伸び悩む君へ、アンカーを語る

 ほな遠慮なく、すんごい理論的な話をさせて頂きます。初心者、にはちと……急には、分からんもんかも知れん。


 あんさんらは、きっと分かる。


 知らんけどゴほぉっ(蹴




 せやな、今から話すのは小説の中級者から上級者に向けたガチの指南や。


 独白モノローグに侵食されて、主人公なにしとるんか分からんくなる人に多い、構造的な問題を理解させる為の話でもある。



要するに


 アンカーって概念、あんさんらは知っとる?



 あんな、カメラワークの技術でもあるもんでな?


 これがしゃんと機能しとらんとな。

『だからなにが言いたいねん』

『あんさんなにしとるん?』


 になるんよ。


 アンカー、楔、錨、杭、焦点。色々な呼び方をするもんやけど、ざっくり述べるなら『読者の視点を固定するもの』になるんやけどね。


 それは基本、物理的なものが多いもんやさい。物理的な事象を焦点にするのが一番分かり易いし、簡単や。是非真似して欲しい。モノローグはええもんや、思想が詰まっとるからな。


 せやけど主人公が現実逃避しとるんに、現実は進みよるからな。その現実に引き戻すのが『アンカー』や。


 

エクスプロージョン 千古不易 - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/822139839891803057


 この短編を解体し、アンカーに付いて語らせて貰らおう。



 

 この作品のアンカーは『主人公の心理』と『外面の現実』を繋ぐ《定点》として機能させている。



 せやな、めっち独白がある作品やねんな。半端ないな、此処まで過剰なんはまあないやろ。ええ感じの教材や。



 さてさて? 真面目に語りますね?




 アンカーによる現実の固定と独白に付いて。


 極度に分析的で自己防衛的な独白が終始繰り返されていて、読者の視点が『僕』の独白に引っ張られる。あれだけ自己嫌悪、分析、観察、自己否定して思考に逃げているから仕方ない。


 当たり前に見失うものです。


 それをさせない為に『アンカー』を応用しています。


 強烈な具体的で物理的なアンカーを挿入し、読者の視点を常に『目の前の現実』に引き戻す役割があります。どんなに長文でも、整合性を確約する、そんな話。


 まあ、実際に感じて欲しいねん。




開始のアンカー:身体と環境の固定


「肘をテーブルに突いて、手首の角度を固定」 = 物理的アンカー(身体)


 冒頭で主人公の姿勢を固定して、後の思考の混乱や爆発への無関心とか、雑多な思考を『揺るぎない静止状態』を最初に定義して、視点がぶれない配慮をしています。


 モノローグに突入する場合、こう言ったトリガーを作らなければなりません。終わりと始まりの明確化、始まりは良くても、着地点が疎かになれば視点の置き場に困ります。徹底してください、モノローグは好き勝手して良いです。




「ガラス越しに都市の輪郭を測っていた」= | 物理的アンカー(環境)


 視覚焦点を『都市』のような大きな定点に固定し、主人公が『観測点」である事を提示しています。


 これも物理的なアンカーで、模倣は簡単かと存じます。




危機発生と「関心」のアンカー

精神的アンカー



 最大の危機的状況(爆発)が発生した際、主人公の関心は『異常』ではなく『平常』に固定し、そのアンカーが内面描写を支配しています。


 普通は、一般的には『爆発』等のインパクトがある事象をアンカー指定します。


 その方が簡単だから。


 これは応用技術な部分があります、破綻しないようにするのは難しいですが習得すればアンカーマスターです。




アンカー例


「光った気がする。閃光だ、時間差を伴って音響波」=感覚的アンカー(聴覚/体感)


 爆発は外的要因の異常であり、無視出来ない衝撃です。これを『音響波』『気圧の不均衡』と理論的、或いは論理的に変換して入力し、分析的な思考の起点としています。


 主人公の思想をアンカーに落とし込んでいます。





「飲んでいた珈琲が視界にある」=物理的アンカー(物体)


 爆発後、普通は最初に焦点を当てるべき『瓦礫』や『人々』ではなく『珈琲』をアンカーに指定しました。


 最も日常的な定点に固定したので、これにより主人公の『異常なまでの冷静さ(現実からの逃避手段、思考回路)』が際立つ仕組みとなっています。


 アンカーを支点固定としてだけでなく、造形や深掘りに応用しています。難易度は高いですが、なんとかなる。




「机上に置いていた珈琲は揺れたけど、傾いて中身をぶち撒けはしなかった」=物理的アンカー(評価、観察)


 珈琲が倒れなかった事実は極めて小さな主人公の『成功』で、論理的に評価し『鉄柱』『許容偏差』という分析思考へと逃がしました。


  アンカー自体が自己防衛の手段となっています。


 難易度、こっから下は全部エグいかもです。でも大丈夫、論理的に考えて理論的に詰めれば破綻はしませんから!





行動への移行と「自己認識」のアンカー


 主人公が最終的に行動(席を立つ、振り返る)を起こす直前に。


 思考が『振り返らないべきだ』


 そうやって独白に逃げますが、アンカーがその矛盾を強調しています。




「僕は後ろ歩きの思考に引き摺られるように振り返って、目玉を回す」=物理的アンカー(動作)


 思考回路(独白)や自己分析の後に実際の動作を挿入し、内面の葛藤が外面の行動に繋がった事を示しています。加え『反射』ではなく『意識的な選択』である点を強調しています。


 これにより単なるアンカーが造形や独白の延長になります。難易度は高いです。




「窓の外は、嘗て十二分に機能していた建築物が熱の不始末に寄ってへしゃげていた」=物理的アンカー(環境の変化)


 やっと、やっとですよ皆さん!


 初めて視覚的な破壊の全貌を提示しました。


 しかし、なんだこの違和感。そう、これすらも『構造的な欠損』や『物理学の法則』等で論理のアンカーを脊髄にし、冷淡に処理させています。


 蛇足、『因って』や『依って』じゃないのは意図的です。これはアンカーとは関係ない話ですが。




 とまあ。難易度は、心理アンカーを扱えれば普通。可もなく不可もなく、です。是非真似してくださいな。



最後


終結となるアンカー、日常への回帰



 結末は再び


『最初に設定した物理的アンカー』


 戻す事で物語全体を通じ

「非日常(爆発)」を経験しながらも


 主人公にとっての『日常(異常な無関心)』に変化がない事を示しております。



「机の珈琲を手に取り、一啜り。やはり冷めていた。」=物理的アンカー(再確認)


 爆発は無視不可解な出来事であるべきですが、後に、最も小さな動作(珈琲を飲む、日常的な風景)に戻し『何事もなかったように振る舞う』主人公の心理を決定し、珈琲が冷めている感覚と、彼の感情を比喩的にも暗示するように設計しています。



「冷めた珈琲を飲み込んだ。うん、大方は日常的だ」=物理的アンカー(終結)


 珈琲を飲み込む動作で、この異常な現実が、主人公からすれば『日常の範疇』として解決した事が確定し、全体の〆として非常に強いものとなっています。



 要約すると


 アンカーを「物理的な描写」としてだけでなく「主人公の心理状態を測るための基準点」として機能させたアンカリング技術の応用例です。



 おk? 理解できましたか……?


 分からなかったら質問してくれい、なるべくは優しく教えまさぁ。


 ん?


 なんの話をしたか?


 物書きが築くべき基礎の話。色々な分野部類、細かな整合性と、どれだけ長文でも語弊なく正確に伝える技術的な話――あなたの基礎力に繋がるものであります。



 話して欲しい事があったら気楽にどうぞ、気儘にお答えします。

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