魔法少女リハビリセンター
観音寺一織
魔法少女医療福祉センター
プロローグ
この国で猛威を振るいつづける魔法災害、通称魔災。
それは様々な形で人々の生活を苦しめてきた。
たとえば魔獣。
負のエネルギーをもつ魔素(以下邪素)が体内に溜まった生物は邪素に身体を支配され、狂暴化する。
この際生命としての活動はすでに終えており、簡潔に説明するとゾンビ化していると言った方がわかりやすい。
次に魔法現象事故。
こちらは事故というよりも魔法に由来する自然災害といった認識が正しいだろう。
地震・津波・台風・山火事など自然発生する災害に邪素が介入することによって脅威が増し、被害の規模はこちらの方が大きい。
特に3年前に発生した北日本大災害は記憶に新しく、最も被災者が多い魔災として記録されている。
これらに対抗するにあたって現代兵器では有効打に欠けるのだが、この時必要なものが魔法である。
ご存知の通り魔法を扱えるのは体内にオドを持つ成人前の女性だけであるため、政府公認の魔法災害対策委員会直属機関、魔法少女連合(魔少連:Magical Girl Union )がこの国の安全を担っている。
時は平安のころから姿や形を変えてこの国の平和を守り続けてきた由緒正しい伝統であり、魔法少女とは希望の象徴。
国の情操教育の影響で女の子は誰もが魔法少女に憧れるようになり、周りの大人もそれを奨励し続けてきた。
しかし、現実は時に残酷なものである。
なぜなら魔法とは奇跡を意味するものではないからだ。
空を飛べる。ビームを放てる。バリアを張れる。
そのどれもがただの現象に過ぎない。
マナやオド、エレメントなどが研究で明らかになるにつれ、魔術は科学に堕ちた。
未だ謎が多く残されてはいるが、アニメやマンガの中で描かれているそれとは明らかな違いがあるのは自明であろう。
魔法少女というなんともメルヘンな響きに騙されてはいけない。
彼女たちはただの公務員、さらに言えば兵隊に過ぎないのだから。
無論、政府が彼女たちを粗雑に扱うことはない。
しかしながら、厳しい任務の最中に怪我や大病を患ったり、中には命を落とす者もいる。
本来ならば心身共に発達途上である彼女たちだが、魔法少女としての活動が原因でその後の社会復帰が困難な者も多い。
そうした少女たちを支援するのが魔法少女医療福祉センター(通称:魔法少女リハビリセンター)。
トラウマを抱える魔法少女に適切な処置を施し、社会復帰を促す場所だ。
医療機関としての側面が強いのだが最近は教育支援にも力を入れており、年代のばらつきが大きい少女たちに平等な教育機会を与えられるようになっている。
館内は医療行為を行う病棟やスポーツを行う運動施設に授業を行う校舎、そして少女たちが日常生活を送る居住スペースに別れており、過去に魔法少女を経験した者を再雇用して働き口を担うなど、多くの社会的意義がある。
この施設には日々多くの少女が出入りし、早ければ数週間で退院するものもいれば、学生時代をここで終える者もいる。
少女たちがそんな不幸な結末を迎えることがないように、大人たちは自分の役割を果たすよう努めるのだ。
いつの日か彼女たちに頼らずとも、平和な明日を実現することを夢見て。
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