってやつか」
村人たちの囁き声が、僕の耳に突き刺さる。
「そ、そんなはずは……」
僕は必死にスキルを発動させようと試みる。だが、結果は同じだった。
「……そこまでだ、ユウジ」
村長の冷たい声が僕の動きを止める。
「お前のスキルは、ハズレだ。何の役にも立たん」
その言葉は、まるで死刑宣告のように僕の心に重くのしかかった。
「そ、そんな……」
両親が絶望の声を上げる。
そんな彼らを、村人たちが冷たい目で見下していた。
「やれやれ。村長の孫だからと期待して損したぜ」
「役立たずが一人増えただけか」
「これだから、血筋なんてあてにならねえんだ」
昨日まで優しかった村の人たちが、手のひらを返したように僕を罵る。
「ユウジ……」
幼馴染のサラが、悲しそうな顔で僕の名前を呼んだ。
君だけは、僕を信じてくれるよね?
僕は僅かな望みを込めて彼女を見る。
しかし、サラはふいと目をそらした。そして、僕から距離を取った。
その行動が、何よりも僕の心を抉った。
「決定だ」
村長が、非情な声で宣言する。
「ユウジ。お前をこの村から追放する」
「なっ!?」
「お待ちください、父さん!ユウジはまだ子供です!」
父さんが必死に食い下がる。
「うるさい!ハズレスキル持ちは、この村には不要だ。疫病神を置いておくわけにはいかん」
「そんな……あんまりです!」
母さんが泣き崩れた。
だが、村長の決定は覆らない。それが、この村の掟だった。
僕は、為す術もなく呆然と立ち尽くす。
追放。
その言葉の意味が、うまく理解できなかった。
「さあ、とっとと行け!お前の荷物はまとめておいた!」
村の男たちが僕の腕を掴み、村の出口へと引きずっていく。
「やめてください!」
両親の悲痛な叫びが聞こえた。僕は抵抗することもできず、ただ引きずられていく。
村の門の前に、小さな布袋が一つだけ置かれていた。
中には、数日分の食料と水、そして銅貨が数枚入っているだけだった。
「これを持って、二度とこの村に顔を見せるな」
男はそう言って僕を突き飛ばす。僕は地面に倒れ込んだ。
背後で、固く閉ざされる門の音が聞こえる。
僕はたった一人、村の外に放り出された。
これからどうすればいいのか、全く分からなかった。
行く当てもない。頼れる人もいない。
絶望感に押しつぶされそうになる。
とぼとぼと森の中を歩く。
日は既に傾き始めていた。夜になれば魔物も出るだろう。
レベル1で、スキルもない僕では、一晩も生き延びられないかもしれない。
「……もう、どうでもいいか」
疲れ果てた僕は、大きな木の根元に腰を下ろした。
涙さえ出てこない。
ただ、無性に眠かった。
全てのことから逃げ出したかったのかもしれない。
僕は、そのまま目を閉じた。
意識が、ゆっくりと暗闇に沈んでいく。
次に目を覚ました時、空は完全に明るくなっていた。
どうやら、ぐっすり眠ってしまったらしい。
「……生きてる」
魔物に襲われた形跡もなかった。運が良かったようだ。
僕は体を起こし、伸びをする。
不思議と、気分は少しだけ晴れていた。
追放された事実は変わらないが、くよくよしていても仕方がない。
とりあえず、どこか近くの町か村を探そう。
そう思って立ち上がった時、ふと違和感を覚えた。
なんだろう、この感覚。
体が、昨日よりもずっと軽い。
それに、力がみなぎってくるような感じがする。
僕は試しに、目の前にあったステータスプレートをもう一度呼び出してみた。
【名前】ユウジ
【レベル】20
【スキル】全自動
「……は?」
思わず、間抜けな声が出た。
レベルが、20になっている。
昨日は、確かに1だったはずだ。
何かの見間違いだろうか。
僕は目をこすって、もう一度プレートを見る。
やはり、レベル20と表示されている。
「な、なんで……?」
意味が分からない。
ただ森で一晩寝ていただけだ。
それでレベルが19も上がるなんて、ありえない。
まさか、これが【全自動】のスキル効果なのだろうか。
だとしたら、一体どんな原理なんだ。
僕は混乱した頭で考える。
全自動。つまり、自動で何かをしてくれるということか。
僕が寝ている間に、僕の代わりに何かを。
例えば、レベル上げとか。
「……まさか、な」
そんな都合のいい話があるわけない。
でも、目の前にある結果が、それを肯定していた。
もし、この仮説が正しいのだとしたら。
僕のスキルは、ハズレどころか、とんでもないチートスキルなのではないだろうか。
僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
確かめる必要がある。
もし本当に、寝ているだけでレベルが上がるのなら。
僕の人生は、ここから大きく変わるかもしれない。
追放された悲しみは、いつの間にか消えていた。
代わりに、胸の中に小さな希望の光が灯り始める。
「よし、行こう」
僕は立ち上がった。
まずは、この森を抜けて、一番近くの町を目指すことにした。
これから何が起こるのか、まだ分からない。
でも、少しだけワクワクしている自分がいた。
僕は、力強い一歩を踏み出した。
森の木々の間から差し込む光が、僕の行く先を照らしているようだった。
追放されてよかった、なんて思う日が来るとは。
人生、何が起こるか分からないものだ。
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