第5話 魔力

 簡易厨房が使えるようになったことで、真央が作れる料理の幅が相当広がった。


「『瓦礫のステーキ』『炒礫』『ゆで綿』っと。かなり作れましたね~」


 調理中であれば火と水が自由に使えるというのが大きい。焼く、炒める、茹でる、煮るなどの基本的な調理法が使用可能なのは大きい。


「後はステーキを適当な大きさに切ってっと~」


 また厨房に揃えられた調理器具も素晴らしい。

 手で千切れるような食材にはどう頑張ってもイメージ出来ずに、そのままの状態に砂をまぶして食べていたような物を包丁で一口大に切るなんて事も可能となった。

真央の『なんでも料理』はレベルアップしたことにより、原始的な料理しか作れない段階から現代的な料理も作れる段階に進歩したのであった。


 そんな更に破格の効果となった『なんでも料理』であるが、難点など1つもない完全無欠なスキル、という訳ではなく難点はしっかりと存在する。


 1つは先ほど水分補給に『なんでも料理』を使用しようとした時に簡易厨房が消えてしまったように、調理中の判定が厳密である点。そして、


「あ~、…まだ煮込み料理を作ってる途中だったのに」


 もう1つは、説明欄にも記載があったが、簡易厨房を維持するには相応のコスト、魔力が必要という点である。

 簡易厨房を使用し調理しているとおよそ2、30分ほどが経過した段階で真央の魔力が尽きてしまい、それに伴って簡易厨房も消えてしまう。

 しかも水道やガスを使うのにも魔力を消費するため、それらを使い過ぎると簡易厨房の維持時間は更に短くなってしまう。


「これじゃあ、じっくりことこと煮込んだりは難しそうですね~。休息を取れば回復はしますけど流石に」


 検証の結果、魔力は食事や睡眠といった休息行為によって回復することが分かっている。

 とはいえ十数分調理して休んでを繰り返し料理を作るというのは無理がある。

 となると真央が満足できるようなちゃんとした料理を作るためには、簡易厨房を長時間維持できるだけの魔力が必要である。


「つまりは魔力を増やさなくちゃいけない訳ですが…ここにある物の殆んどは使っちゃったんですよね~。まあそもそも魔力を上昇させる食材が何か検討もつかないですが」

 

 真央としては簡易厨房の豪華さを見て、もう少し大掛かりな料理にも挑戦してみたい欲がどんどん湧いてきている。

 瓦礫などをバクバクと食べた事で肉体的なステータスが十分上昇したというのもあり、魔力を高めることが最優先事項であろう。

 ただ残念なことに、『悪食を極めし者』や簡易厨房の検証で、避難所内にある物の殆んどは調理済みである。

 残っている物は外で使う用の物品と出入り口を塞いでいる瓦礫くらいのため、この避難施設で魔力を増やすことは難しそうだ。 

 

「私もそろそろ、この瓦礫を食べ尽くして外に食材を求めるターンに来たってことですか?」


 そのため終末を迎えた世界においてかなり遅めではあるが、真央は避難施設を出て外に食料を探しに出かける決意を固めるのであった。

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