第2話 推薦

(思ったより強く殴ってしまったな)

僕が腕を擦っていると、

『パチパチパチパチパチパチ』

と拍手が聞こえてきた。僕が拍手の音がした方向を見ると男がたっていた。その男は薄い緑の髪をしていて身長は180後半くらいあり、スーツを来ていた。その男は笑みを浮かべながらこう言っていた。

「君、なかなかやるじゃないか。まさか一撃で倒すとはね思いもしなかったよ。」

「あなたは誰ですか?」

僕は聞いてみた。

「おっと、自己紹介がまだだったね。私はこういうものさ。」

そう言うと男は名刺を渡してきた。その名刺には、天秋学園教師 高宮悠と書かれていた。

(天秋学園教師!)

僕が行かないといけない学園の教師をこの男はやっているらしい。でも、

「何で、学園の教師がわざわざこんな所にいるんですか?」

そう問うと、高宮さんは、

「私は、教師のほかに学園にふさわしい人材を探す仕事を学園長にまかせられていてね、今回は昔推薦を渡した子が、君と戦うと聞いて来てみたんだけど、」

高宮さんはため息をつきながら、

「成長することを期待して、推薦を出したのに1年前と何も変わっていなくて、がっかりして帰ろうと思ったら君と出会ったのさ。」

と高宮さんはにやりと笑みを浮かべながらこちらをみた。そしてかばんから一枚の紙を取り出した。

「君は学園に入学したいかい?」

「もちろん」

僕は高宮さんの質問にそう答えた。

「ならこの紙をあげよう。この紙を持っていれば、君が学園に来るとき試験を飛ばすことが出来る。でも君が推薦するに足らない人物だと分かったら、この紙は燃えてなくなる。くれぐれも私を失望させないでくれよ。」

そういうと高宮さんは帰っていった。僕も家に帰ることにした。家に帰ると今日一日いろんな事があった疲れのせいかすぐに眠ってしまった。

翌朝目を覚まし、学校に行く支度をしていると

『ピンポーン』

とチャイムが鳴った。出てみると咲がたっていて咲は扉を開けるやいなや

「何でそんなに強いの?何で隠していたの?」

と質問攻めにあった。

僕が咲の質問に全部答えると、落ち着いたのか

「ごめん、質問攻めしちゃって、じゃあ学校に行こう」

といってきた。僕たちが学校に着くと、どうやら昨日の事がもう学校に広まっているようで、いろんな人からたくさんの視線が向けられた。それは教室についても同じで、教室に入るとクラス全員に視線を向けられ、それは席に着いても続いた。

鐘が鳴り教室の外にいた連中が居なくなり、先生が入って話を始めた。どうやら山内は約束を守り退学したらしい。先生の話が終わり、授業が始まった。休み時間になるとまた人が集まって来て授業が始まると居なくなる。そんなことが続き居心地の悪さを感じながら昼食時間となった。僕はすぐに屋上にいき、ドアに鍵を掛けた。

「気が滅入るな」

独り言を呟いた。

どうせ今だけだ。すぐにこんな事なくなるはずた。そう考え昨日の事を思い出し僕はカバンに入っている紙を取り出した。その紙には推薦書と書かれており、この紙を持つ者は実力があるから試験は受けなくていいと書かれていた。

(実力か)

僕は昨日山内と戦って自分の弱点を理解した。確かに僕は力はあるが体力がなく本気を出せば10秒くらいで疲れて動けなくなってしまう。

(このままでは学園を卒業することは厳しいか)

この学校を卒業して学園に入学するまであと3ヶ月ある、僕はその期間を使って身体を鍛えることにした。朝は10キロジョギングをして昼は筋トレ、夜はその両方をやることにした。徐々に慣れて来ると重りを増やしたり、走る距離を増やしたりした。そうして月日は流れ僕は学校を卒業した。

「もうこの学校とお別れか、なんだかんだ早かったな」

隣にいる咲が言う。

「深はこれから天秋学園に行くんでしょ?」

「あぁ、記憶を取り戻すためにね」

「そっか」

咲はそういうと立ち止まった。

僕が振り返ると咲が涙を流していた。

「咲どうして泣いているの?」

「だってもう会えないんじゃないかって思って」

「何言ってんだよ」

「だって天秋学園は実力主義で実力があれば何しても良いから、深よりも強い奴がいてそいつに深が殺されて深と会えなくなるんじゃないかって不安で」

咲は涙を流しながらそういった。そんな咲に僕は

「大丈夫、どんな奴がいたって絶対に僕は学園を卒業して記憶を取り戻して帰ってくるよ。」

そういうと咲は僕に、

「これあげる。」

そう言って手を突き出した。その手にはお守りが握られていた。

「これ深のために作ったの。深が絶対帰ってくるようにって」

僕は咲からお守りを受け取ると、

「まかせとけ、必ず帰ってくるから約束だ」

「分かった。約束ね」

そうして僕は咲と別れたあと、学園に向かうため港に向かった。

学園は本州にはなく遠くの島にあるらしい。そこに行くためには学園に向かって出発する船が全国各地にあるのでその船に乗る必要がある。僕は港に着き船に乗り込んだ。その船には50人くらいの人が乗っていた。僕は案内された部屋に荷物を置くと風を浴びたくなり甲板に出た。この船はどうやら着くのに10日ほどかかるようだ。それまでどう時間を潰そうか考えていると、

「お前も風を浴びに来たのか?」

振り返ると白髪の髪をした男がたっていた。

その男の質問に

「あぁ、そうだ。ところで君は?」

「俺か?俺は白山楓だ。同じ受験者どうし仲良くしようぜ。」

楓が手を出してきた。

「あぁ僕は相良深、よろしくな」

そう言うと僕は楓の手を掴み握手をした。

少し話していると楓と話が合いそうして、僕と楓は仲良くなった。どうやら楓は幼い時に両親を亡くして、姉が一人で楓を育ててくれたらしい。でも無理をしすぎて姉は亡くなってしまい、楓は亡くなった姉を生き返らせるためにこの学園に来たようだった。

「俺はだから何としてでも、卒業しなければいけない、深は何の願いを叶えて貰うためにきたんだ?」

「僕は、記憶を取り戻すために…」

そう言って僕はこれまでの事を話始めた。

「深、お前能力者じゃなかったのか。」

「あぁ、僕は能力を持っていないけど、この鍛えた身体で能力者だろうが倒して、卒業するんだ。」

僕はそう言うと楓は

「そうか、お互い頑張ろうぜ、もし戦う事になっても手加減しないからな。」

「そっちもな」

そう言うと楓は船内に戻っていったのを見て僕も部屋に戻った。それから10日間僕は、鍛錬をしたり、楓と話したりして暮らした。そうして船が港につき、僕は船を降りた。そこには街が広がっていて様々な建物があった。そして街をの中央にはでかい建物があり、直感であれが学園だと悟った。

「受験者はこちらですよ」

と案内人が立っており、案内人はゆっくり進み出した。案内人に着いていくとそこには建物があり、推薦者専用と書かれた建物と受験者専用と書かれた建物があった。僕は推薦者専用の建物に向かった。建物の前には人がいて推薦書を見せてくださいと言って来た。僕は推薦書を出して見せると、バッチを貰い中に入る事を許可された。中はシンプルな作りで椅子と机、真ん中にはでかいモニターがあった。僕は椅子に座り待った。待つこと15分モニターに電源が入り人が映し出された。

「やぁ、みんな注目、僕はこの学園の学園長の時田宗二、覚えておいてね。」

僕はモニターに映し出された人を見る。灰色の髪で、学園長と言うから、年寄りを想像していたが、意外と若く30代くらいに見える。一番特徴的なのは、半分だけ付けている狐の仮面である。

そんな事を思っていると学園長は

「君たちは推薦され、本来はここで推薦されなかった人達の戦いを観るのが伝統だったんだけど、今年は推薦を貰った者が60名もいた。僕は毎年50人になるように選んでいてね、推薦が60人もいるなら推薦を貰っていない人は要らないから帰って貰った。」

学園長は続けて言う。

「でもそれでもまだ10人も溢れている。そこで、急遽君たちも試験に参加してもらう。ルールは簡単、ここに入る時にバッチを貰っただろう。そのバッチを守りきればいい。これを残り50人になるまでやってもらう。場所はこの島全体、今から30分後にスタート。君たちはこの30分の間に島に散らばってもらう。ただしこの島から出ると失格だ。このルールさえ守れば何をしてもいい。そして、残り人数が50人になった時、最も多くバッチを持っている人には特別ボーナスがある。」

その言葉に周りがざわついた。全員の目が変わった。

「では始めようか、せいぜい頑張ってくれ。」

そう言うとモニターにタイマーが出現した。

そうして入学をかけた試験が始まった。







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