第26話 起点と
同封されていた彼女の母親の手紙には、先日の強引な招待へのお詫びと、ライブにいけない事への残念さ、そして花火の日に自宅に招待したいとの内容だった。
彼女は体が弱く、人混みが苦手なようだ。
残念と思いつつも、初めて彼女を目にした時の印象から、納得のいくものだった。
春休みに電車で見かけた彼女は制服を着ていた。座っているのに少しつらそうな感じ。
今思えば横に座っていたのは彼女の姉だった。
たまたま同じ駅で降りたのだが、降りるなりホームのベンチに座り呼吸を整えていた。
人の流れが落ち着いたころ「大丈夫」と言い、階段に向かい歩き出す。
二人はゆっくりと階段を昇って行った。
ライブに来てもらうのはあきらめよう。どこでも聞いてもらえるようになればいい。
「あたしたしもいいの?」
「いいんですか?」
「是非に!って」
「浴衣で?」
「俺らも浴衣?」
「親父のがあった気がする」
「うちの母さんが着付けできるから、うちで一緒に着替えよう」
「お願いします!」
手紙にあった待ち合わせの場所と時刻を伝えたが、二人はキャーキャーと当日の髪型などを相談している。聞いてんのかねえ。
「で、あんたなんか考えてんの?」
「なにが」
「ノリ悪くない?」
「そんなことはない」
「ライブ断られてるからね」
「それで?」
「残念ですけどお体のことがあるならしょうがないですよ」
「またテープ送ればいいじゃん」
「あんたが辛気臭いと、みんな気を使うからしっかりしなさいよ。主賓でしょ」
「そうなのか?」
「あんた馬鹿?あたしらはついでよ、ついで。意識低いと損するよ」
「お母さまにも気に入られてるみたいですしね」
「そうなのか」
思った以上にライブに来てもらえないのは答えていたらしい。開き直った気でいたが、二人が言うならそうなんだろう。それに、彼女なら気づくだろう。よし!グジグジしてらんねえな。
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