桐谷先輩は今日も尊い。
詩月結蒼
第1話 「先輩、今日も尊いです。顔が」
はじめて
舞台の上で堂々と話す桐谷先輩は、とにかく顔がよかった。
今まで見てきたアイドルや俳優なんかよりも全然かっこよくて、イケメンで。
あの
そして時は過ぎ、私は先輩と同じ生徒会に入ることができたのだった――。
「おはようございます。先輩」
「あ。おはよ、
私、
「先輩、今日も尊いです。顔が」
「ほんとブレないよね、君って」
「ありがとうございます」
「褒めたつもりはないんだけどな……」
先輩の(イケメン顔を見る)ためにこの高校に入学した私は、もう、毎日がパラダイスである。
はっきりとした顔立ち、きれいな肌、シュッとした輪郭……すべてが神の創りし完璧なイケメンだ。
「ちなみにさ、尊いって言ってるけど、具体的にどの辺?」
「すべてです。すべてに決まっています。具体的にどことかありません」
「そうなんだ」
じゃあさ、と先輩が私に近づく。
「どれか一つでも欠けたら、俺ってイケメンじゃなくなるの?」
ちょ、ちょっと待ってください先輩!
お顔が近いです!
両手でぎりぎりの距離を保つと、私は答えた。
「イケメンじゃなくなるわけではないと思いますが……ランクは落ちます」
「ランク……」
「はい。ランクです」
イケメンには種類とランクがある。
桐谷先輩は現在チャラい系の最上ランクだ。
種類の壁をぶち壊しても先輩は(私の中で)ぶっちぎりの一位だ。
あぁ、今日もイケメン……好きです先輩。その顔が。
「ふぅん……」
「どうかしましたか、先輩?」
すると、先輩は私の耳元でこう囁いた。
「――花織ちゃんに惚れてもらうには、どうしたらいいものかと思って」
「~~っ!!?」
ちょっと先輩!?
どこでこの技術身に着けたんですか!?
先輩は顔が最高に美しいですけど、声もそこそこに破壊力あるんですからね!
「私はすでに先輩(の顔に)惚れてますよ!」
「君が言うと含みのある言葉に聞こえるのはなぜだろうね?」
「? なんのことです?」
なにも含んでいないと思うけどなぁ……。
私はなるべく素直にストレートに物事を発言しているつもりだ。
「安心してください先輩! 私は先輩が最上級のイケメンの限り、推し続けますから!」
「そこは永遠に推し続ける、って言ってほしいんだけど?」
「無理ですね。私の場合、推し変はよくあるので」
「よくあるんだ……頑張らないとな」
「何か言いました?」
「いや。何も。そろそろ時間だ。教室に行こうか」
「そうですね」
そんなこんなで、私は今、推しと一緒に学校生活を送っている。
桐谷先輩、今日もあなたは尊いです。
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