第16章:200メートルの決勝、魂の対決

秋の全国大会、200m決勝。


スタジアムの空気は張り詰めた緊張感で満ちていた。


遙と鈴村梓がスタートラインに立つ。二人の間に、火花が散るような緊張感が走る。


観客席から、結衣、雪乃、奈緒、杏奈、恵美の声が響く。


「遙、行け! 遙ならできる!」


鈴木コーチは腕を組み、遙の背中を見つめる。


遙の脳裏には、高校時代の記憶が蘇る。ハーフゆえにいじめられ、パスが回ってこなかった孤独な日々。それでも陸上で絆を見つけた。


「パン!」


スタートの合図。


遙と鈴村が並び、コーナーで激しく競り合う。


鈴村の孤高なリズムは、かつての孤独な練習の日々を映す。


直線で、遙が一歩抜き出す。


フィニッシュの瞬間、歓声がスタジアムを揺らす。


遙が勝利を掴んだのだ。


鈴村が歩み寄る。


「遙、強かった。君たちのハーモニーは、私の想像を超えていた」


彼女の瞳には、敗北の悔しさと、遙への深い尊敬が混じっていた。


鈴村は、遙のチームの絆が個の力をさらに高めることを理解したのだ。


遙は笑う。


「次はリレーだ、鈴村。そこで、最高のハーモニーを響かせてみせる」


夕陽がグラウンドを照らし、遙の勝利は絆の光そのものだった。

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