第31話 親方、ダンジョンを魔改造する1

恨みや心残りに縛られ、現世を漂う魂。

それらを救済するための試練の場こそが、ダンジョンであることが明らかになった。


ダンジョン主は、自らが支配するダンジョンの管理・運営に励み、幾つか存在する達成条件を満たすことで、その魂を解放される。

そして新たな存在として、自由を手にすることができるのだ。


ひょんなことから大吉ファミリーの存在を知り、消滅寸前まで追い詰められていた一体のダンジョン主。

その切実な願いを聞き入れ、手を差し伸べたのが大吉だった。


性根を叩き直し、あわせてダンジョン運営そのものを立て直す。

そう腹を括った、その矢先──


再び、空中に新たな画面が立ち上がる。



『ユニット名 ___ を特別採用したことにより、新たな技能が解放されました。


・投資を直ちに使用可能な状態にしますか?


YES / NO


数値:1

消費OP:200』



「……また変なのが出てきたぞ?

投資とはなんだ? まさか詐欺じゃなかろうな」


「よくもまぁ、次から次へとおかしな選択を迫ってきやがるな……

親方じゃねぇが、これじゃ振り込め詐欺みてぇじゃねぇかよ」


「だな。

なんでもかんでもOPを使わせりゃいい、みたいな流れはどうにかならんのか?

このままじゃケツの毛まで毟られちまいそうだぞ」


「ほんとそれ。

だが──一つ分かったことがあるぜ」



サクヤが画面を睨みながら続ける。


「恐らくこの選択肢……いや、“投資”って技能は、特別採用を選ばなきゃ出てこなかったはずだ」


「相変わらず冴えてやがるな。

言われてみりゃ、まったくその通りだ」


「って事で」


「ここも一択」



『YES』

『ordinary matter(日常・一般系技能)

 投資──がアクティブになりました。

 今後、OPを消費することで、ダンジョン内での作業が可能となります』


「か~~、そういうことか」


大吉は膝を打つ。


「このポンコツ……もとい!

コイツをどう手助けしてやるか──

皆目見当もつかなかったのだが……

これで目算がたったな」


「おう。

これなら今まで通り、親方が突っ走ればどうとでもなりそうだぜ」


「よし!

しからば──ワシのペースで、ドシドシ進めていくとしようか!」

大吉はそう言うと、頭にタオルを巻き、ヘルメットを装着した。

 今まさに作業を開始しようとした、その時──


「ちょい待ち!」


 サクヤから制止がかかる。


「ったく、てめぇはせっかちで困るぜ。

 作業を始める前に、やらなきゃならねぇことがあるだろうがよ」


「なぬ? 準備体操とか?」


「てめぇの頭ん中はお花畑か!

 名前だよ、名前。いつまでも“コイツ”じゃ締まらねぇってんだ。

 それに、さっきみてぇに慌てて言い直す必要もなくなるだろ」


「それもそうだ!

 んじゃトカゲ小僧でどうだ?

 ……いや、いいおっさんだからトカゲおやじが妥当か」


「……何も言えねぇ。

 オイラもう疲れたぜ。

 他だ、他。ちっとは付けられる側の気持ちになれってんだよ」


「やはり安直すぎたか……。

 トカゲのダンジョン主だから──トカちゃんでどうだ?」


「オイオイ。

 愛称じゃねぇんだから“トカちゃん”はねぇだろ。

 しかもその流れなら、“トカジョン”とかボケるとこだぞ?」


「何を失礼な!

 ワシは至って真面目だ。ボケるつもりなど毛頭ない!」


「それが一番どうしようもねぇんだがな……」


「そんなに言うならサクヤ、てめぇが名付けてやれ!」


「とうとうぶん投げやがったな?

 上等だ、オイラが考えてやらぁ」


 サクヤは腕を組み、しばし思案する。

 ブツブツと呟いているのは、それだけ真剣だからなのだろう。


「──閃いた。

 “かいせい”でどうだ?

 起死回生から取ってみたぜ」


「それだ!

 まさにワシが名付けようとしていた名前と一緒だ!」


「ほんと調子いいんだからよ、親方は。

 “かいせい”、今日からそれがお前の名前だぜ!」


「ありがとう。

 名前負けしないよう、頑張るじゃんよ~!!」


「よし!

 少し手間取ったが、今度こそ始めるとするか!」


「──まだ待て。

 まだ大切なことが一つ、抜け落ちてる」


「なに?」


「つまりだな……

 “達成条件”ってのが一体何なのか、って話よ」


「そりゃ大変なことを聞き忘れてたな。

 危うく、目的も知らずに突っ走るところだったぜ」


「ほんとおめでてぇよ、お前さんはな。

 で、どうなんだ?」


 サクヤが“かいせい”を見据える。


「どうすりゃ、お前は自由になれるんだ?」



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