第9章:波乱の予選、策略の序曲

全国大会の予選が始まった。


遙たちチームは、飯屋玲奈が所属するチームと同じ予選ヒートで走ることになった。


「みんな、飯屋には気をつけて。でも絶対に冷静さを失わないで」


遙はスタートラインに立つ前に呼びかけた。


「位置について」


遙はスタートブロックに足をかけ、静かに集中を高める。


「パンッ!」


遙はスタートと同時に、大地を力強く蹴り出した。


飯屋はスタート直後にわざと遙のレーンに体を寄せ、遙の走りを妨害しようと試みた。


しかし遙は飯屋の動きを予測していたかのように、瞬時に飯屋から距離を置いた。


飯屋は遙に触れることができず、逆に自身のバランスを崩してしまった。


「くそっ…!」


遙は飯屋のラフプレーに惑わされることなく、冷静に走り続けた。


結衣へのバトンパスも完璧に成功する。


結衣は一瞬の判断で、飯屋のチームメイトの進路を避けるように、インコースへと切り込んだ。


奈緒がバトンを受け取った後、流れるフォームで加速していく。


結果は遙たちチームの勝利だった。


ゴール後、飯屋玲奈はチームメイトに掴みかかっていた。


「なんで私をアシストしなかったのよ!」


「だって進路妨害するなんて聞いてないわよ! 自分の身勝手なプレーのせいだ!」


彼女たちの間には深い溝が生まれていた。


奈緒は静かに見つめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る