第16話 期待の空白と原点
翌日。
彼のスマートフォンに、ワックスメーカーからの「商品発送メール」が届いた。彼は配送番号を追跡サイトに入力し、ステータスを確認した。年末の連休や休業が重なった結果、ワックスの到着予定は年末の最終営業日ギリギリとなることが判明した。
年を越さずに済んだことに彼は静かに安堵したが、同時に、この最高峰のワックスが手元に届くまでの数日間に大きな空白が生まれてしまった。
だが、その空白の時間を前に、彼の胸は熱くなっていた。彼はソファーで、まるで子供のように待ち遠しさを感じている自分に気づく。新しいワックスへの期待感は、日々の生活の中のささやかな喜びの中でも、際立って強いものだった。
そして彼は、この強い期待感が、ある種の既視感を伴っていることに気がついた。
そうだ。この感覚は、以前、彼が洗車への哲学を深め始めた頃に、初めて最高峰の高耐久ワックスを使い始めた時以来の興奮だ。あのときも、彼はこの北欧ワックスの購入と同じく、飽くなき好奇心に突き動かされていた。
彼は、ふと、その高耐久ワックスとの出会いが、いかに自分の洗車観を一変させたかを思い出した。それは、彼の今の価値観を決定づけるものだった。
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