ステラと現在
ステラは自室に帰ってすぐテーブルに着き、指輪を眺めながら自身の立ち位置を確認した。
ラドーセル王国在住で伯爵位のカーティ家の長女。十歳。暗い紺色の瞳に鈍色の髪。
兄と妹がいて、五つ年上の兄の【カミル】は跡継ぎで父の関心は兄に向き、妹の【アリス】は三歳差で小さい頃とても体が弱かったため母の関心は妹に向いていた。
特に妹は、母の明るい白銀の髪色と父の鮮やかなラベンダー色の瞳で可愛らしい顔立ちをしていた。
兄は紺色の瞳にキャラメル色の髪だ。
ステラは、初めのうちは構ってほしい!という気持ちもあり、癇癪を起こしたり、問題行動をしていたが、それも次第に薄れていき、別に衣食住が脅かされないならいいかと現在は諦めている。
前世を思い出し、比べてみると以外と似たようなもので、逆に地方(領地)にいるし毎日集団生活をして人間関係に困らされてないなら良くない?と気がついた。
考えた結果、今のところ何も気にするべき事はないことがわかったステラは、早速手に入れた指輪をにつけることにした。
そのタイミングで扉がノックされ、侍女が部屋に入ってきた。
侍女は名をミリィという。
ミリィは、明るい茶色の髪にオレンジ寄りの黄色い瞳、年は16である。
小さい頃からステラに仕えている。
「お嬢様、お帰りなさいませ。お茶を用意しました」
「ミリィ、ただいま。指輪って着ける指、決まってないよね?」
「そうですね。お好きな指でよろしいかと。魔法の指輪ですから、サイズは自動でかわりますし」
ミリィの返事を聞いて、ステラは左手の中指にはめた。
しゅるり、と指輪のサイズがかわり、ぴったりにはまる。
「カルテ」
呪文を唱えると目の前のテーブルの上に渋い茶色の本が現れた。
早速表紙を捲ろうとしたステラだったが、ミリィに止められた。
「お嬢様。お茶が冷めます」
今淹れたばかりのお茶は湯気が立っており、冷めるのはまだまだ先に見える。
「お嬢様の場合読み始めたら区切りを着けるのが難しいと思われます。先に休憩しましょう」
ステラは、活字中毒まではいかないが、読む事が苦にならず、長時間読むであろう自覚があったのでミリィの言葉を受け入れる事にした。
ステラは、【パスリーレ】と唱え魔道書をしまい、領地の特産であるグリーンハーブティを『これ、緑茶だ』とのんきに考えながら口をつけたのだった。
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