第10話 望月のダンジョン

大きな目標が出来たので、スターリー一家の冒険者パーティーの戦力強化は積極的に行うことになった。旅のルートは、有効な隠しアイテムがある場所を辿るルートにする。取り尽くすような事はしないが、未来の世界の人達がアイテムを手にすることができないかもと、少し考えたが、ゲームの物語が始まるまでは、使っていたって良いんじゃないかと考える。


アイテムによって装備を強化して、魔王誕生を阻止できれば、未来の人達の為になるわけだし、ゲーム本編が始まる頃には自分達は完全に代替りしている頃だろう。



「やった! 望月のダンジョンの入り口が開いた!」


湖の辺にいたのは、単なるキャンプ目的ではなく、湖の近くに「望月のダンジョン」という幻のダンジョンがあり、満月の夜にだけ一定条件でダンジョンの入り口が開くと言うので、満月の日に月が上るのを待っていたのだ。


「望月のダンジョン」と言う存在そのものが誰にも知られておらず、そのダンジョンの入り口が開く条件など、知るものはこれまでは存在しなかった。アイナ以外は。


「満月の晩に、満月の光を鏡で反射させて、あの湖の中に突き出ている岩に、反射させた光を当てるの。簡単でしょ?」


アイナはこの時の為に、鏡を用意していた。掌より小さい鏡は、美しい装飾を施された蓋付きの薄いケースに入れられている。この鏡もスターリー家の商会で扱い始めたものだそうだ。まだ、売り出したばかりだが、フリードの母はこの装飾ケース付きの鏡を贈られて、歓喜していた。

貴族夫人達に宣伝すると約束していた。


高級とされるガラス鏡は、月の光を受けて反射させ、その光を湖の中の、ゴツゴツとした岩を照らした。すると、ゴゴゴゴと岩が振動し、岩から更に月光が反射して湖の畔の一部を照らした。


ズズズという振動音がして、湖の辺りに大きな穴が開いたのだ。


「地下に続く階段……」


開いた穴を覗き込んでみると、階段があり奥に続いていた。しかし中は真っ暗で何も見えない。


「……ダンジョンって、灯りがなくても中は明るいって父が言っていたんだけど」


真っ暗な穴を覗き込みながらフリードが言うと、アイナは木の棒に火を灯した。


「そうね……。もし、酸素がないとかだと怖いし、火が消えないか一応確認してみようか。火が燃えたままだったら、明るくなるでしょ!」


アイナはそう言うと誰の同意も得ないうちに、松明をポイっと「望月のダンジョン」であろう穴に放り込んだ。


松明は燃えたまま穴の中に落ちていき、底に到着したかというタイミングで、炎が大きく上がった。


「ギャーー!!」


突然叫び声のような声が、穴の中から響いてきた。


「え? 中に誰かいた?」

「でも、今開いたばかりだよね?」


ごおぉっと炎が穴の入り口近くまで燃え上がり、煙が高く上っていった。


「アイナ!何やっちゃったのよ!」

「えーー? 松明を入れただけなのに……」

「中に人がいたんじゃないの?」

「ま、まさか……」


マリナに、厳しく叱責されてアイナは青ざめた。


「ど、どうしよう……。消火……、消火を……」


アイナは一番容量が大きい魔法鞄を掴むと、湖の方に向かって駆け出した。


「アイナ? 何を?」

「湖の水を汲んでいって、火を消すの!」

「じゃあ、僕もやる!」

「みんなでやろう!」


既にあちこちで隠しアイテムを得ていて、魔法鞄は人数分より多く手に入れていた。

一家で魔法鞄を手にして湖の水を魔法鞄の容量一杯まで格納し、炎が出ている穴に水をぶちまけた。


ドボドボドボ!

ドボドボドボ!


一番大きい魔法鞄は、限界は確認していないが大きな倉庫位の容量はあるはずなのだが、炎がなかなか消えなかった。ジーク、マリナ、父、母と順番に魔法鞄から水をぶちまけた。もう一度!とアイナが再び魔法鞄を持って湖に向かおうとしたその時声がかかった。


「「待って!!」」


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