第3話 幽閉の籠鳥
決定が下されてから、アークの扱いは奇妙なものに変わった。
父ライナスは、アークを「帝国へ嫁ぐ者」として体裁を整えるよう指示した。豪華な衣装、質の良い食事、そして形式的な教育——しかし、その実態は幽閉に近かった。
「お前は結納金と交換される品に過ぎん。帝国へ行って、我がルミナス家を辱めるような真似だけはするな」
ライナスはそう言い放った。彼の態度は、以前にも増して冷酷だった。アークはただの人身御供として、遠い異国へ送られるのだ。
セドリックは嫉妬のような視線を向けた。
「兄さんは無能なのに、僕たちの人生を優に超えるほどの財産と交換される。つくづく運がいいのか、悪いのか」
リリアは憐れむような目でアークを見た。
「お兄様、遠い国へ行っても、その小さな力は隠しておいた方がいいわ。そうでなければ、帝国の冷酷な人々に嘲笑されるだけよ」
アークは彼らの言葉に何も感じなかった。長年の冷遇によって、彼の心はすでに麻痺していた。
彼はただ静かに、庭の隅にある一本の病んだ木に触れていた。誰も見向きもしない瀕死の木だ。
「僕の力は一輪の花しか癒せない。だけど、この小さな力でも、誰も見向きもしないものを確かに救うことができる」
彼はその木に、自分の力のすべてを注ぎ込んだ。一晩かけて、その木はゆっくりと青々とした葉を取り戻し始めた。
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