2. 夢の中の図書館


その夜、あかりは不思議な夢を見た。


地下へと続く、長い石の階段。


導かれるように階段を降りていく。何段あるのか分からない。永遠に続くかのような階段。


やがて、重厚な扉の前に辿り着いた。


扉には、月と星の形をした鍵穴がある。まさに、今日拾った鍵にぴったりの形だった。


夢の中で、あかりは鍵を差し込んだ。


カチリ。


扉が開く。


そして──


「なんて…」


息を呑んだ。


目の前に広がったのは、想像を絶する光景だった。


天井まで届く無数の本棚。それが見渡す限り続いている。本棚と本棚の間には浮遊する本があり、ゆっくりと宙を舞っていた。床には複雑な魔法陣が描かれ、淡く光を放っている。


そして何より驚いたのは、天井だった。


天井は存在しないかのように透明で、その向こうには満天の星空が広がっていた。まるで、宇宙の中に図書館があるかのよう。


「図書館…?」


夢の中で、あかりはそう呟いた。


その時、三つの影が現れた。


黒い影、茶色い影、銀色の影。


三人の人物のシルエット。でも、顔は見えない。


『さあ、選べ』


声が響いた。


『君は誰と共に、この物語を紡ぐ?』


三つの影が、手を差し伸べてくる。


あかりが手を伸ばそうとした瞬間──


目が覚めた。


「夢…?」


朝の光が部屋に差し込んでいた。いつもの自分の部屋。いつもの朝。


でも、枕元には昨日拾った鍵が置かれていた。


そして鍵は、朝日を浴びて眩しいほどに輝いていた。

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