第6話 久しぶりの外

 避難施設から離れ、外に食材探しに行くことを決めた真央は準備をしていく。


「ここに戻ってこれる確証も無い…というか瓦礫がなくなったらこの避難施設に籠る意味もないですね~。じゃあ、外で使えそうな物以外は食べちゃいま~す」


 瓦礫に守られていたのでこの避難施設は安全であった。しかし外に出るためには瓦礫を撤去する必要があり、そうなればこの避難施設の安全性は失われる。

 そのため真央はここにはもう戻って来ないつもりで、残っている備品などをできる限り平らげてから出ていくことにした。


「よ~し。お残しはありませんね~。それじゃあ瓦礫の撤去に取り掛かりましょう~」

 

 避難施設での最後の食事を済ませた真央は、がらんとした避難施設を見渡しながら残飯が無いかの確認も終える。そうしたら後はここから出ていくだけである。


「せ~の。てや~!」

 

 気の抜けた掛け声とともに瓦礫に向かってパンチをする真央。掛け声とは裏腹に凄まじい轟音を立てて吹き飛んでいく瓦礫。


「おお。私、めっちゃパワフルかも~!」


 瓦礫運びなどでステータスが上昇していた事は分かっていたが、ここまで化物じみたステータスとなっているとは本人も気付いておらず、吹き飛んでいく瓦礫を見ながら真央は驚きの言葉を放つ。

 これならば外にいるモンスターたちとも戦えるという希望が湧いてくる。


「瓦礫さん~。ありがとうございました」


 吹き飛ばした瓦礫にお礼を残し、真央はその場を離れるのであった。


◆◆◆

 

「さ~て、今が何日なのかは分かりませんが、夜なのに明かりが見えない事から少なくともモンスターの脅威は続いてる筈ですよね~」


 外と隔絶された空間で好き勝手に食っちゃ寝をしていただけのため、あの日から正確な日付や時間は分からないが、現在は夜。

 それなのに街灯や建物の光も見えないことから、電気の供給は絶たれたままなのだろう。


「そうなると…人が集まっている場所に行くべきでしょうね。後から合流となると問題が生じる可能性もありますが、『なんでも料理』があれば少なくとも邪魔者扱いは…」


 モンスターの脅威度がどの程度であるかは不明だが、ある程度の人数で固まっていた方が安全だ。

 幸い真央には料理を産み出し、条件付きとはいえガスや水道を使えるスキルを持っている。食い扶持も増えるから厄介払いされるなんてお決まりのパターンにはならないだろう。


 そう考えた真央は、ここら辺で人が集まっていそうな場所を次の目的地に定めようとした。

 

「それなら、まずは皆が集まれそうな場所に――

「だ、誰か、助けてぇぇぇ!!」

「悲鳴!」


 しかし、その最中に悲鳴が聞こえてくる。

 その悲鳴のする方を振り向くと、そこには狼男に襲われそうになっている男性の姿が見えた。

 その瞬間、真央は駆け出していた。

 真央のステータスは、力や耐久力と同様に素早さも向上していた。

 そのため爆速で接近し、男性が狼男に襲われるよりも前にモンスターたちの元に駆け付ける事ができた。しかし、


「あ、まずい! 止まれませ~ん」

「ガルルゥ。ガッ――」


 予想以上の敏捷性に、制御不能に陥った真央はそのまま狼男に体当たりをかます。

 一般的な女子高生の体当たりならば大したことはないが、瓦礫食でカチンコチンになっている真央が爆速ですっ飛んできたのだ。

 狼男は体当たりで吹き飛ばされ、そのまま絶命した。


「…ふぅ。結果良し!」

「え、えぇ…」


 突然すっ飛んできた女の子が、モンスターを引き殺して助けてくれた事に、命の危機を脱した喜びよりも困惑が勝る男性なのであった。

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