一人の女性の視点で語られる、アンティークが秘める歴史を追想していくホラーミステリー作品です。主人公は少しだけ霊感を持つ主婦。ホンモノを知っているために霊感を商売に使うことはなく、もっぱら趣味の中古屋ショップの目利きにばかり使用しています。彼女が見つけ出すのは、少しだけ超常に傾いてしまった品々。時に活用し、時に遠ざけ、決して限界を踏み越えることはありません。今日の彼女は、何に目をつけるのか。ぜひ読んでみてください。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(172文字)
日常に宿る『過去と情念』を静かに記した『オカルト・フィールドワーク手記』主人公・マリコはささやかな霊感を持つ普通の主婦です。中古品に宿る「何か」に思いを馳せ、物語は静かに、さながら珈琲の香りを楽しむような落ち着きで進行します。にゃんこな先生がおじゃましてきそうな、世界観の魅力。中古品の売買を『契約』と表現するなど、ゾクりとする読後感。物の情念に耳を澄ませて謎を追う――そんな読書体験をくれる作品です。