無能な荷物持ちと罵られ、ダンジョンで追放された俺が、死の淵で【世界最強】チートスキル【無限収納】に覚醒し、【無双】を始めた件 ~俺を追放した勇者パーティーが泣きついてきたけど、奴隷落ちさせてやります~
人とAI [AI本文利用(99%)]
第1話 Sランクパーティーの奴隷
ごつごつとした硬い感触と、鼻につく獣の糞尿の臭いで俺は目を覚ました。
寝床は、馬小屋に申し訳程度に敷かれた藁の上。それがSランクパーティー『神速の剣』に所属するポーター、アル・ウェインである俺の定位置だった。
「おい、ゴミ! いつまで寝てやがる! さっさと起きろ、無能が!」
馬小屋の扉が乱暴に蹴り開けられ、甲高い怒声が響く。
声の主は、このパーティーのリーダーであり、勇者の称号を持つ男、ガイアス。金色の髪をなびかせ、高級なミスリル製の鎧に身を包んだ、いかにも「選ばれし者」といった風体の男だ。ただし、その整った顔は、俺に向ける時だけは常に醜く歪んでいる。
「も、申し訳ありません、ガイアスさん! すぐに準備します!」
俺は慌てて飛び起き、頭を下げる。反論など許されない。ここでは、俺は人間以下の存在なのだから。
食事は、彼らが食べ残したパンの欠片や、スープ皿に残った僅かな汁。それが俺に与えられる全てだった。昨夜も、脂の浮いた汚れた皿を舐めるようにして空腹を凌いだ。その惨めな味が、まだ舌の奥に残っている。
「ちっ、役立たずの寄生虫が。お前みたいなのがいるから、俺たちの評価が上がらないんだよ」
ガイアスの吐き捨てるような言葉に、他のメンバーも追従する。
「ほんと、荷物持ちくらいしか能がないんだから、せめて準備くらいは迅速にやってもらわないとね」
「アルがいると空気が淀むのよねぇ」
軽蔑の視線を向けてくるのは、大剣使いのダリオと、魔術師のリナ。彼らもまた、Aランクの実力者だ。
俺はただ、黙って頭を下げ続ける。慣れたものだ。感情を殺し、心を無にすれば、この程度の罵倒はただの音に過ぎなくなる。
俺の仕事は、彼らの荷物をスキル【アイテムボックス】に収納し、運ぶこと。
ただ、それだけの役割。
だが、俺の【アイテムボックス】は初期レベルのままで、容量は絶望的に少ない。おまけに、アイテムを取り出すのには2〜3秒のタイムラグまである。
だからこそ、俺は血の滲むような努力を重ねてきた。
限られた容量に一つでも多くのアイテムを詰めるため、ミリ単位で隙間をなくす『空間認識パッキング』。
取り出しの遅延をカバーするため、戦闘の数秒先を予測し、必要なアイテムを事前準備する『戦闘行動予測』。
どこに何をしまったか、数百種類のアイテムの座標を完璧に記憶する『脳内インデックス化』。
これらは全て、このパーティーに貢献するためだけに俺が編み出し、磨き上げてきた技術だ。
だが、その努力に気づく者は、ここには誰もいない。
◆
「よし、今日の目標は15階層だ! 雑魚は蹴散らして、さっさとボス部屋まで行くぞ!」
「「「応っ!」」」
ガイアスの号令一下、俺たちは薄暗いダンジョンへと足を踏み入れた。
重苦しい空気が肌を撫でる。こういう日は、嫌なことが起きる。長年のポーター経験で培われた、俺だけの勘がそう告げていた。
しばらく進んだところで、俺はふと足を止めた。石畳の床。その一枚だけ、僅かに周囲より沈んでいるように見えた。
「ガイアスさん、待ってください。そこ、何か……」
「あぁ? 荷物持ちがでしゃばるな! 黙って俺たちの後ろをついてくりゃいいんだよ!」
「ですが、罠の気配が……」
「うるさい! お前の勘なんかより、俺の勇者スキルの方が百万倍正しいんだよ!」
ガイアスは俺の進言を鼻で笑い、一蹴する。
だが、パーティーの斥候役が念のために床を調べると、その顔色を変えた。
「ガ、ガイアス様! こいつは……高圧電流式の魔力トラップです! 踏んでいたら即死でした!」
「……ふん。俺が先に気づいていたからな。貴様らの注意を促すために、わざとこのゴミに喋らせてやっただけだ。感謝しろよ」
(まただ……)
俺の手柄は、こうしていつも握り潰される。俺が何度パーティーの命を救っても、それは全てガイアスの功績になる。
そんなやり取りの直後だった。
「グギャァァァッ!」
通路の奥から、十数体のゴブリンの群れが姿を現した。
「ちっ、雑魚が! ダリオ、蹴散らせ!」
「お任せを!」
大剣使いのダリオが前に出る。だが、敵の数が多すぎた。数体のゴブリンがダリオの防御をすり抜け、側面から汚れた剣を振りかぶる。
(まずい!)
俺の脳が瞬時に未来を予測する。
(あの角度からの斬撃は避けられない! 0.5秒後、ダリオさんの右肩に被弾! 傷は深い! 即座に回復薬(ポーション)が必要になる!)
思考と同時に、俺は行動を開始していた。
脳内インデックスからポーションの座標を瞬時に引き出し、【アイテムボックス】にアクセスする。
(スキル発動から取り出し完了まで、約3秒! ダリオさんが被弾し、痛みで体勢を崩すタイミングに、完璧に合わせる……!)
「ぐあっ……!」
予測通り、ダリオの呻き声が響いた。彼の右肩から、鮮血が迸る。
その瞬間、俺の掌にひんやりとしたガラス瓶が出現した。
「ダリオさん!」
俺は叫びながら、ポーションを正確無比なコントロールで彼の胸元へと投げ渡す。
「なっ!? アル……!」
驚きながらも、ダリオは咄嗟にそれを受け取り、一気に飲み干す。傷口が淡い光に包まれ、見る見るうちに塞がっていく。
体勢を立て直したダリオは、怒りの一閃で残りのゴブリンを薙ぎ払った。
「ふぅ……助かったぜ、アル」
ダリオが俺に感謝の言葉を口にしようとした、その時だった。
「ダリオ! 俺の指示通り、懐に入れておいたポーションを上手く使ったな! さすがは我がパーティーの剣だ!」
ガイアスが、さも自分の手柄であるかのように大声で喧伝する。
ダリオは一瞬、何か言いたげに俺の方を見た。だが、ガイアスの威圧的な視線に射抜かれ、すぐに口をつぐんでしまう。
結局、俺のサポートはまたしても無かったことにされた。
(分かってるさ。あんたが逆らえないことくらい……)
俺は小さく息を吐き、再び心を閉ざす。
どうせ、これが俺の日常だ。期待するだけ無駄なのだ。
その日の探索を終え、野営地で火を囲む。今日の稼ぎはそこそこだったが、ガイアスは不満そうに舌打ちした。
「ちっ、こんな雑魚ばかりじゃ話にならん。時間ばかり食って、実入りが少なすぎる」
彼は不意に立ち上がると、不敵な笑みを浮かべて言い放った。
「決めたぞ。明日は一気に階層を下げて、高難易度ダンジョン『奈落の迷宮』に挑む!」
その名を聞いた瞬間、パーティーの面々の顔が引きつった。
『奈落の迷宮』。
それは、数多のSランクパーティーですら生還が難しいと恐れられる、最悪のダンジョン。
俺の背筋を、氷のように冷たい汗が伝った。
(ダメだ……)
この男たちと、あの迷宮にだけは行ってはならない。
行けば、確実に死ぬ。
俺の勘が、これまでで最も強く、最悪の警鐘を鳴らしていた。
だが、俺にそれを拒否する権利など、あるはずもなかった。
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