惑星ムンド管理官、転生者を監視する。
山田村(やまたむら)
第一章 転生
第1話 西暦115XX年 はじまり
前管理官から後任者として、約一万年。俺が転生して歴史はすべて上書きされ、世界は大きく変化した。天皇は地球のすべての帝として、この星の象徴として在る。日本には皇紀という、歴史に六百六十年を加える独自の時間がある。しかし十七世紀の世界はそれに適応できず、結局、日本は西暦に対応できる形で歩調を合わせることとなった。
テクノロジーが進み、誤魔化しが通用しない世界になり、昔、存在した弁護士や検事、裁判官などは歴史教科書の中にしか存在しない。今いるのは議員だけである。
一番の転換期は、二十五世紀過ぎの小氷河期だった。準備が不十分な国は突然の到来に対応できず、途上国ではかなりの人口が減少した。
特定の科学者にアクセスして危険を知らせたが、彼女は宗教のワンネス教の教祖となり、人々を別の方向に導いていった。
初めは優秀な物理学者で、「部分は全体を含み、全体は部分に含まれている」と語っていた。しかし私がアクセスしてからは、「あなたはワンネスを“得る”必要はない。『自分は個別の私だ』と思い込んでいるのを“やめる”だけでいい」と、まるで二十一世紀に流行った新興宗教のようなセリフを吐き、変貌していった。
出だしは、若い一般的な男性にワンネスについて教えていたところ、逆にからかわれ、 「じゃぁ、貴方の今履いている〇〇〇は私の物だから今すぐ脱いで、代わりに私の〇〇〇と交換しよう。恥ずかしいならさ、そこのホテル・ナイジェリアでどうだい?(笑)
」 と笑顔で言われ、泣いて逃げた彼女が、今では百万の信徒を抱える教祖となった。
豊かな時代に莫大な富を得て、別の方向へ流れてしまったのだ。
やがて十万人規模のミサの最中、炎が彼女を包み、神罰とも事故ともつかぬ痕跡を残した。教団は解散したが、問題は解決されなかった。
自分で立てない国は淘汰された。約一万年の過程で滅んだ宗教や民族も多数存在した。大戦ではなく、自然淘汰していったのだ。まさに自然……。
科学の転換期は二十二世紀に公開した<AI-みちびき>から始まった。民間から公共まで導入が進み、議員の変化を通して世界は大きく動いた。
初期導入時には、その日の行動がすべて把握され、予定外の国外要人との密会や裏組織との接触、愛人や風俗など異性関係まで、トイレに行った時間や回数、手を洗った回数まで事細かく記録された。
当然、本来の議員の仕事に関する進行状況などもすべて開示請求すれば公開され、口で誤魔化しても真実が分かる。
思想的な面では、マルクスが生まれなかったことも影響し、社会主義風の理論も登場したが、日本の力でブームにはならなかった。AIの登場でグローバルな金儲け団体は崩壊し、文系リベラルの理論も破綻した。マネーは消滅し、金儲けはゲームの仮想空間に存在する遊具となった。
「お金を沢山所持していることが、その人の価値ではない。」
そういうきれい事が現実になった。
民間でも同様に、口だけの者は淘汰された。報道も同じだ。時間の経過とともに社会のスリム化が進み、一人の職員で十人以上の作業をこなすようになった。人々は自分のやりたいことに専念できる社会へと変化し、お金が無くなり、俺自身も想像しなかった奇妙な世界へと変わっていった。まぁ、国民が満ち足りているから良いのだろう。
このような変化が世界に伝播し、現在に至る。
今日は、間もなく例の時期なので、前任者とその時を待っている。俺は控え役だ。本来なら俺の仕事らしいが、あんな恥ずかしいセリフは無理だと泣きを入れて許してもらった。嫌味は言われたが、すべて受け止めた。
<君ね~……これは我々の伝承で由緒あるものだよ。若いね~>
その時がやって来た……。
「高市早……ラノベ中毒の貴方なら今の状態わかりますね~!
そうです!転生者に当選しましたぁ~ぁ~ぁ~……。
……よくあるノリノリの管理人!口調で話してみました……!
冗談はさて置き、一万年に一回の確率で貴方の生命にクイッと干渉してしまいました。一定数の確率でこのようなミスは必ず発生します。
この星のレベルでは誤差範囲で些末な事ですが、銀河規模で考えてもナノ以下の存在でも感情は存在する……納得……しないでしょう。
選択と提案します。
『人として暮らし死ぬ』か『消滅』――どちらか選択してください!!!」
「ケッ!オレは、バイ菌以下の感情かよ……」
そうやさぐれてから、意識を人として暮らし死ぬと想像したらしい。
「わ か り ま し た……いいロケーションを設定しました。
詳しいことは夢の中で説明します。
……ではよい人生を…… ・ ・ ・ 」
静かな声が響き、幕は閉じた。
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「先輩、本来12025年で一万年ですよね。」
「鋭いー!」
「普通、気付きますよ!」
「これから説明しようか?」
(沈黙)
「ウソみたいな世界だから、このタイミングでいいんだよ」
「先輩……選ばれる基準って、ラノベ中毒に関係あるんですか?」
「……意味は無い。……が、この世界の免疫がある人がよいだろ~……愛だよ。愛。わかるだろ~直道……」
「…………」
「そんなことより、私が担当していた惑星へ行って、彼女を監視、管理しなさい。」
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