④感情と事実認識の切り分け
前述で、AIですべてを作ることは「技術」であって、「創作」ではないと書きました。
まずはそれがわたしにとっての前提と考えていただけると嬉しいです。
次に考えたいのは、拒否反応を起こしている創作者側の感情と、AIの事実です。
感情的反発の根本にあるのは、「自分の領域を奪われる」という危機感だと思います。
そりゃあそうです。
人が作るなら何時間、何日、場合によっては何ヶ月もかかるようなものを、AIはものの数分で作りだしてしまう。
それも、一応は見られるレベルのものを「ポン」と作り出すんです。
危機感を覚えるのも当然です。
ただ、思い出してください。
AIは、便利な技術であり道具です。
構築されているAIはすでに何種類もあり、元にしているデータもそれぞれ。
あくまで人間は使う立場であり、AIは巨大データを活用するためのプログラム。
それ以上でもそれ以下でもありません。
創作者が思う通りのものを、完璧に再現することはできません。
つまり、本当の意味で創作者の「創作」を奪うことはできないのです。
初音ミクが登場したとき、音楽業界は震撼しました。
「歌手の仕事が奪われる」「機械音なんて人の魂がこもらない」等々、否定の言葉が湧いて出ました。
では実際に歌手の仕事が奪われたのかというと、むしろ音楽業界としてはボーカロイドという分野が新しく確立されてすそ野が広がり、素人が音楽を作るようになって提供される楽曲も増えました。
さらには、「歌ってみた」をきっかけとしてプロデビューする歌い手様まで登場しています。
技術は使うものであり、その技術が創作を追い越すことはないと考えます。
なお、提供される楽曲が多すぎてプロのミュージシャンが埋もれてしまう、という問題に関しては、確かにボーカロイドも一部関わりがないことはありません。
誰かが「音楽全体」に割くリソースを考えると、少なくともボカロやほかの媒体で発表される音楽に顧客を奪われたという側面もある、と言えます。
しかしこの場合は、ボカロよりもインターネットの普及、さらにスマートフォンの普及の方が大きいと思います。
個人が選べる遊びの種類が膨大になった結果、与えられる音楽を遊興に選ぶ人が減った、それだけだと考えています。
本の売り上げが全体的に減っているのだって、同じことですよね。
閑話休題。
自分の仕事が奪われる、というのは確かに歓迎できません。
わたしだって嫌です。
ですが、AIという新しい技術によって置き換わるものは「作業」です。
作業が減るということは、より創造そのものに力を入れられると考えられます。
たとえば、情報収集や市場調査。
漫画家の背景描写。
イラストレーターの類似イラスト調査。
創作っぽいことよりも、むしろ創作の周辺作業を得意としていると思います。
ちなみにわたしは、誤字脱字チェックや漢字の誤変換がないかを毎回見てもらっています。
にもかかわらず、野生の校正さんにはいつもお世話になっていますし、本物の校正様には原稿にひたすらチェックを入れられました。
校閲っぽいことに関しては、まだまだ苦手なようです。
AIの苦手分野を克服するように調整はされていくでしょうが、「創作っぽさ」が向上するだけだろうと予想します。
創作者の自己表現は、その人にしかできません。
AIは、そのサポートしかできません。
AIを正しく知る、まずはそれがスタートだと思います。
別に、どういうプログラムかまで読む必要はありません(そこまではさすがに公開されていないはず?)。
AIは、沢山の情報を収集して、分類して、類似性を見つけて、組み合わせて作ります。
AIになんか適当に要求したら、それっぽいものを作ってくれます。
あくまで「それっ
なお、「○○スタジオの絵柄でこういう絵を描いて」というのは、二次創作であるうえに②で触れた著作権問題も絡んできます。
法律怖い。
わたしはそちらには近寄りません。
「AIで作ったキャッチを突っ込んでくるデザイナーにもにょる」
「AIで作った音楽を使う動画制作者は微妙」
「AIで作った画像を使うWeb小説家に複雑な感情を抱く」
これらの不快感は、作業と創作を混同した結果だと思います。
AIでキャッチを作ったデザイナーが、コピーライターを軽んじているわけではありません。
AIで音楽を作った動画制作者が、作曲家を不必要だと考えているわけではありません。
AIで画像を作った作家が、イラストレーターを無下にしているわけではありません。
自分の創作では手が届かない部分を、自分で完結するために技術を使って作業した。
それだけです。
AIを使えば作業が早くなる。
創作は創作者にしかできない。
その事実をきちんと理解すれば、拒否反応も出なくなるんじゃないかな、と思います。
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