第2話 配信始めたけど視聴者ゼロなんですけど!?

「冒険者のはじまりの村:オルドラン」──それが、俺が転生して最初に降り立った場所だった。


 名前こそ勇ましいが、実態は転生者の吹き溜まりみたいなもので、毎日どこかで誰かが「チートきたわ」とか「女神クソガチャ」とか叫んでいる。


(まぁ、女神クソガチャて言いたくなる気持ちはわかる)


 酒場は朝から夜までにぎわっていて、自己紹介とパーティ勧誘と、クエストの愚痴で溢れていた。


 村の周辺はすでに狩りつくされている。ゴブリンもオオカミも滅多に出ない。

 新人冒険者が今受けられる仕事は、せいぜい草むしりで銅貨5枚(=パンの耳)。


 なお、草むしり中に毒虫に噛まれて死ぬ奴も、普通にいる。


「ようやくレベル3だ……」


 スライムを12体倒して、やっとこの程度。

 チートどころか、普通以下だ。


 スキルは地味、収入は雀の涙、クエストは草むしり。

 これが異世界ライフとか、聞いてない。


 ……マジで、日本の実家に帰りてえ。


 正直、これなら日本でコンビニバイトしてた方がまだマシだったかもしれない。


***


 報酬をもらいにギルドに行く。

 その壁際、誰も見ていない掲示板の隅っこ。

 そこに、やけにキラキラしたポスターが貼られていた。

 

 【冒険×配信で夢の収益ライフ!】

 ギルドの壁に貼られた一枚のポスターは、場違いなほど派手だった。

 背景はきらきら光る魔法陣、中央には“RankLive”と書かれた金文字。

 その横には、にこやかにポーズを決める超美形冒険者のイラストが添えられていた。 


「……うさんくさっ」

 

 思わず口に出てしまった。いやでも、仕方ないだろう。

 異世界に来てから一週間、受けられるのはゴブリン退治か草むしりだけ。

収入も雀の涙。

 スキルは【平凡】。

 チートもなければ、目立つカリスマ性もない。


 それでも、生きていくには稼がなきゃいけない。

 

「……バズったら、いくらぐらい稼げるんだ?」

 後ろから声がした。


「収益化ライン超えると、月に金貨3枚くらいはいけますよ?」

 

 受付嬢のお姉さんがにっこりと笑って、俺のRankLive端末を指差す。


「それ、最初から支給されてた端末ですよね? 使ってないならもったいないですよ〜。いま、配信でバズるとギルド内ランクも上がりますから」

 

 ……え、ランクも?

 

「じゃ、ちょっと……試してみますか」


***


【視点】

RankLiveカメラ:第3者視点(ドローン風)


【場所】

近くの草原。危険度★☆☆☆☆


「よし……カメラ、回ってる……よな?」


RankLive端末を確認すると、画面左上に「配信中」の文字。

コメント欄は──空白。

視聴者数:0


「まあ、最初だし……とりあえずやってみよう」


 草むらの奥から、ぷよぷよしたスライムが現れる。

 俺は剣を構え、踏み込み、斬る。

 斬るというか、当てる。正確に。確実に。滑らず、ブレずに。


 【平凡】スキルの効果は単純だ。


 ――どんな状況でも、平均的な結果を出す。


 クリティカルヒット? 出ない。

 攻撃ミス? それもない。

 威力は平常運転、命中率も常に「標準値」。

 どんな斬り方をしようが、なぜかいつも「そこそこ効く」一撃にまとまる。


 便利っちゃ便利。だが──


「……なんで毎回、同じくらいのダメージしか出ねぇんだよ」


 剣を引き抜き、溶けたスライムの体液を払う。

 全部そこそこ倒せるけど、おおってならない。


 RankLiveのカメラが俺を映してる。

 でも、もし視聴者がいたら、きっと思ってるはずだ。


「毎回これかよ」って。


 ……それ、俺が一番思ってる。


「……さて、コメント欄は──」


【コメント欄】

(なし)

(いいね:1)

※自分が押したやつ


「……うん。まあ、うん。知ってた」


 なんだか悲しくなってきた。 

 帰り道、RankLiveの画面に通知が届く。


『初配信お疲れさまでした』

平均視聴時間:12秒

視聴者総数:1名(自分)


「これは……バズる気がしねぇ……」


 空っぽのコメント欄を見つめながら、

 俺はそっと配信を終了した。


 ――異世界でも、地味に生きていくしかないのかもしれない。

 てか、生きていけるのか?


 配信を終えて、ギルドに戻ったときだった。

 カウンターの隅。

 壁にもたれて本を読んでいた銀色のマントの男が、こちらに視線を寄越す。

 

 ――どこかで見た顔だな、と思ったら。

 

(……あれ、ポスターの……あの超美形冒険者じゃね?)


 そう思っていたら、男が近づいて言った。

 

「君、【平凡】スキル持ちだね。次のクエスト、俺と組んでみない?」

 

「――ええええッ!?」


 俺の平凡な冒険者生活は、もしかしたら──ここから変わろうとしていたのかもしれない。


***


カクヨムコン11に参加しています。

読者選考では、皆さまからいただく「★」が大きな力になりますので、応援いただければうれしいです!


転生したら【平凡】スキルで、女神に雑に送り出されたけど、気づいたら異世界トレンド2位になりました(本作)

https://kakuyomu.jp/works/822139838989360870


戦略屋は口だけだと言われたので、ファーム最強だった俺が異世界で魔王軍を再建してやんよ(新作もぜひ!)

https://kakuyomu.jp/works/822139840531473930


その分、ひとつでも心に残る物語を紡げるよう、最後まで全力で書きます。

どうぞよろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る