第3話 琵琶湖畔
漸く琵琶湖まで辿り着き、対岸まで船で運ぶ一行。
春霞の湖畔はこれから未知の世界に向かう船旅であった。
三人の男の子達は故郷の歌を唄いながら船旅を楽しんで、母と羽のは積んだ野草を揺れる船の上で分けていた。
「これは、蓬だ」
侍女の阿せいが大声で喜んだ。
「餅に混ぜましょう、後は蕨や蕗はこちらに分けて、そうそう傷まないように」
南が野草を持って支持する。
「母上、これでその……」
「いいわよ、お作りなさい」
頷く羽のに手渡す草花。
器用にゆっくりと花冠を作っていく羽の。
出来上がった花冠を付けて、嬉しそうな顔の羽のを喜一郎は横目でじっと見つめていた。
側に父がそっときて、喜一郎と並んだ。
「千年桜は如何であった?」
「はい父上、とても千年あそこにいるのが」
「不思議であろう、あの桜は千年前の帝が美濃の国で育ち、都に帰る時にお手植えの桜と共にお歌を読まれたのだ」
「え、帝が?」
「おーそれは良きお歌で、あの桜と共に末永く村が栄える事を願ってのう」
「本当に末永く咲いてきたんですね」
「我らも都に行くので、何故か縁があると思う、また戻っていつか桜を見たいな」
「はい」
そう言いながら、喜一郎は花冠を恥ずかしそうに両手で撫でながら嬉しそうな羽のを見つめる。
心の中でまた薄墨桜の事を想像した。
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