第9話 遠い未来の魔族の侵攻

「なあ、アイナ。この『魔族の侵攻再び』って大丈夫なのか?」


絵本を手にしながらお茶を入れていたアイナに話しかけた。アイナの注文で鍛冶屋に特別に作ってもらったキャンプストーブとかいう、金属の四角い箱に薪を入れて火を起こし、その上に薬缶を乗せて湯を沸かす。そういった道具もアイナに「前世の知識」があるということを感じさせる。フリードが腰を下ろしている折り畳み式のチェアだってそうだ。


魔法鞄があるのだから、わざわざ折り畳み式にしなくても良さそうなのだが、「持ち運びしやすい道具の方が冒険者っぽい」という理由で、使用しないときは小さく纏まる椅子を作った。冒険者でそんな椅子を持っているものはいないと思うのだが、そこはあまり突っ込まなかった。


「魔族の侵攻って言っても、ずっと先の話だよね。フリードのお父様と、うちのお父様達のおかげで、侵攻を食い止めて魔族の国を弱体化させてくれたから」

「それは、そうだけど……、また復活するなんて」


フリードとしても父達の活躍はとても誇らしく思うし、否定する気はないのだが、子孫の時代にはまた魔族が復活してしまうと知って、悔しく思ったのだ。


アイナは、フリードの近くに置いてあるテーブル代わりの木箱の上に、お茶の入ったマグカップをおいた。付け合わせに小皿の上にナッツのクッキーが乗せられている。

クッキーはアイナの手作りだ。砂糖はフリードの実家のオースティン領では希少な食材だ。世間一般的にもそうだとは思うが、スターリー家では、自領にあった植物で砂糖を作り出したのだという。

既に商会を起こして砂糖の製造販売も行っているという。商会については今の所人を雇って、経営自体も任せてしまって、製造は契約した工場に依頼をしているという。

もう、冒険者にならなくても、稼いで行けそうなほどだ。


「……そもそも、どうして魔族の勢力が増すんだ?阻止はできないのかな」

「うーん……、魔族の居住池の近くにダンジョンが出来て、その最下層のボスが魔王になるのよ」

「魔王が出てくると、魔族が勢力を増すってこと?」

「そうね。魔王のもつ魔力と魔族が体内で持っている魔力は影響し合うの。それで、魔王が生まれると、弱体化していた魔族の保有魔力も増していくというわけ」

「魔王が生まれないようにすれば良いんじゃないか?」

「えー……」


フリードの提案に、アイナは少し困惑した。ゲームの世界は、「魔王誕生」ありきなのだ。魔王が誕生して、魔族が再び勢力を増してきたとき、聖女が現れ、勇者の子孫が再び勇者として立ち上がる。


だが……。フリードの案も「あり」ではないかと、アイナは考え始めた。

魔王誕生までは、まだまだ時間がある。

無理だと諦めるには早過ぎる。


「できると良いな!魔王誕生の阻止!」


どうしたら良いかは、アイナの記憶の中の「ゲーム設定」を引っ張り出したら、何か良い考えが浮かぶかもしれない。父達にも話して、「魔王誕生」の阻止を目指すことにした。


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