第4話:上級の壁

第一幕:9歳のガイア、さらなる鍛錬


1年が経った。

ガイアは9歳になった。

朝。

庭でトレーニングをしている。

腕立て伏せ。200回。

スクワット。400回。

プランクは10分。

休憩を取り、呼吸を整える。

(順調だ)

ガイアが呟く。

体を見る。

以前よりさらに大きい。

筋肉がはっきりと盛り上がっている。

上腕二頭筋、大胸筋、腹筋。

すべてが成長している。

(この1年で筋肉量が20%増加した)

(体重は35kg)

(筋肉の密度も上がっている)

拳を握る。

(この筋肉と技術で、上級モンスターを狩る)

父親が庭に出てくる。

「おはよう、ガイア」

「おはよう」

父親がガイアを見る。

「また大きくなったな」

「ああ」

ガイアが頷く。

「毎日鍛えている」

父親が微笑む。

「見ればわかる」

近づく。

「ガイア」

「何だ?」

「上級モンスター狩りだが」

父親が真剣な顔で言う。

「もう少し準備が必要だ」

ガイアが首を傾げる。

「準備?」

「ああ」

父親が説明する。

「上級モンスターは中級とは違う」

「力だけじゃない」

「速さだけじゃない」

「知能がある」

「知能……?」

「ああ」

父親が頷く。

「罠を使う」

「フェイントを使う」

「そして弱点を突いてくる」

ガイアは考える。

(知能のあるモンスター……)

(つまり戦術が必要だ)

父親が続ける。

「だから今日から」

木剣を取り出す。

「実戦訓練だ」

「本気でやる」

ガイアの目が輝く。

「本気……?」

「ああ」

父親が構える。

「お前を本気で倒しにいく」

「上級モンスター相手なら、それくらいの覚悟が必要だ」

ガイアは拳を握る。

「わかった」

構える。

(父さんの本気……)

(1年前はまったく歯が立たなかった)

(でも今は違う)

(俺は成長した)

父親が動く。

速い。

今までで最速。

木剣を振る。

ガイアは横に跳ぶ。

避ける。

だが父親はすぐに次の攻撃。

連続で木剣を振る。

上段、中段、下段。

ガイアは必死に避ける。

(速い……!)

(でも見える)

父親の木剣がガイアの肩をかすめる。

浅い傷。

血が出る。

「くっ……」

だが止まらない。

反撃。

拳を放つ。

7割の力で。

父親の脇腹を狙う。

父親は木剣で防ぐ。

ガン。

だがガイアはすぐに次の攻撃。

連続で拳を放つ。

ストレート、フック、アッパー。

父親はすべて防ぐ。

だが後ろに下がる。

(押してる……?)

ガイアは間合いを詰める。

だがその時、父親が動きを止める。

突然。

(え……?)

ガイアが困惑する。

その瞬間、父親が低く構える。

そして足払い。

ガイアの足を狙う。

(しまった……!)

ガイアが倒れる。

地面に叩きつけられる。

ドン。

痛い。

父親が木剣を突きつける。

ガイアの喉元に。

「終わりだ」

沈黙。

ガイアは呼吸を整える。

(負けた……)

(フェイントだ)

(動きを止めて油断させた)

父親が木剣を下ろす。

「これが知能だ」

手を差し伸べる。

「力だけじゃ勝てない」

「速さだけじゃ勝てない」

「相手を騙す」

「それが上級の戦いだ」

ガイアは手を取る。

立ち上がる。

(知能……)

(戦術……)

(これが必要なのか)

父親が微笑む。

「もう一度やるか?」

ガイアは頷く。

「ああ」

拳を握る。

「今度は騙されない」

父親が構える。

「じゃあ、来い」

訓練が再開する。


1週間が経った。

毎日、父親との実戦訓練。

フェイント、罠、駆け引き。

すべてを学ぶ。

そしてガイアは少しずつ対応できるようになった。

父親のフェイントを見抜く。

罠を回避する。

自分からフェイントを仕掛ける。

父親が満足そうに頷く。

「いいぞ、ガイア」

「だいぶ成長した」

「そろそろいけるか」

ガイアは拳を握る。

「ああ」

「じゃあ」

父親が立ち上がる。

「明日、東の山へ行く」

「東の山……?」

「ああ」

父親が真剣な顔で言う。

「上級モンスターの巣だ」

ガイアの心臓が高鳴る。

(ついに……)

(上級モンスター……)

拳を見る。

(この筋肉で挑む)


第二幕:上級モンスターとの遭遇


翌日。

朝。

ガイアと父親は村を出る。

東へ。

山へ。

母親が見送る。

「気をつけてね」

「ああ」

ガイアが頷く。

「必ず帰ってくる」

母親は不安そうだ。

「上級モンスターって……本当に大丈夫なの?」

父親が答える。

「俺がいる。大丈夫だ」

母親は頷く。

だが心配そうだ。


山道を歩く。

険しい道。

岩が多い。

木々が密集している。

父親が立ち止まる。

「この辺りだ」

小声で言う。

「静かにしろ」

ガイアは頷く。

周囲を観察する。

(気配が……違う)

(重い)

(プレッシャーがある)

父親が前を指さす。

「見ろ」

洞窟がある。

大きな洞窟。

入口が暗い。

「あれが巣だ」

父親が説明する。

「中に上級モンスターがいる」

「何のモンスターだ?」

「オーガだ」

ガイアが目を見開く。

「オーガ……」

父親が頷く。

「巨人型モンスター」

「身長3メートル」

「筋肉質で力が強い」

「そして知能がある」

ガイアは緊張する。

(オーガ……)

(巨人……)

(筋肉質……)

拳を握る。

(つまり高タンパク質だ……!)

父親がガイアを見る。

「……お前、今何を考えた?」

「タンパク質のことを」

父親がため息をつく。

「相変わらずだな」

「でも」

真剣な顔で言う。

「今回は俺も一緒に戦う」

「一緒に……?」

「ああ」

父親が剣を抜く。

「オーガはお前1人じゃ無理だ」

「俺がサポートする」

「お前は攻撃に専念しろ」

ガイアは頷く。

「わかった」

父親が洞窟に近づく。

ガイアもついていく。

足音を消して。

洞窟の入口。

暗い。

中から音が聞こえる。

重い足音。

荒い呼吸。

「いるな」

父親が呟く。

「行くぞ」

洞窟に入る。

暗闇の中。

徐々に目が慣れる。

奥に何かがいる。

大きな影。

ガイアが見る。

巨人。

身長3メートル。

筋肉質な体。

太い腕。

大きな手。

顔は醜い。

牙が生えている。

「オーガだ」

父親が小声で言う。

オーガが気づく。

こちらを見る。

赤い目。

殺意に満ちている。

「グオオオォォォ!」

吠える。

洞窟が揺れる。

オーガが動く。

こちらに向かってくる。

速い。

巨体なのに速い。

父親が前に出る。

「ガイア、右から回り込め!」

「わかった!」

ガイアは右に動く。

オーガが父親に向かう。

拳を振り下ろす。

巨大な拳。

父親は横に跳ぶ。

避ける。

地面に拳が叩きつけられる。

ドガァン。

岩が砕ける。

(すごい力……!)

ガイアは回り込む。

オーガの背後へ。

そして拳を放つ。

7割の力で。

オーガの背中を狙う。

ドン。

当たる。

だが。

オーガは動じない。

振り向く。

ガイアを見る。

「グルル……」

腕を振る。

巨大な腕。

ガイアに向かって。

ガイアは後ろに跳ぶ。

避ける。

だが腕が壁に当たる。

ドガン。

壁が砕ける。

岩が飛んでくる。

ガイアは腕で防ぐ。

痛い。

(硬い……!)

(7割じゃ効かない……?)

父親が攻撃する。

剣を振る。

オーガの腕を狙う。

剣が当たる。

だが浅い傷。

オーガが怒る。

父親に向かう。

拳を振り下ろす。

父親は避ける。

だが地面が砕ける。

衝撃で父親がよろめく。

「くっ……」

オーガが追撃する。

もう一度拳を振り下ろす。

父親は剣で防ぐ。

ガキン。

衝撃。

父親が後ろに吹き飛ぶ。

壁に激突。

「父さん!」

ガイアが叫ぶ。

オーガがガイアを見る。

笑っている。

醜い笑顔。

「グフフ……」

知能がある。

状況を理解している。

父親が倒れた。

残りは子供1人。

オーガが近づく。

ゆっくりと。

余裕がある。

ガイアは構える。

(父さんが……倒れた)

(俺1人だ)

拳を握る。

(でも)

(逃げない)

(戦う)

オーガが拳を振り上げる。

振り下ろす。

ガイアに向かって。

ガイアは横に跳ぶ。

避ける。

地面が砕ける。

ドガン。

すぐに反撃。

拳を放つ。

今度は10割。

全力。

オーガの腹を狙う。

ドゴン。

当たる。

オーガがよろめく。

(効いた……!)

だが倒れない。

オーガが怒る。

本気になる。

両手を振り上げる。

叩き潰すつもりだ。

ガイアに向かって。

振り下ろす。

ガイアは避けようとする。

だが速い。

避けきれない。

(しまった……!)

その時、父親が動く。

剣を投げる。

オーガの目を狙う。

剣がオーガの目に当たる。

「グアアアァァ!」

オーガが叫ぶ。

攻撃が止まる。

ガイアは間一髪で避ける。

(父さん……!)

父親が立ち上がる。

血を流している。

だが動ける。

「ガイア!今だ!」

「わかった!」

ガイアは踏み込む。

全力で。

オーガが目を押さえている。

隙だらけ。

ガイアは拳を引く。

深く。

全身の筋肉を収縮させる。

大腿筋、臀筋、腹筋、背筋、大胸筋。

すべてを連動させる。

そして放つ。

ストレートパンチ。

全力の一撃。

オーガの顎を狙う。

ドガァァン。

衝撃。

オーガの頭が跳ね上がる。

そして倒れる。

地面に激突。

ドシン。

洞窟が揺れる。

沈黙。

オーガは動かない。

ガイアは呼吸を整える。

荒い。

汗が流れる。

拳が痛い。

(勝った……?)

父親が近づく。

オーガを確認する。

「……気絶してる」

「いや、死んでる」

ガイアを見る。

「お前の一撃で首が折れた」

ガイアは拳を見る。

血がついている。

自分の血。

オーガの血。

(勝った……)

(上級モンスター……)

(倒した……)

だが疲労が襲う。

膝をつく。

(限界だ……)

父親が肩を叩く。

「よくやった」

「……ありがとう」

ガイアが答える。

父親が微笑む。

「お前、強くなったな」

「本当に」

ガイアは考える。

(でも1人じゃ勝てなかった)

(父さんのサポートがあったから勝てた)

(俺はまだ弱い)

拳を握る。

(もっと強くならなければ)


第三幕:演出部の緊張


異世界演出部。

モニターにはオーガ戦の映像が映っている。

ガイアが全力の一撃でオーガを倒す場面。

田村麻衣はコーヒーカップを握りしめている。

手が震えている。

「……危なかったわね」

呟く。

田中美咲はタブレットを操作している。

「データを確認しました」

画面に数値が表示される。

「ガイア、9歳」

「筋力:上級冒険者レベル」

「技術:中級冒険者・最上位レベル」

「総合:上級冒険者・下位レベル」

「そして」

美咲が付け加える。

「オーガは上級冒険者・中位レベル」

麻衣が驚く。

「ガイアより上……?」

「はい」

美咲が頷く。

「本来、ガイア1人では勝てない相手でした」

「父親のサポートがあったから勝利できました」

サクラがソファで起き上がる。

「筋肉少年、血が出てた……」

心配そうだ。

「大丈夫かな?」

「軽傷です」

美咲が答える。

「拳の打撲と疲労」

「問題ありません」

その時、ノック音がして扉が開き、バルクアップ女神が入ってきた。

だが今回はいつもの笑顔ではない。

真剣な顔だ。

「見ました」

「あら、女神様」

麻衣が言う。

「今日はテンション低いわね」

「当然です」

女神が画面を見る。

「ガイアが危険な目に遭いました」

「オーガの攻撃を間一髪で避けました」

「もし父親のサポートがなければ……」

言葉を濁す。

沈黙。

麻衣が立ち上がる。

「そうね」

「今回は本当に危なかった」

コーヒーを飲む。

冷めている。

「でも勝ったわ」

「成長したのよ、ガイアは」

女神が頷く。

「ええ」

「でも」

拳を握る。

「まだ足りません」

「足りない……?」

「はい」

女神が説明する。

「ガイアの筋力は上級冒険者レベルです」

「でも技術はまだ中級レベル」

「そして」

画面を指さす。

「戦術と知恵がまだ未熟です」

「父親のサポートに頼っています」

美咲がグラフを表示する。

「分析結果です」

画面に数値が並ぶ。

「ガイアが1人で倒せるモンスター」

「上級モンスター・下位まで」

「それ以上はサポートが必要です」

麻衣が胃薬を取り出す。

3錠。

口に入れる。

「……また増えたわね」

美咲が指摘する。

「だって」

麻衣はため息をつく。

「次はもっと強いモンスターに挑むでしょう」

「そうなると」

水を飲む。

「もっと危険になるわ」

女神が言う。

「でもガイアは諦めません」

「目標はドラゴンです」

「Sランクモンスターです」

「そこまで彼は成長し続けます」

麻衣が座る。

「……わかってるわよ」

呟く。

「でも心配なのよ」

「9歳の子が命がけで戦ってるのよ」

サクラが言う。

「でも筋肉少年、楽しそうだよ」

画面を見る。

ガイアの表情。

疲れている。

だが満足そうだ。

「筋肉、育ててる時、嬉しそう」

麻衣が画面を見る。

確かに。

ガイアは楽しそうだ。

戦いを楽しんでいる。

成長を楽しんでいる。

「……そうね」

麻衣が微笑む。

「本人が幸せなら」

「それでいいのかもね」

美咲がタブレットを操作する。

「次の展開ですが」

画面にシナリオが表示される。

「ガイアはさらなる訓練を続けます」

「目標は10歳でドラゴン討伐」

「あと1年です」

麻衣が驚く。

「1年……?」

「はい」

美咲が説明する。

「現在の成長速度を維持すれば」

「10歳でSランク冒険者レベルに到達します」

「そしてドラゴン討伐が可能になります」

女神が拳を握る。

「素晴らしい!」

「1年後、ガイアの夢が叶います!」

「ドラゴン!高タンパク、低脂肪!最高の筋肉食材!」

麻衣は胃薬をもう1錠飲む。

「……もういいわ」

美咲がタブレットに記録する。

「Case File ○、第4話・第三幕終了」

「次回、10歳」

「ドラゴン討伐編」

サクラは横になる。

「筋肉少年、がんばって」

「ドラゴン、食べられるといいね」

呟いて、寝る。

女神はモニターを見つめる。

「ガイア」

「あと1年」

「君の筋肉は最終形態に達する」

「そしてドラゴンを食べる」

うっとりと。

「楽しみだわ」

麻衣は立ち上がる。

「……さて、帰るわ」

「明日も大変そうだし」

胃薬のボトルを握りしめる。

「多めに買っておかないと」

扉が閉まる。

静かなオフィス。

モニターにはガイアの姿。

拳を握り、オーガの巨体を見上げている。

次の目標に向かって。


第四幕:新たな決意

家に戻る。

夕方。

母親が駆け寄る。

「ガイア!大丈夫!?」

「ああ」

ガイアが頷く。

「無事だ」

母親がガイアの手を見る。

包帯が巻かれている。

「怪我……」

「大丈夫だ」

ガイアが答える。

「軽傷だ」

父親も帰ってくる。

血を流している。

母親が驚く。

「あなたも……!」

「俺も大丈夫だ」

父親が微笑む。

「ちょっとやられただけだ」

母親が涙ぐむ。

「危険すぎるわ……」

「上級モンスターなんて……」

父親が抱きしめる。

「でも勝った」

「ガイアは成長した」

「これも必要なことなんだ」

母親は頷く。

だが涙が止まらない。


夕食。

モンスター肉のステーキ。

オーガの肉だ。

父親が解体して、持ち帰った。

ガイアは肉を食べる。

噛む。

(これは……)

味が広がる。

濃厚で力強い味。

(タンパク質含有量、約40g/100g)

(脂質、12g/100g)

(グレイウルフより高タンパク)

飲み込む。

(最高だ)

(これが上級モンスターの肉)

だが心の中で考える。

(でも今回は危なかった)

(1人じゃ勝てなかった)

(父さんがいなければ、俺は死んでいた)

拳を握る。

(まだ弱い)

(もっと強くならなければ)

父親がガイアを見る。

「ガイア」

「何だ?」

「今日の戦い、どうだった?」

ガイアは正直に答える。

「難しかった」

「1人じゃ勝てなかった」

「父さんのサポートがあったから勝てた」

父親が頷く。

「そうだな」

「お前はよくやった」

「でもまだ足りない」

ガイアは考える。

「何が足りない?」

父親が説明する。

「経験だ」

「お前は強くなった」

「筋肉も技術も」

「でも戦いの経験がまだ少ない」

「だから」

父親が微笑む。

「これから1年」

「もっと戦え」

「もっと経験を積め」

「そうすれば」

真剣な顔で言う。

「10歳でドラゴンに挑める」

ガイアの目が輝く。

「ドラゴン……」

「ああ」

父親が頷く。

「お前の最終目標だ」

「Sランクモンスター」

「世界最強の高タンパク食材」

ガイアは拳を握る。

「1年……」

「それまでにもっと強くなる」

「筋肉を育てる」

「技術を磨く」

「経験を積む」

「そして」

空を見上げる。

「ドラゴンを食う」

父親が微笑む。

「ああ」

「一緒に行こう」

母親が言う。

「でも無理しないでね」

「わかってる」

ガイアが答える。

「命を大事にする」

「筋肉も大事にする」

母親が笑う。

「相変わらずね」

「でも」

微笑む。

「強くなったわね」

ガイアは頷く。

「ああ」

「これからも成長する」


翌日。

朝。

ガイアがトレーニングをしている。

腕立て伏せ。250回。

スクワット。500回。

プランクは15分。

いつもより多い。

(1年後、ドラゴンに挑む)

(それまでに限界を超える)

休憩。

呼吸を整える。

父親が庭に出てくる。

「おはよう、ガイア」

「おはよう」

父親が座る。

「ガイア」

「何だ?」

「これから1年」

父親が説明する。

「毎月、上級モンスターを狩りに行く」

「色んな種類のモンスターと戦う」

「そうやって経験を積む」

ガイアは頷く。

「わかった」

「そして」

父親が微笑む。

「10歳の誕生日に」

「ドラゴンに挑む」

ガイアの心臓が高鳴る。

「本当か……?」

「ああ」

父親が頷く。

「約束する」

ガイアは拳を握る。

「ありがとう、父さん」

「いいや」

父親が立ち上がる。

「お前が頑張ったからだ」

「俺は見守ってきただけだ」

肩を叩く。

「これからも頑張れ」

「ああ」

ガイアは立ち上がる。

「必ず強くなる」

空を見上げる。

青い空。

雲が流れる。

(あと1年)

(1年後、ドラゴンに会える)

(そして食べる)

拳を握る。

(この筋肉で必ず)

決意する。


第五幕:1年間の成長、そして10歳


1ヶ月後。

ガイアと父親は西の森へ。

上級モンスター、フェンリル狩り。

狼型の巨大モンスター。

体長4メートル。

速く、賢い。

戦闘。

ガイアは間合いを測る。

フェイントを使う。

反撃。

全力の一撃。

フェンリル、撃破。

父親のサポート、最小限。


2ヶ月後。

南の湿地帯へ。

上級モンスター、ハイドラ狩り。

蛇型の多頭モンスター。

3つの頭。

それぞれが独立して攻撃する。

戦闘。

ガイアは位置取りを駆使する。

3つの頭を一列に並べる。

範囲攻撃で牽制。

そして一撃必殺。

ハイドラ、撃破。

父親のサポート、なし。


3ヶ月後。

北の雪山へ。

上級モンスター、フロストジャイアント狩り。

氷の巨人。

身長4メートル。

氷の魔法を使う。

戦闘。

ガイアは氷の魔法を避ける。

最小限の動き。

接近戦に持ち込む。

連続攻撃。

そして全力の一撃。

フロストジャイアント、撃破。

父親のサポート、なし。


6ヶ月後。

ガイアの体はさらに成長していた。

身長140センチ。

体重40kg。

筋肉量、成人男性の80%。

9歳とは思えない肉体。

トレーニング量も増えた。

腕立て伏せ、300回。

スクワット、600回。

プランク、20分。

毎日欠かさず。

そして上級モンスター狩り。

毎月1体。

様々な種類。

様々な戦術。

すべてを経験する。

ガイアは確実に強くなっていた。


9ヶ月後。

ガイアと父親は東の砂漠へ。

上級モンスター、サンドワーム狩り。

巨大な虫型モンスター。

体長10メートル。

地中を移動する。

戦闘。

ガイアは地面の振動を感じる。

サンドワームの位置を予測する。

地中から出てくる瞬間を狙う。

跳躍。

空中で全力の一撃。

サンドワームの頭部を粉砕。

撃破。

父親はただ見ているだけだった。

「……すごいな」

父親が呟く。

「もう俺のサポートはいらないな」

ガイアは拳を見る。

(強くなった)

(1年前とは違う)

(今の俺ならオーガも1人で倒せる)

父親が近づく。

「ガイア」

「何だ?」

「お前、もう」

父親が微笑む。

「上級冒険者だ」

「正真正銘の」

ガイアが驚く。

「本当に……?」

「ああ」

父親が頷く。

「お前の戦いを見てきた」

「技術も経験も」

「すべてが上級レベルに達している」

肩を叩く。

「誇りに思うぞ」

ガイアは拳を握る。

(上級冒険者……)

(でもまだだ)

(ドラゴンにはまだ遠い)

「ありがとう、父さん」

「でも俺はまだ満足していない」

「目標はドラゴンだ」

父親が笑う。

「相変わらずだな」

「ああ」

ガイアが微笑む。

「これは変わらない」


11ヶ月後。

ガイアの10歳の誕生日が近づいていた。

あと1ヶ月。

家で最終調整。

トレーニング。

実戦訓練。

栄養管理。

すべてを最適化する。

母親が心配そうに見ている。

「本当に大丈夫なの……?」

「大丈夫だ」

ガイアが答える。

「俺は準備してきた」

「1年間ずっと」

母親は涙ぐむ。

「でもドラゴンよ……」

「Sランクモンスターよ……」

父親が言う。

「俺が一緒に行く」

「ガイア1人じゃない」

「俺たち2人で戦う」

母親は頷く。

だが不安は消えない。


そして。

10歳の誕生日。

朝。

ガイアが目を覚ます。

窓から光が差し込む。

(今日だ)

(10歳になった)

(そして)

拳を握る。

(ドラゴンに挑む日だ)

起き上がる。

鏡を見る。

筋肉質な体。

引き締まった腹筋。

太い腕。

発達した大腿筋。

(この体でドラゴンと戦う)

服を着る。

黒いタンクトップ。

胸にロゴ。

「PROTEIN」

短パン。

準備完了。

階下へ。

母親と父親がいる。

テーブルに料理が並んでいる。

モンスター肉のステーキ。

茹でた卵。

野菜のサラダ。

プロテインシェイク。

そしてケーキ。

「誕生日おめでとう、ガイア」

母親が微笑む。

父親も微笑む。

「10歳だな」

ガイアは座る。

「ありがとう」

食事を始める。

肉を食べる。

(タンパク質、摂取)

(今日のために蓄える)

卵を食べる。

(良質なアミノ酸)

プロテインを飲む。

(完璧だ)

食事を終える。

父親が立ち上がる。

「準備はいいか?」

ガイアは頷く。

「ああ」

拳を握る。

「いつでも」

父親が剣を手に取る。

「じゃあ、行くぞ」

「北の大山脈へ」

「ドラゴンの巣へ」

ガイアの心臓が高鳴る。

(ついに……)

(ドラゴンに会える)

(そして戦う)

(そして食べる)

母親が二人を抱きしめる。

「必ず帰ってきてね」

「約束する」

ガイアが答える。

父親も頷く。

「必ず帰ってくる」

母親は涙を拭く。

「行ってらっしゃい」

二人で家を出る。

村を出る。

北へ。

大山脈へ。

ガイアの最終目標。

ドラゴン討伐。

それが始まろうとしている。


【異世界演出部】

モニターにはガイアと父親が北へ向かう姿が映っている。

田村麻衣は胃薬のボトルを握りしめている。

手が震えている。

「……ついに来たわね」

呟く。

田中美咲はタブレットを操作している。

「データを確認しました」

画面に数値が表示される。

「ガイア、10歳」

「筋力:上級冒険者・最上位レベル」

「技術:上級冒険者・中位レベル」

「経験:上級冒険者・中位レベル」

「総合:上級冒険者・上位レベル」

「そして」

美咲が付け加える。

「ドラゴンはSランク冒険者レベル」

麻衣が驚く。

「まだガイアより上……?」

「はい」

美咲が頷く。

「ドラゴンは世界最強クラスです」

「通常、討伐にはAランク冒険者が10人必要です」

「ガイアと父親2人では」

眼鏡を直す。

「勝率、40%」

沈黙。

麻衣が胃薬を取り出す。

5錠。

一気に口に入れる。

「……5錠」

美咲が呟く。

「過去最高ですね」

サクラがソファで起き上がる。

「筋肉少年、大丈夫かな……」

心配そうだ。

その時、ノック音がして扉が開き、バルクアップ女神が入ってきた。

今回も真剣な顔だ。

「見ています」

「女神様」

麻衣が言う。

「勝率、40%ですって」

女神が頷く。

「知っています」

「でも」

拳を握る。

「ガイアには筋肉があります」

「そして父親がいます」

「何より」

画面を見る。

「彼には夢があります」

「ドラゴンを食べるという夢が」

「その夢が彼を強くします」

麻衣は座る。

「……そうね」

呟く。

「信じましょう」

「ガイアを」

美咲がタブレットを操作する。

「ドラゴン戦、モニタリング開始」

画面が切り替わる。

北の大山脈。

雪が降っている。

ガイアと父親が山を登っている。

サクラが言う。

「がんばって、筋肉少年」

女神が祈る。

「ガイア」

「君の筋肉に祝福を」

麻衣が水を飲む。

手が震えている。

(頑張って、ガイア)

(必ず勝って)

(そして帰ってきて)

モニターにはガイアの姿。

拳を握り、山を登り続けている。

最終目標に向かって。


【第4話 完】

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