第10話 人物紹介 北川 さとみ
北川 さとみ(きたがわ さとみ)
32歳。愛知県出身で、郊外でガス会社を営む家庭に生まれた。
実家は付近下一帯のガソリンスタンドや関連事業も手がける、地元ではちょっと名の通った家。
生まれながらに“ちゃんとした”環境で育ったせいか、所作や言葉遣いに自然と品がある。
県内でもちょっと名の知れたプロテスタント系のお嬢様校に、小学校からずっと通っていた。
伝統だとか格式だとか、まわりの大人はよく言っていたけれど、実際はもっとのんびりしていて、
先生たちもやわらかくて、気づけばみんな自然と“きちんとした女の子らしさ”を身につけていった。
当時から、街を歩いているとよくナンパやらスカウトやらにしつこく声を掛けられていた。
白壁に静かなチャイムの音が響く、あの独特の落ち着いた雰囲気の中で、
私も少しずつ言葉づかいとか仕草とか、いろいろ整えられていった気がする。
なんだかんだで大学までお世話になって、こうやって振り返ると、
あの環境が今の自分を作ったんだろうなぁ、なんて思ったりもする。
実は当時、本気で局アナを目指していたことがあったりする。
現在は、新中野の綺麗な築浅マンションに一人暮らし。
入居資金は高かったけど、以前の仕事で貯めていたお金があるので奮発した。
最初は頑張って家賃を払っていたけど、ちょっと愚痴をこぼしたら、最近はパパが振り込んでくれている。
好きなものはカフェラテとスイーツ。
社内でも新しいお店を見つけるたびに話題のぼる。
明るくて、よく笑い、少し天然。
でも、その“抜けてる感じ”が彼女の魅力であり、場を和ませる。
世間知らずのお嬢様ゆえ、意外と一般常識には疎い。
「えっ、またやっちゃったかも……」
と小首をかしげ、真っ赤になって笑う姿に、周囲の空気がやわらぐ。
それが計算ではなく、本当に素でやっているのだから、誰も責められない。
そんな彼女にも、秘密がある。
数年前に離婚を経験していること。
それを知っているのは、社内では田島だけだ。
もう一つ、
既婚中、夫の仕事の関係で、夜の仕事を少し?手伝っていたことがあること。。。
これは誰にも話したことがない。
いろいろあって、結婚生活に終止符を打ち、「誰にも頼らず、自分の力だけで新しい人生を始めたい」という強い思いで派遣登録し、今は、この会社に落ち着いている。
裕福な実家を頼ってコネ入社みたいなこともできたけど、自分の稼ぎだけで生活することに、彼女は強い決意とささやかな自立の喜びを感じている。
彼女には、長く付き合いのある友人がいる。石原けいこ。
既婚中、今の前の職場(最初の派遣先)で知り合い、離婚後もたまに会ってカフェに行ったり映画を観たり。小さな彩りを与えてくれる存在だ。
二人で出かけても、まず間違いなくナンパされる。
好きなタイプは、
「自分をありのまま受け止めてくれる、おおらかな人」。
彼女自身が世間知らずだからこそ、少々欠点があっても笑い飛ばしてくれる男性に、心の安らぎを求めている。
仕事はできるけど、家に帰ると実はちょっと頼りない感じで、私の繊細な心を守ってくれる、優しさと包容力がある 田島、、、もとい男性だ。
自分から積極的にアプローチするタイプではないけど、一度心を開いた男性には、持っている愛情を全て注ぎ込んでしまうくらい、情熱的で一途な面も持っている。
表では明るく振る舞いながらも、夜、帰宅して1人になると、心のどこかがふっと静かになる。
「……ま、いっか。今日もよく頑張ったし」
そうつぶやいて、誕プレでもらったお気に入りのフワもこのルームウェアに着替える。
明日もきっと、いつも通りの“さとみ”を演じながら、笑っているのだ。
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