『第二話-完璧な旅行計画-』−2
□□□ 1日目(昼) エーテル王国 魔法都市アルカーナ
生まれて初めて学校という建物を見た気がする。
長くて巨大な石壁、部外者を拒むような大きな鉄の門、そして六階建ての木造校舎はまるで城のような大きさだった。
こんな大きな建物がなぜわざわざ木造なんだと思ったけど、そういえばここはエーテルだ。魔法と親和性の高い木を使っているのは容易に連想できた。
「へえーすごい。こんな大きな建物、初めて見たよ。たぶん」
花壇に囲まれた道を歩いていると、制服を着た学生とすれ違う。男性はスラックス、女性はスカートで、どちらも白を基調として、全員紺色のローブを羽織っている。
年齢は俺とそう変わらない。けど、みんな頭も育ちが良さそうだ。
それはそうだ。王立の魔法学校に通える学生なんて、貴族かそれこそ王族くらいのものだ。
いくら魔法に身分が関係ないとはいえ、余程の才能がない限り平民が王立学校に通うなんて夢のまた夢だ。
「私も学校に通うのは初めてで、少し緊張しちゃいます。知っていますか? 学校には食堂というレストランみたいなものがあるんですよ。お昼ご飯が楽しみですね」
そう言うローラはあまり緊張はしていないように見える。今朝、旅の計画が変わってから、心なしか声も明るくなったように思えた。
「このパンフレットに書いてあるけど、どんなのだろうね」
きっとメニューがたくさんあるから、また全部注文するんだろうなと俺は呑気に考えていた。けど、一つだけ不安になってくる。時間的余裕はあるけど、食費は本当に足りるんだろうか。ローラは常に俺の三倍以上の量を食べている。
そして、もう一つ盲点というか、俺が気づいていない問題に今日気づいた。
「だれ?」「可愛い……」「どこの学科? 編入生?」「貴族? え、まさか王族?」「二人とも可愛い」「美少女すぎる」「好き……」
とにかくローラの容姿が目立つ。
一緒に歩いていて、なんとなく視線を感じるから不思議には思っていた。だけど、単純に全員ローラを見ているだけだ。
学生たちは聞こえないように配慮してくれているけど、耳の良い俺にはしっかりと聞こえている。
男子学生だけでなく、女子学生も興奮気味に好意的な感想をひそひそと言い合っている。
「あの……なんだか、すごく見られていませんか?」
「……気のせいだよ。えっと、手続きって事務室だっけ?」
事務室でローラは編入手続きの書類、俺は付き添い用の書類にサインをすると、手のひらに収まるくらいの小さな紙をもらった。
ローラは丁寧に手帳に挟んでいたけど、俺はとりあえずジャケットの内ポケットに入れた。学校内を歩く時は必須らしい。と教師に説明をしてもらった。
「では、この後教室に案内しますね」と教師が言う。
「はい。ラナ、なんだか外が騒がしくないですか?」
俺がふと後ろを見ると、ローラを一目見ようとするパレードのような学生の行列が事務室前にできていた。
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